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科学から見た反原発の問題点 菊池 誠「“御用”のレッテルで科学を殺すな」

[2012年07月03日]

福島第一原発事故以降、「御用学者」と罵声を浴びせられたこともある菊池 誠教授。それでも彼が発言を続けた理由とは?

あらゆる情報が錯綜し、安全なのか危険なのか、それどころか何が起こっているのかさえよくわからなかった福島第一原発事故の直後、「直ちに健康に影響はありません」という“大本営発表”に心から安心できた人はどれほどいただろうか。そんななか、ツイッターでより正確な情報発信を試みた何人かの科学者がいた。

そのひとりが、大阪大学サイバーメディアセンター教授の菊池誠氏だ。特にインターネット上や週刊誌上で飛び交う、科学的根拠やソースの怪しい危険情報について、彼は「それはおかしい」「真実ではない」と注文をつけ続けた。そんな姿勢に“御用学者”と罵声を浴びせる人たちもいたが、それでもなお発信をやめなかったのは科学者としての責務か、それとも人としての正義感だったのか―。

***

■とんでもないことを言う“専門家”もいた

―菊池先生の原発事故関連のツイートは、かなり大きな反響があったと思います。

菊池 “ニセ科学”の問題点を批判するようなことを何年もやっていて、今回の震災以前からブログなどで発表していました。ですから、ツイッターでの反響には面食らった部分もあります。内容も僕としては特別なつもりはありませんでした。

科学的に見てあまりにもあり得ない話があったら「それはない」と言ったり、当初から科学的な考察をしておられた東京大学の早野龍五(はやのりゅうご)先生とか、KEK(高エネルギー加速器研究機構)の野尻(のじり)美保子先生のツイッターを読むことを勧めたり。

―事故の影響に関して、専門家がもっと自発的に情報発信すべきだったと思いますか?

菊池 本当の意味での原子力の専門家がほとんど表に出てこなかったのは残念でした。もちろん、一部の専門家は事故直後からテレビにも出ていましたが、ご存じのように彼らの安全寄りの予想は外れ、事故は拡大していった。それで彼らが信用をなくしてしまったことが、その後に大きく影響したと思います。

また、容赦なく“御用学者”というレッテルが貼られるようになったことも、彼らが口をつぐんでしまった理由かもしれません。いずれにせよ、初期のつまずきで彼らの意見があまり表に出なくなったのは、われわれにとって大きな損失だったと思います。一番の専門家による専門知識を得られなくなったわけですから。

― 一部には、原子力業界と関係のない科学者についても、少しでも安全寄りな話をするとすぐに“御用”と呼ぶような風潮もありました。

菊池 御用学者という言葉を好んで広範囲に使った人たちやメディアもありました。週プレにも怪しい記事はありましたが、ほかの週刊誌ではもっとひどい記事があった。意見の中身を見ず、その人の社会的立場や結論だけから御用学者と決めつけてしまう。一方で、ものすごくセンセーショナルなことを言う“専門家”をもてはやす。科学者の肩書でも、とんでもないことを言う人がいました。

―同じ“科学者”なのに、言うことが全然違う。一般の人たちは当然混乱してしまいます。

菊池 ひどくおかしなことを言っているなぁとすぐにわかるはずのことも信じられてしまいました。例えば、水素爆発を「核爆発だ」とおっしゃる科学者もいた。でも、原子炉の核反応と核爆弾の核爆発がまったく違うのは科学者なら常識です。そういうでたらめなことを言っている、専門家ともいえない国内外の人たちが混乱を助長した面はあると思います。さすがに今は、ああいう極端な話をする人間は信用しなくていいと気づいた方も多いでしょうが、そういった話をいまだに真に受けている方もおられます。


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