新しいセレナは、見た目には、まったく変わり映えしない。ちょっと背が高くなっただけで、真四角スタイルも特徴的なウインドーラインも、すべてが「超キープコンセプト」だからだ。
まあ、5ナンバー枠(全長4.7m×全幅1.7m未満)で「大人7、8人が普通に座れる」という前提条件からしてガッチガチのしばりだし、先代の低重心ステップワゴンのように、このジャンルは「奇をてらったほうが負け!」の白物家電グルマの最前線。実際、2007年から09年はセレナ(先代)が販売トップだったが、昨年のトップはほかと区別がつきにくい“ホンダ版セレナ?”に転身したステップワゴン……という売れ方も、なんか家電っぽい(隠れ1位はヴォクシー/ノアだけど)。
というわけで、クラス初のアイドルストップ以外はさして新鮮味のない新型セレナだが、予想どおり、モノとしての完成度や機能性は、クラストップ返り咲き……といっていい。ちょっとした高級車ばりの質感のインパネは「運転手のひそかな楽しみ?」になりそうだし、ハンドリングは穏やかで安定したクルマ酔いしにくい癒し系で、グリグリは走らないがミニバンとしては正しい。3列目の居住性もクラス最良。相変わらず左右跳ね上げ式のサードシート収納法も、「あらゆる使われ方を考えて、これがベスト」と日産に断言されれば文句はない。
この世界では「クルマはカッコと走りだ!」などという俺のようなクルマオタクは、もはやお呼びでない。ま、今このクラスを買うならセレナだろうね。白物家電は四の五の言わず「新製品を買う」のが最も失敗が少ないから。
(取材・文/佐野弘宗)