除染の方針を定めた「放射性物質汚染対処特措法」の成立から間もなく2年がたつが、福島県内にはなかなか除染が進まない、また、いくら除染をしても効果が少ない地域や自治体が目白押しだ。なぜ、こんな事態になってしまったのか? 現場の怒りの声を聞いた。
■「線量が下がった? その発表はうそだ!」
福島県田村市都路(みやこじ)地区―。
福島第一原発の20km圏内にあるこのエリアで、国による直轄除染(対象11市町村)がスタートしたのは昨年7月のことだった。
住宅121戸、道路約96km、農地約127万平方km、森林約192平方kmの除染に投入された人員は延べ約12万人。費用は当初予定の30億円を大きく上回り、66億円にも膨らんだ。
その都路地区の除染が完了し、8月1日から3ヵ月間、地元住民には自宅での常時宿泊が認められたと聞き、現地を訪れてみた。
国道399号沿いの民家。ひとりの中年男性がネズミにかじられてできた天井の穴を修繕していた。
「こんにちは。この辺りの除染はすっかり終わったんですよね」
そう声をかけると、男性は首を振った。
「いいや。新聞がそう書いているだけで、まだ終わってない。うちは6月に終わったけど、ほら、隣の家も向かいの家も、まだ除染作業をやっているのが見えっぺ」
振り返ると、確かに隣の民家ではまだ除染作業の真っ最中。隣家といってもかなり離れているので気づかなかったのだ。いったい、どうなっているのか。
「除染をやってもやっても、なかなか線量が下がらないんだよ」
腕組みをしたまま、男性がそう答える。

現在も県内各地で除染作業が行なわれているが、問題は山積