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アニメーション監督 原恵一「エヴァやジブリは意識していません」

[2010年09月23日]

ヒーローを描くことには興味がないんです

国民的アニメに本格的な人間ドラマを持ち込み、“大人も泣けるアニメ”と評価を受けた劇場版『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』。さらに『河童のクゥと夏休み』では河童と人間の交流を懐かしいタッチで描き、国内の賞を総ナメ。そして最新作『カラフル』では、中学生を主人公にしたホームドラマと斬新な映像表現を合体させたアニメ作家、原恵一。変幻自在の職人魂に迫る!

――森絵都さんの小説『カラフル』は、死んだはずの「ぼく」の魂が、自殺未遂した中学生の体に天使の導きで乗り移り、魂の再生を果たすという内容……。いや~、小説も感動モノですが、映画を観て自分が中学生だった頃の切ない気分を思い出しました!

原 それはありがとうございます。そもそもは、サンライズの現社長さんからアニメ化の話をいただいたんですけど、原作を読んで、「これは自分に向いている」と思ったんですね。

――どういう部分が?

原 僕も決してクラスの中心にいるタイプじゃなかったので、学校の中で孤立していた主人公の「真(まこと)」の気持ちがよくわかるような気がしたんです。それに、僕はヒーローを描くことに興味がなくて。強い人よりも、平凡な人だったり、弱い者の視点で日常を描くほうが性に合ってる。

――確かに、劇中の主人公一家の食事シーンなんかは、“ザ・平凡”って感じで、目の前に日常の食卓風景があるかのようなリアルさでした。

原 監督としては、あんな地味な割に、実は細かくて大変なシーンばっかり描かせて、アニメーターがいつ反乱を起こさないかとヒヤヒヤしてましたけどね(笑)。
ただ、この作品ではあの食事のシーンで主人公に重要な変化が訪れるので、何より大事に描かなければならなかったんです。

――ネタバレになるから言えないけど、あそこは男泣きしましたッ! 一方で、東京を実際に走っていた廃線の面影を求めて、真が親友と街を散策するシーンは、実写とアニメが融合したような……ちょっと説明しにくい斬新な映像でした。

原 作る前は、そんな新しいことをやろうなんて思ってなかったんですけど、美術さんがあの絵を提案してくれたんです。やろうと思えば、僕の絵コンテを実写で撮ることもできるけど、アニメってものすごい数の人間が集まって作るものだから、ほかの人にそれを広げてもらうことで、結果的にアニメでしかできない独特の表現が生まれた。自分でも新鮮でしたね。

――そんなオリジナリティもあって、原監督の作る作品って“大人向け”と言われることが多いですよね。

原 そう言われるのもわかるんですけど……、自分ではまったく意識してないんですよね。前に、僕は『…オトナ帝国の逆襲』で完全に子供向けアニメの枠組みをはみ出してしまった。
ただ、観客に否定されることを覚悟したその作品が、逆に大人にも子供にもすごく受け入れられたんです。それで、「ターゲットなんか定めずに、自分にウソのないものを作ったほうがいいんだ」って気づきました。

今のように規制することが正しいとは思わない

――ズバリお聞きしたいんですが、“アニメは嫌いだ”というようなことをかつておっしゃってましたよね?

原 いやいやいや、そこまで言ってないですよ(笑)。

――だって、「勘違いした演出家などが放つ自意識過剰なナルシシズム」が嫌いって……。

原 まぁ、昔かなりはっきり言ったことがありますけど……そういう言葉だけがいまだにネットとかに残ってるのって、今の時代の怖さですよね。実際はそこまで嫌ってるわけじゃないですよ。ただ、最近はアニメをあんまり観ないんです。『借りぐらしのアリエッティ』もまだ観てない。

――例えば、エヴァやジブリといった大ヒット作は意識しますか?

原 広く言えば同じ二次元のアニメなんですけど、意識してないですね。それは、自分の中に“人の作品を観てる場合か”っていう気分もあるから。観ると影響されるので、あえて意識せずに自分の表現を考えたい。

――じゃあ、意識しているのは?

原 1950~60年代の日本映画ですね。僕は、木下惠介や小津安二郎の当時の作品が究極の映画だと思ってるんですね。そして、今後それを超える映画はもう生まれない。

――ええっ!?  それはなぜ?

原 ひとつには、映画産業が華やかなりし頃で、今よりたくさん作品が作られたから。しかも、作っていたのが戦争という極限状態を経験した人たちだった。当時はいろんな制約があるなかで、作り手としていかに筋を通すかってことを考えて作っていたので、むしろ映画が豊かになったんだと思います。

――制約があるからこそいいものができる?

原 そう。アニメでいえば、戦後お金のない時期に初めて手塚治虫がテレビアニメを手がけたとき、少ないセル枚数でどのように見せるかを工夫したことから、日本のアニメはいろんな技を生み出してきたんです。ディズニーの滑らかなアニメより、枚数を抑えた日本のアニメのほうが絶対にカッコいいですから。

――それはよくわかります! ちなみに、今はお金ではなく倫理的な制約が強いですよね? 自主規制とか。

原 テレビの『クレヨンしんちゃん』が、まさに下ネタや暴力表現を規制していきましたよね。でも、僕らが子供の頃に見てきたアニメや特撮には残酷な描写なんかもあったんです。それを規制するのが正しいことだと思わないので、今の僕の作品には残酷なシーンや死のにおいをちりばめています。

――そういうところが、原監督の作品に大人も子供も心を震わす理由っすね! 最後に、今後、目指すところは?

原 それが、自分でも見えないんですよね(笑)。決して高いところにいきたいわけじゃない……、周りに誰も似た人がいないところにいきたいです。

(取材・文/西中賢治 撮影/大槻志穂)

映画『カラフル』
直木賞作家・森絵都のベストセラー小説をアニメ映画化。死んだ「ぼく」の魂が、中学3年生の「小林真」の体に乗り移り、新しい環境で生活しながら自分の死んだ理由を探す――。宮崎あおいや南明奈が声優として出演したことも話題に。大ヒット上映中

(c)2010 森絵都/「カラフル」製作委員会

原恵一(はら・けいいち)
1959年生まれ。テレビアニメ『ドラえもん』で演出家としてデビュー。『クレヨンしんちゃん』のテレビ&映画版ともに監督を務める。07年に公開されたアニメ映画『河童のクゥと夏休み』では、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞ほか、多数の賞を受賞。


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