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福島第一原発圏内、川内村の作家・たくきよしみつインタビュー「3.11前よりはるかに、住民の原発依存は重症になった」

[2012年03月23日]

福島第一原発から25km、川内村に住んでいた作家のたくきよしみつ氏。あれから1年、避難民の実情を語る

避難対象地域に住んでいた場合、避難中の精神的補償はひとり当たり月額10万円。原発事故で住み慣れた町を追い出されたのだから、当然だと思うかもしれない。しかし、昨年末まで福島県川内村に住んでいた作家のたくき氏は、この枠組みが川内村を壊すと語る。いったいなぜ? 原発マネーできしむ現状を語ってもらった。

【阿武隈梁山泊計画は絶望的になってきた】

―作家のたくきよしみつが7年近く住んだ福島県川内(かわうち)村を離れたのは昨年の3月12日、福島第一原発1号機の爆発映像がテレビに映し出された直後のことだった。

自宅は原発から25㎞地点。心臓がばくばくした。放射能被曝の危険が迫っていた。

「逃げるぞ!」

妻にそう告げると、身の回り品をザックに詰め、車で神奈川県川崎市の仕事場にたどり着いた。

たくき その後、3月26日に自宅に荷物を取りに、川内村に一時帰宅したんです。線量が低いことは予想していましたが、実際に低い。村の中心部あたりで0.8マイクロシーベルト。自宅の室内は1マイクロほどでした。もともと川内村は地盤が固く、地震の被害はほとんどなかった。電気、プロパンガスなどのインフラも問題なかった。

当時、多くの人が避難していた郡山市の線量は2マイクロ前後もありました。友人たちも戻り始めていたし、一緒に村の再建に協力できればと思って、4月末に戻ったんです。

―川内村では3月16日、遠藤雄幸(えんどう・ゆうこう)村長が強制避難を決断し、約3000人の村民の多くは郡山市の「ビッグパレット」に身を寄せていた。村は原発から20㎞圏の警戒区域、20~30㎞圏の緊急時避難準備区域に二分された。こうしてほぼ無人となった川内村で、荒れ狂う4基の原発と背中合わせの生活が始まった。

たくき 失望はしていませんでした。いや、むしろ川内を魅力ある村へと再生させるチャンスかもしれないとさえ思っていたんです。

―川内村の豊かな自然に魅せられて移り住んだたくきだが、血縁関係に縛られ、チャレンジをしない村民たちの姿に物足りなさを覚えることがしばしばだった。

たくき 多くの村民が福島第二原発のある隣の富岡町や第一原発のある大熊町などで仕事に就き、収入を得ていることもあって原発ぶら下がり体質はかなりありました。原発の仕事をしている限り食べていける。そのため、豊かな川内村の自然を生かして、新しい産業やビジネスを起こそうという動きが起きない。

その一方で、風力発電プロジェクトやゴルフリゾート、産業廃棄物処理場といった誘致話ばかりが浮上する。村の有力者は川内村の自然を切り売りし、楽に儲も うけることしか頭にないんです。しかも、有力者は一族の代表として村議会議員に当選し続けるから、異論も封じられてしまいがちです。

―ところが、原発事故で状況が変わった。

たくき 200人ほどの村民が川内村に戻ってきたんです。その中には、移住者も含めて、川内村の自然が大好きで、そこで暮らすのが当たり前と感じている人が多かった。だから、そうした人々と力を合わせ、原発に頼らないネオ川内村を作れるかもと期待しました。

イメージとしては〝梁山泊(りょうざんぱく)〟ですね。原発から30㎞圏というマイナスの風評は避けようがないけど、それを逆にエアカーテンのように使って、阿武隈(あぶくま)山地の森と水に触れながらゆったり暮らすことを望む人々が集まって、桃源郷のようなネオ川内村を作れないものかと。

―だが、期待はじきにしぼむ。 4月22日、計画的避難区域、緊急時避難準備区域が制定されたのと同時に、国は同地域での稲の作付けを全面禁止した。8月には農水省が、もし収穫したら全量廃棄を義務づけるという省令も出す。

たくき これを受けて川内村でもすべての田んぼが作付けされませんでしたが、秋元美誉(よしたか)さんという農家だけが、自分の田んぼで穫れた米にどれだけの放射性物質が含まれるのか確認するために田んぼ1枚だけ作付けしたんです。村と県が何度もやって来てやめるように命じましたが、美誉さんは拒否して収穫までこぎ着けました。

―この〝米騒動〟、最後は「この作付けは村が検査を依頼したことにするから、収穫した米は全量廃棄してくれ」という提案がなされ、美誉さんもやむなく応じた。結局、県が検査用に持ち帰った1㎏以外全量廃棄させられ、美誉さんが自主検査することも許されなかった。たくきはこう憤る。

たくき 本来なら『村の稲作継続の可能性を探るために、条件の違う多くの田んぼで作付けをして検査したい』と村が県や国に言うべきなのに、補償金交渉を有利に進めることしか考えていない。これでは復興も何もないでしょう。

【人を入れ替えなければ復興などあり得ない】

―こうした動きは賠償が始まる昨年夏頃から露骨になった。

たくき 郡山市と川内村の二重生活者が増えたんです。ウイークデーを川内村で過ごし、週末だけちょこちょこっとアリバイ証明のように、郡山市の仮設住宅や借り上げマンションに戻る。ぼくは『死んだフリ作戦』と呼んでいました。

―避難した村民には東電から精神的損害への補償として、ひとり当たり月額10万円が支払われる。また給与所得者には失業手当に加えて、それまでの月収分が東電から補填される。さらに借り上げ住宅の家賃として県から月9万円まで支給される。

たくき だから、夫婦に子供3人、祖父母の7人家族だと、精神的被害への賠償金だけで月70万円がもらえる。これに、給与の補償、失業手当などを加えると、軽く一家の年収は1000万円を超えることになるんです。

こうなると、誰も村へ戻ろうとはしない。戻ったら、補償金がパーになるわけですから。だから、いつまでも村に帰らない、というより帰れない。実は軽傷なのに、包帯をぐるぐる巻いて補償金を待っているようなもの。これでは村の復興などできるはずがありません。

―補償漬けになり、一向に完全帰村しようとしない村民を、たくきは「原発ぶら下がり体質がさらに重症化した」と言う。

たくき 芯がないというか、無抵抗というか。そんな川内村の人々を見ていると、僕はいっそのこと、飯舘村に住んでいればよかったとさえ思いましたね。飯舘は放射能汚染がひどくて、おそらく帰村は難しいでしょう。

でも、飯舘には全国に通用するブランド産品を作ろうとか、自然を生かした村作りをしようとか、自分の頭で必死で考えたり、工夫する村民がいっぱいいるんです。そうした人たちと一緒に被災したんだったら、彼らとまた協力して村作りに取り組んだり、別の新天地に移住してやり直そうって思えるから。でも、今の川内村にはそうした部分が見えない。

―9月30日、政府は緊急時避難準備区域を解除した。これで、医療機関や学校も再開できることになった。空間線量も低下し、場所によっては0.2マイクロシーベルトを切るほどにまでなった。 だが、村人が戻ってくる様子はなかった。

たくき 家に戻ったら、あるいは仕事を再開したら補償金が減らされるというバカな規定をやめない限り、戻れないでしょう。誰だってそうなりますよ。で、補償金の後は『除染ビジネス』です。すでに村では地元業者が『川内村復興事業組合』を作ってゼネコンからの下請け、孫請けを始めています。

―除染が始まると、粉塵が舞い上がり、作業員、住民が内部被曝の危険にさらされる。それがいちばん怖いことだと、たくきは言う。

自宅そばに池を作り、孵化を見 守ってきたカエルたちが姿を消したこともショックだった。

たくき 田んぼに水が入らなかったこともあり、2011年はカエルの姿が激減しました。おまけに、わが家の池で育ったカエルの子が例年の半分ほどのサイズしかなかったんです。ぺちゃっとして肉づきも悪くて。一概には言えませんが、やっぱり放射能の影響なのかなと落ち込みました。屋根から雨どいで雨水を池に流していたから、屋根に付着したセシウムが池に入っていたわけだし。その頃からです。除染ビジネスに巻き込まれ内部被曝するのも嫌だし、いったん川内村を出ようかなと考え始めたのは……。

―昨年11月11日、たくきはこのままでは仕事にも支障が出ると思い、生活拠点を日光市へ移した。

たくき 今年の1月末に遠藤村長が帰村宣言を出したけど、郡山での二重生活を少しでも長引かせたい村民からは『余計なことをするな!』と、文句が出ているようです。原発マネーでシャブ漬けのままでは、いくら帰村宣言をしても川内村の復興はおぼつかない。『原発ぶら下がり症』を克服するには、まず、この原因を作った東電や保安院、原子力委員会、原子力安全委員会、原子力機構などの原子力ムラを解体して人間をすべて入れ替えることが必要です。村にも、あの土地を愛して守り抜く気概を持った新しい人材を外から入れないと、本当の復興は遠のくばかりですね。

たくきよしみつ
1955年、福島市生まれ。作家、ミュージシャン。小説以外にも、デジタル文化論や写真、狛犬美術など専門分野は幅広い。著書は『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(講談社)など。4月20日に『3.11後を生きるきみたちへ―福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書)を出版予定。
公式HPhttp://takuki.com/

(取材・文/姜誠 撮影/山形健司)


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