週プレNEWS TOP ニュース 社会 「フクシマはカネになる」と囁く広島“原爆研究所”と、その所長の“法律違反”【前編】

ニュース

「フクシマはカネになる」と囁く広島“原爆研究所”と、その所長の“法律違反”【前編】

[2011年12月26日]

福島原発事故により野菜や水道水などが放射能汚染されているかもしれないという恐怖は今も国民を覆っている。そんななか、“専門家”と呼ばれる人たちに求められるのは国民に対して放射能の正しい防御情報を提供するということ。しかし、広島大学の“原爆研究所”では被災者を冒涜(ぼうとく)するような発言が飛び交っていた。そして、その研究所の所長はなんと放射線にまつわる“法律違反”まで犯していたのだ! 真相をルポライター・明石昇二郎が追った!!

神谷研二・福島県放射線健康リスク管理アドバイザー。広島大学・原爆放射線医科学研究所(原医研)の所長であり、首相官邸に対してフクシマ原発事故対策の助言を行なう「原子力災害専門家グループ」の一員でもある。そんな重責を担う神谷氏のスキャンダルが発覚した。

***

1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故が起きるまで、放射性ヨウ素を体内に取り込んでも発ガンの危険性は少ないと考えられていた。そして、それが当時の科学の「定説(ていせつ)」でもあった。なぜなら、放射性ヨウ素は甲状腺機能の検診や甲状腺疾患の治療など、医療用としても広く使われており、そうした患者たちの間で甲状腺ガンの増加は確認されていなかったからである。

だが、事故発生から5年もすると、チェルノブイリ原発の周辺で は子どもたちの間で甲状腺ガンが急激に多発し始める。10年も経つと、多発傾向はより顕著になる。「定説」を覆す異常事態が発生しているのは誰の目にも明らかだった。

この事態を受けて2000年10月、広島大学の原医研で「動物実験」による研究が始まる。研究の総括責任者は、当時、広島大学原医研の教授だった神谷氏だ。

実験は、ラットに放射性ヨウ素(I-131)を投与し、
(1)普通のヨウ素(非放射性)を多く含んだ食事(高ヨウ素)を与えたラットと、そうでない食事(低ヨウ素)を与えたラットを比較し、ガン発症との相関関係を調べる
(2)子どものラットと大人のラットを比較し、ガン発症との相関関係を調べる

というもの。つまり、小児甲状腺ガンの多発は「放射性ヨウ素による内部被曝」と日々の「低ヨウ素の食事」、そして「低年齢」に関係があるのではないかとの仮説を立て、それを検証するのが、実験の最大の目的だった。

この研究をあと押ししたのが、電力会社である。当時の日本は、茨城県東海村の「JCO臨界被曝事故」(1999年)が起きた直後。同事故を契機に「原子力災害対策特別措置法」が制定されたばかりだった。原発にはヨウ化カリウム製剤(ヨウ素剤)を常備しておくことが義務づけられ、電力会社にとっても「小児甲状腺ガン多発」の現実は見過ごせない話だったからだ。

関係者によれば、スポンサーとなった電気事業連合会(電事連)がこの研究のために注ぎ込んだのは「およそ1億円」。研究事業は、財団法人・原子力安全研究協会(原安協)が受託し、広島大学の原医研に下りてきた研究予算の総額は3年間で6000万円だった。

***

仮説は証明されつつあった。「低ヨウ素」「低年齢」ラットの生存率が最も低かったのだ。その死因の大半は、甲状腺ガンだった。しかも、高ヨウ素の食事を与えていたラットは、「低年齢」でも生存率の低下は見られなかったという。

研究がこのまま進めば、海に囲まれ、日頃から「高ヨウ素の食事」を摂っている日本の子どもたちは、チェルノブイリの子どもたちに比べ、放射性ヨウ素に対する“耐性”がある――ということが証明されていたかもしれない。加えて、放射性ヨウ素が誘発する小児甲状腺ガンの治療法や予防法開発のきっかけにもなっていた可能性もある。つまり、フクシマ事故が発生した今、数少ない吉報となるはずだった。

だが、そうはならなかった。

研究は中途半端のまま終わっていた。研究には「最終報告書」が存在するものの、「実は、きちんと最後までやり遂げられていないんです」(関係者)。

この研究を巡っては、大発見とも言える結果を出していながら、1本の学術論文も書かれていない。

その理由は、ラット実験の進め方が放射線障害防止法に抵触していたからである。原医研の実験施設が小規模すぎたことが原因だった。このため、動物実験の現場では同法で定められた基準の6倍もの放射性ヨウ素を使うハメになる。

これにより、実験担当者らは過度の被曝に晒(さら)され、白血球の減少など、体調に異常をきたす者も現われていた。おまけに、実験で被曝した者は原医研の職員ばかりでなく、なぜか原安協に雇用された非常勤のアルバイト女性まで含まれていたのである。中には、この実験から数年後、若くしてガンで急逝した人もいる。

実験を完遂するためには、実験担当者のさらなる被曝は不可避だった。担当者の中からは実験の進め方を疑問視する声が上がり、研究は事実上の中止へと追い込まれていた。

***

研究の「最終報告書」が出た3年後の06年7月、神谷氏の放射線障害防止法違反が内部告発で露見。放射線研究で模範となるべき原医研の面子(メンツ)は丸つぶれとなり、事件は地元紙『中国新聞』でも大きく取り上げられた。原医研には監督官庁である文部科学省の立ち入り調査も入り、研究の総括責任者だった神谷氏の責任が問われるのは必至の情勢となる。原医研の中は一時、「原医研は“お取り潰し”になるかも」「30人以上の処分者が出るらしい」と騒然となり、「中でも神谷さんは最低でも1か月、重ければ半年間の停職処分になるだろう」と見られていた。

だが、広島大学が神谷氏に下した処分は、「訓告」という大変軽いものだった。なぜか。事情を知る関係者は語る。

「自分の責任を同僚の研究者に擦(なす)りつけ、相対的に自分の責任を薄めることに成功したわけです。その同僚も『訓告』処分でした。彼の“政治力”の賜物(たまもの)でしょう」

(取材・文/明石昇二郎とルポルタージュ研究所)

【後編】に続く


関連コンテンツ

No.29 Jul 17th 2017

週プレ酒場のCMはこちら!

連載コラム

Column

連載コラムを見る

Back Number

  • No.52 Dec 25th 2017
  • No.51 Dec 18th 2017
  • No.50 Dec 11th 2017
  • No.49 Dec 4th 2017

 

Gravure Gallery

もっと見る

MOVIE Channel

【動画】華村あすか、2017年最高のシンデレラ。

もっと見る

新刊のお知らせ

  • 『乃木坂46×週刊プレイボーイ2017』
  • モーリー・ロバートソン『挑発的ニッポン革命論』
  • 馬場ふみか2018カレンダーブック
  • プロ野球プレイボーイ2017
  • 『乃木坂46×週刊プレイボーイ2016』

 

プレイボーイコミックス

メルマガ会員&アンケート 2017年No.52

ミスグラジャパ!グランプリ選出!! 最終WEB投票受付中!!