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「東京都青少年健全育成条例」との戦いはまだ終わっていない

[2011年07月01日]

石原都知事と漫画家・出版社の溝は埋まらないまま都条例が施行

「悪質な性表現から青少年を守る」という理由で、東京都が気に食わない漫画を合法的に抹殺できる条例が、ついに今日から施行された。東京都の“暴走”による日本の漫画文化の破壊を防ぐために、私たちができることはなんだろうか?

■出版社の間に広がる「萎縮」と「自主規制」

“改悪”された「東京都青少年健全育成条例」の全面施行が、いよいよ7月1日から始まる。これを前に、早くも漫画家や出版社には萎縮の動きも見えている。

4月に都が出版倫理懇話会の会合で規制の候補として6つの作品を示した。そのなかで、特に注目を集めたのは糸杉柾宏(いとすぎ・まさひろ)氏の『あきそら』が含まれていたこと。アニメ化もされた同作は姉弟の近親相姦をテーマにしたもので、以前から「規制対象になるのでは?」と囁かれていたが、そのとおりになった。

その後の報道で自分の作品が含まれていたことを知った糸杉氏は、ツイッター上で「あきそらは7月以降、重版はかかりません。確定です」と発言し、騒動になった。発行元である秋田書店『チャンピオンRED』の伊藤純編集長は「秋田書店では4月以降も重版をしていますし、7月以降も具体的な方針は決定していない」と説明する一方で、「実際に指定されてもいないのに大手書店チェーンが取り扱いをやめたという報告もありました。残念ながら東京都の発言に萎縮効果はあると思います」と語る。

同社の作品では、ほかにも昨年、松山せいじ氏の『奥サマは小学生』(絶版)が「このような過激な表現物を誰でも入手可能な場所に置くべきではない」と猪瀬直樹副都知事にテレビ番組で一方的に批判され注目を集めた。これらのことについて伊藤氏は、反論する。

「『奥サマは小学生』は煽情目的ではなくユーモアや皮肉、『あきそら』ではラブ・ストーリーがあったうえでの必然として性的なシーンを扱っています。もちろん、異論はあります。例えば、『あきそら』のある一話に“7ページもエロシーンがある”と指摘がありました。しかし、その回は全部で70ページもあった。果たして全ページの10%以下しかない部分がその作品の“すべて”であるように語られるのは心外です」

伊藤氏によれば、前出の2作品のコンセプトは18禁マークのついたエロでは過激すぎると感じる、ソフトなエッチ描写の美少女コミックを求める読者に向けた作品。アンケートを見る限り読者層は20代から30代が中心で、10代の読者はほとんどいないそうだ。

「“レイプは気持ちいい”といった間違った倫理観を賞賛する作品を掲載したことはありません。しかし、過激な描写がある作品についても幼稚園児ならともかく、小学校高学年以上なら、その是非についての判断はつくと思っています。“青少年の健全な育成に悪影響を及ぼす”といった批判は子供を信用していないように思えますね」(前出・伊藤氏)

だが、7月以降の規制強化を見越してすでに「自主規制」を強化している出版社もある。これまで幾度も不健全図書指定を受けてきたある出版社では、条例施行を前に次のような対策を始めた。その会社に勤める編集者はこう証言する。

「まず、性描写のあるページを減らしています。具体的には、単行本だと、これまで一冊のうち半分が性描写だとすると20ページ程度まで削減するようにしています。いわば、総量規制というわけです。また、構図にも注意して、大股開きで股間が見えるようなものは避けて上半身だけを描くといったような対応を行なっています」

■都が暴走しないように監視するしかない!

今回の条例改正で問題なのは、いまだに規制のラインが明らかでないことだ。作者や出版社の側で、ある程度は問題視されそうな部分を予測して対処することはできる。それでも、どこが新たな基準に引っかかってくるかはわからない。そのためか、ある出版業界の会合では、都の担当者を前にして「出版前に都が見て判断してもらうことはできないだろうか」と、発言する出版社も現れるほどだ。

不健全図書に指定されたら損害を被(こうむ)るのは出版社だ。ゆえに、指定を逃れるためには都に従順にならざるをえないし、過剰な「自主規制」も「指定されるよりはマシ」と考えるようになる。7月以降、これまでどおりでは出版できない単行本や、いつの間にか描かれなくなった表現が続々と現れるだろう。こうして、漫画は徐々に面白くなくなっていく……。

はっきり言って、都議会で条例改正が論議されていた昨年と異なり、漫画家や出版社、それに読者が今できることはほとんどないだろう。都議会民主党で条例改正の内容に疑問の声を上げてきた吉田康一郎都議も「条例が施行されてからでないと判断材料もなく、動きようがない」と話し、「都側も、あえて寝た子を起こすようなことはしないでしょうから、過度な規制を行なうことはないと信じています。しかし、監視の目を弱めることはできません。7月以降、新たな条例がどのように運用が行なわれるか、見守っていきますよ」と様子見だ。

この問題に対し一貫して「表現規制ではない」と都の意見を代弁してきた猪瀬直樹副知事にも、今回、話を聞く機会を得た。短い時間のなかで猪瀬氏は、条例が表現の自由を奪うことをあらためて否定し、「(条例改正に)反対する人々は陰謀論的すぎる。もっと幅広い議論が必要だ」と言った。しかし、幅広い議論が必要ならば、なぜ改正を急いだのか? やはり、都の姿勢には疑問を持たざるをえない。

『サルでもわかる都条例対策』(密林社)を出版するなど、この問題で積極的に発言をしてきた漫画家の野上武志氏は「どんな規制をかけられても漫画家はそれをすり抜けられる」と語る。しかし、出版しても書店の店頭に並べることができなくなれば、どうなってしまうだろうか。日の当たるところにはお上(かみ)の顔色をうかがって牙を抜かれた漫画ばかりが並び、挑戦的な作品はアンダーグラウンドで細々と売られている、そんな暗黒の未来像を思い描いてしまう。

折しも、国会では自民・公明両党が再び「児童売春・児童ポルノ禁止法改正案」を国会に提出することを表明している。昨年から予測されていたとおり、都条例の先にある表現の自由を規制する動きが強まっている。7月以降、都の暴走を監視し、規制を最低限のラインに押しとどめなくては、日本の漫画は本当に“死んでしまう”かもしれない。

(取材・文/昼間たかし、写真/髙橋定敬)


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