あけましておめでとう。今年はなんといってもW杯イヤーだね。日本サッカーの未来のために、日本代表には是が非でも結果を残してもらいたい。だから、「また辛口か」と思われようと、今年もズバズバと本音で評論をするつもりだ。もう超辛口でいくよ。

さて、今年も元日に天皇杯の決勝が行なわれたけど、その舞台である国立競技場が今年7月から改修工事に入る。2019年に約8万人収容の新スタジアムが完成予定だそうだ。日本サッカーの歴史を刻んできた“聖地”だけに、感慨深いファンも多いだろう。

僕も、国立競技場にはたくさんの思い出がある。何しろ、日本でのデビュー戦が国立だったからね。1972年10月、(Jリーグの前身である)日本サッカーリーグの一戦、藤和不動産(現湘南)vs三菱重工(現浦和)だ。試合前、グラウンド脇の階段に座って日なたぼっこしていたら、ウチ(藤和)のスタッフに「早く準備しろ。試合が始まるぞ」と急かされて驚いたことをよく覚えているよ。「えっ、でも、まだお客さんが全然入ってないよ」ってね。

当時のサッカーはマイナー。それでも、その試合は2万人くらい入って、藤和の関係者は「こんなに入ったのは初めてだ」と大喜び。でも、ブラジルから来たばかりの僕にすれば、「ガラガラじゃん」という感じだった。しかも、観客は黙ってじっと見ているので、雰囲気も何もない。ピッチの芝もやたら硬い。「俺はこういう国に来たんだな」って、しみじみ思ったものだよ。

スタンドから見て、印象に残っている試合もたくさんある。例えば、80年代、90年代の高校サッカーの人気は、ブラジル人の僕から見てもすごかった。決勝ともなると、満員のスタンドが素晴らしい雰囲気をつくりだしていた。

それとは反対に、三十数年前、北朝鮮のチームが来日して日本リーグ選抜と対戦したときは、北朝鮮を応援する在日朝鮮人の人たちでスタンドが埋め尽くされ、ホームなのにアウェー状態になったこともあった。

そういえば、(クラブW杯の前身である)昔のトヨタ杯は、冬で芝が枯れていたので、スプレーで緑に塗っていたりした。今となっては信じられない話だけど、昔はそんなことが当たり前のように行なわれていたんだ。

そして、僕が一番感動した試合は、1993年のJリーグ開幕戦、ヴェルディ川崎vs横浜マリノス(いずれも当時)だ。「日本にもプロができた。やっとここまできたか」と興奮して鳥肌を立てたね。

そんな国立競技場の改修は、僕にとっても感慨深いことであるのは間違いないけど、率直に言えば「遅かった」という気持ちのほうが強い。02年日韓W杯のタイミングで改修すべきだったと思っているからだ。W杯史上、首都で試合を行なわなかった開催国は日本だけ。海外の人も不思議がっていたし、今思い返しても残念だ。

その02年のW杯開催を機に、新しいスタジアムがいくつか造られ、埼玉スタジアムをはじめとしたサッカー専用スタジアムのよさは日本でも徐々に理解されつつある。選手と観客の一体感がまるで違うよね。

そういう意味では、陸上トラックのある国立競技場はもはや“聖地”にふさわしくない。ただ、新スタジアムの8万人という国内最大のキャパシティは魅力的。そして、Jリーグはぜひそれを満員にできる存在であってほしいね。

(構成/渡辺達也)