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裁判をダメにする元凶「最高裁事務総局」の正体[後編]

[2012年02月08日]

大阪&名古屋での無罪多発は検察のレベルが低いから?

実は、陸山会事件以外でも、過去に東京地検特捜部が摘発し、2000年以降に判決が出た有名な刑事事件を担当した東京地裁、東京高裁の裁判長の多くは、エリート裁判官に共通する経歴を持つことがわかった。果たして、これは単なる偶然なのだろうか?

「東京地裁や東京高裁にはもともとエリート裁判官が集められますから、経歴が共通するのは当然かもしれませんね」(前出・西川教授)

また、起訴、控訴された事件がどの裁判長の担当になるのかは自動的に割り振られ、特定の裁判長が“指名”されるような作為は働かないともいわれる。

しかし、人事をはじめ、裁判所内部でどのような意思決定が行なわれているのか、裁判所は情報公開法の対象にはなっていないので、国民にはその実態がまったくわからない。

だが、東京地検特捜部が摘発した事件では軒並み有罪判決が出ているのに比べ、大阪地検特捜部、名古屋地検特捜部が摘発した事件では意外にも何件かの“無罪判決”が出ているのだ。

そして、地検特捜案件で無罪判決を書いた大阪地裁&高裁、名古屋地裁の裁判長の経歴を見ると東京とは明らかに異なる点があることがわかる。一部の裁判官を除けば、ひたすら実務裁判官の道を歩いてきた裁判長ばかり。つまり、エリートとはいわれない人たちなのだ。

もちろん、ひと口に地検特捜案件といっても、事件の性格や背景は異なる。判決内容と裁判官の経歴を簡単に関連づけることはできないのも確か。

「これは民事の話ですが、以前、東京地裁民事第3部に藤山雅行裁判長がいました(現在、横浜地・家裁川崎支部長)。彼はエリートでありながら、公共事業に関する訴訟で国側が負ける判決をたびたび書いた。『国破れて3部あり』といわれたほどです。エリートコースを歩きながらも骨のある、権力べったりではない裁判官もいます」(前出・西川教授)

とはいえ、地検特捜部が描いた構図をそのまま鵜呑みにした判決を、最高裁事務総局から“選抜された”エリート裁判官が書く。特に東京ではその傾向が強いと疑われる判決が出ていると見られても仕方ないだろう。

そうした傾向を裏づけるかのような別の指摘もある。それは合憲か違憲か、憲法判断をめぐる裁判で、裁判内容がその後の裁判官に及ぼす影響についての研究だ。

塚原英治弁護士が1990年に『法律時報』(日本評論社)で発表した論文によれば、公職選挙法の戸別訪問禁止規定は合憲だとする最高裁判決に反して違憲だとする判決を書いたある裁判官は、地裁支部勤務を9年という“異例の長さ”で経験させられ、「例を見ない差別」を受けたと指摘している。そして、〈そのような(最高裁判決に反した)判決をした人が冷遇されていることが、部内にいる人には一目瞭然だとすれば、それは裁判内容の統制につながるだろう〉と指摘しているのだ。

『犬になれなかった裁判官 司法官僚統制に抗して36年』(NHK出版)の著者であり、元裁判官の安倍晴彦氏も戸別訪問禁止は違憲との判決を書いたひとりだ。その結果、ほぼ一貫して地方の裁判所や支部、家裁での勤務を余儀なくされたと、09年の本誌連載記事の取材時に語っていた。

さらに、安倍氏は検察官による被疑者の勾留請求をかなりの割合で却下する裁判官としても知られ、裁判所と検察庁との“和を乱す存在”だったことも人事面で冷遇された一要因だと語っていた。

前出の西川教授の研究によれば、全国の裁判所には明らかに“優劣”があり、人事を見れば自分がエリートコースに乗っているのかいないのか、裁判官にはわかるのだという。これではヒラメ裁判官が生まれるのも当然であろう。

これまでに3300件以上の裁判を傍聴したジャーナリストの今井亮一氏が語る。

「多くの人は裁判所の役割について、悪い人を処罰するところ、真実を明らかにするところ、有罪か無罪かシロクロつけるところと考えていますが、裁判の現場を見続けた者にとっては、そんな考えは幻想としか思えません。裁判の役割は、検察と一体になって犯人を処罰し、国家の治安、秩序を守ることと裁判官は思い込んでいるように見えます。被告人側の主張については疑って疑って疑い抜き、検察側の主張についてはなんとか信用できる理由を探して、拾い上げてやる。そして、もっともらしい有罪判決を書く。そういう傾向が明らかに見て取れます」

政治家や高級官僚がらみの事件だと、検察から盛んにリークが行なわれ、マスコミが“悪徳政治家”“悪徳官僚”と書き立てる。国民も「有罪になって当然」と思い込んでしまう。そこで裁判官も「多少無理して有罪にしても国民から批判されないだろう」と思ってしまうのではないか。

しかし、われわれ国民は何か法的な問題が起これば、最後の判断は裁判所に頼るしかない。その裁判所の裁判官がヒラメでは、公正な裁判は期待できない。では、マトモな裁判官になってもらうためにはどうすればいいのだろうか。

“裁判所情報公開法”で国民が監視できる体制に

裁判官の人事制度を見直すべきと指摘するのは前出の西川教授だ。

「一部のエリート裁判官が東京地裁、東京高裁に集中する一元的な人事制度を見直すことが必要です。同時に、3年から5年ごとに広域的に転勤させるやり方も変えないと、裁判官が常に次の異動先を意識して裁判を行なう風潮は改まらないと思います」

さらに、裁判官の人事や昇給がどのような基準で行なわれているのか、外からはまったくうかがい知れないことに問題があると言うのは前出の新藤氏だ。

「裁判所に関する情報公開は、最高裁が決めた『要綱』しかありません。そのため、行政機関と同様、裁判所にも情報公開の法的な義務を課す“裁判所情報公開法”を制定すべきです。最高裁事務総局会議や裁判官会議には議事録があるはずだし、そこでは裁判官人事に関する議論などが行なわれているはずなんですが、絶対に表に出ることはありません。その厚いベールに包まれた裁判所の内部を、裁判所情報公開法によって国民が監視できるようにするのです」

だが、最高裁が自らの権力を縛るような、こうした改革を行なうとは考えにくい。そこで、当面は被疑者の取り調べを録音・録画する可視化を進め、警察&検察がウソの調書を作成していないか、ヒラメ裁判官でも“助け”られない仕組みを作り上げるしかないだろう。

冒頭でも紹介したが、仮釈放後の記者会見で鈴木宗男氏は次のように力説した。

「大事なのは被疑者の取り調べだけでなく、証人や参考人として将来、法廷で証言を求められる可能性のある人すべての聴取を含めた全面的な可視化です」

そうしなければ裁判の公正が保たれないのも情けない話だが、今のままでは裁判所は国民の信頼を失い続けるだけだ。検察の「国策捜査」を支える「国策司法」でしかないと―。

そのなかで、注目されるのが、自らの資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる政治資金規正法違反の容疑で強制起訴された小沢一郎氏の裁判だ。昨年12月16日の公判で、元会計責任者を取り調べた元検事の前田恒彦受刑者(「郵便不正事件」で証拠を改ざんし実刑が確定)が、「特捜部の捜査は見立て違いの妄想だった」と証言するなど、検察捜査の問題点が浮かび上がっている。今年4月には判決が出る予定とされるが、さて、東京地裁の大善文男裁判長はどのような判決文を書くのだろうか。

ちなみに、大善裁判長は早大卒、初任地は東京地裁。司法研修所教官や高松高裁事務局長の経験を持つなど、一応エリート裁判官らしいのだが……。

(取材・文/西島博之)


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