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ヒューザー・小嶋進社長の上告棄却に意義あり!「耐震偽装事件」本当に悪いヤツは別にいる

[2012年01月09日]

2005年11月に発覚し、日本中で大騒ぎになった耐震偽装事件。そのなかで“首謀者”のごとく報道されたマンション販売会社ヒューザーの小嶋進元社長に、昨年末、最高裁から上告棄却の判決が言い渡された。この判決も「法の正義」から見れば問題だが、この事件にはもっと悪いヤツらがいる。改めてその責任をここで追及する。

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■大山鳴動して“姉歯”一匹?

「震度5強の揺れでマンションが倒壊する」「殺人マンション」などと報じられたヒューザーの「耐震偽装マンション・ホテル事件」。2005年11月に発覚したこの事件は、前代未聞の「組織犯罪」だとされ、“疑惑の政治家たち”も続々登場。新聞、テレビはもとより、週刊誌やワイドショーまでが“疑惑の当事者”たちを追いかけ回し、果ては国会での証人喚問まで行なわれた。

当時、事件の首謀者と目されたのが、マンションの建築主であるヒューザー社の小嶋進(おじま・すすむ)社長だ。が、「組織犯罪」と見立てた一連の報道は、実は世紀の大誤報だった(【関連記事】)。

事件は、発覚当時さんざっぱら語られていた「組織犯罪」でもなんでもなく、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)・一級建築士(当時)による単独犯行だったのである。本件の「耐震偽装」で裁かれたのが姉歯建築士ひとりなのが、その何よりの証拠だ。

事件に絡んで逮捕されたのは姉歯氏を含め8人にものぼった。だが、姉歯氏以外はすべて別件逮捕。その後、本件の「耐震偽装」で罪を問われ、再逮捕された者はひとりもいない。別件逮捕を乱発した警察と検察の大失態以外の何ものでもないのだ。

しかし、関係者たちは裁判で控訴せず、泣き寝入りをしていた。そんな中、警察・検察と報道から着せられた汚名をそそぐべく、ひとり最高裁まで上告していたのが、詐欺罪で逮捕されたヒューザーの元社長・小嶋氏だった。

そして、上告から2年9ヵ月後の昨年12月12日、小嶋氏に判決が下る。結果は「上告棄却」。事実上の門前払いである。理由は「刑事訴訟法405条の上告理由(憲法違反や最高裁の判例違反)に当たらない」から、というものだ。これにより、小嶋氏に対する「懲役3年、執行猶予5年」の刑が確定した。

■一級建築士は「復権」したのに……

一方、同じ最高裁の場において、事件で失った名誉を事実上回復した関係者もいる。姉歯事件で巻き添えを食らい、国土交通省から建築士免許を取り消されていた一級建築士たちだ。

姉歯事件を契機に全国各地で発覚した耐震偽装事件のうち、北海道で起きた事件で免許を剥奪された元一級建築士が、免許取消処分の無効を訴えていた裁判で、最高裁は昨年6月、国交省の行政処分を違法と断じ、免許取消処分を無効とする判決を出していた。北海道の事件でも、構造担当の建築士が偽装をしており、姉歯事件とまったく同じ構図だった。

そもそも、耐震偽装事件が姉歯氏の物件だけにとどまらず、全国津々浦々にまで波及したのは、監督官庁である国土交通省の大臣が認定していた「耐震構造計算プログラム」(計算ソフト)に欠陥があったからなのだ。早い話、計算結果を簡単に偽装できた責任の一端は国交省にもあったのである。

しかし国交省は、自らに都合の悪い話には一切触れず、すべてを建築士らの責任とし、処分の理由を明確に示さないまま建築士免許を剥奪していた。理由を示してしまえば、国交省自身に責任追及の矛先が向きかねなかったからだろう。最高裁が問題視したのは、まさにその点だった。

そして、この判決を受け、姉歯事件で免許を剥奪されていたほかの元一級建築士らにも、一度は取り消された「一級建築士免許」が戻ってきた。ただし、前の免許がそのまま戻ってきたわけではなく、新規の免許を発行する形で。国交省のさもしい抵抗だった。

復権を果たした一級建築士が語る。

「当時、建築確認を受けるに当たっては、意匠設計を担当する建築士が設計書面をまとめて提出していたのですが、意匠設計と構造設計は完全に分業化されていて、意匠設計を担当する建築士が構造設計の内容までつかむことはほとんど不可能だったのです」

にもかかわらず、意匠設計の建築士は「設計を担当した代表者」として、すべての責任を負わされていた。書面を審査した建築確認検査機関の担当者らも、一級建築士と建築主事の資格を持っていながら、耐震偽装物件を防ぐことはできなかったのに、だ。

「でも、新聞やテレビは『一級建築士なら偽装を見抜けないわけがない』『だから組織犯罪だ』と決めつけ、完全に悪者のイメージを植えつけました。私は、検察の取り調べも2回受けているんです。最初は『組織犯罪』として、です。でも、いくら調べたところでそんな事実はないわけだから、途中で検察は容疑を『詐欺』に変えたんです。2回目は詐欺事件としての聴取でした。

だけど一般建築の場合、建物に瑕疵(かし=欠陥)が見つかったとしても、直せば瑕疵担保責任(注※)は果たせるんです。今回の事件のように、直させもしないまま『詐欺』とは、本来ならないはずなんですね」(一級建築士)

注※ マンションなどに欠陥があることを知らずに買った場合、買主は売主に対して契約解除や損害賠償の請求を主張することができる。これを、売主の「瑕疵担保責任」という。

■報道の「社会的制裁」をたしなめていた裁判所

小嶋氏が「詐欺」に問われた行為とは、すでに契約済みだった22戸のマンションのうち17戸を、姉歯氏による耐震偽装が発覚した日の翌日に住民へ引き渡し、残金を受け取った――というものだ。そして裁判では、マンション引き渡しの時点で小嶋氏が耐震偽装の事実を「知っていたかどうか」だけが争点になっていた。

それほどビミョーな「詐欺」の罪に問われ、刑が確定してしまった当の小嶋氏はこう話す。

「やはり、がっくりしたというのが正直なところです。ただ、判決を厳粛に受け止め、それで終わり、ということにはとてもできません。このままでは『やっぱり小嶋は悪いヤツだったのだ』と結論づけられてしまう。事件で失った名誉をいかにして取り戻せばいいのか、やはり闘い続ける気持ちを持つべきではないのかと、今は考えています」

耐震偽装事件そのもので逮捕されたのは姉歯氏ひとり。一方で「事件に関わった」とされた一級建築士は最高裁で“無罪放免”。すなわち、事件が「組織犯罪」であるとの構図は、裁判の場で幾重えにも否定されているのだ。

おまけに、事件の首謀者と目された小嶋社長の「詐欺」容疑とは、「偽装をさせてマンションを売った」からではなく、耐震偽装の発覚後も「マンションを売っていた」から――というもの。この容疑自体が、耐震偽装の「小嶋首謀説」を完全に否定している。

そこで問われるのは、世紀の大誤報をたれ流し続けた報道機関の責任だ。小嶋氏に対する有罪判決の是非はさておき、裁判所はマスコミ報道よりよほど「事件の構図」を正しく捉えていた。高裁判決に至っては、「耐震偽装というレベルで捉えれば、本来被害者的立場にあった被告人に非難が集中しすぎた感は否めず」とまで踏み込み、報道による行き過ぎた「社会的制裁」をたしなめていた。

だが、報道機関には今日も反省の色はまったく見られない。最高裁の「上告棄却」報道にしても、“やっぱり小嶋は悪いヤツだったのだ”というトーン一色だ(太字は筆者)。

「耐震データ偽造事件で、強度不足のマンションを引き渡して代金をだまし取ったとして詐欺罪に問われた販売会社『ヒューザー』(破産)元社長、小嶋進被告(58)に対し、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は12日付で被告の上告を棄却する決定を出した」(『毎日新聞』12月13日配信記事)

「1、2審判決によると、小嶋被告は2005年10月、神奈川県藤沢市のマンション『グランドステージ(GS)藤沢』の強度不足を認識しながら販売し、住民11人から代金計約4億1000万円をだまし取った」(『読売新聞』12月13日配信記事)

しかし、肝心の一審判決文にはこう書かれている( 太字は筆者)。

「被告人には積極的、意図的に被害者らから残代金をだまし取ろうとした事実までは認められず(中略)いわば弱い故意に基づいて犯行に及んだにとどまること(これに反する検察官の主張は採用できない)」

「だまし取った」とする検察の主張は、裁判で明確に否定されていた。従って、前掲のふたつの記事は小嶋氏に対する悪意に満ちた偏向記事……どころか、読売の記事に至っては誤報でもある。

小嶋氏の“反撃”は、こうした報道機関による名誉毀損行為を問うところから始まる模様だ。

(取材・文/明石昇二郎とルポルタージュ研究所)


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