橋下徹大阪市長が率いる「日本維新の会」の掲げる「大阪都構想」が正念場を迎えている。

大阪都構想とは、大阪府と政令指定都市である大阪市、堺市を再編してひとつに統合し、府と市が別々に行なってきた二重行政の弊害をなくしていこうというもの。

計画では今年9月、府市統合の協定書議案を大阪市、大阪府議会で承認。それを受けて秋には大阪都移行の是非を問う住民投票を実施し、そこで過半数を得られたら、2015年4月に大阪都移行が実現……のはずだった。

橋下市長を長年取材している地元紙記者は、「はっきり言って、来年春の大阪都実現計画は、赤ランプが点滅している状況です」と言う。

「大阪都実現のためには国の法律を変える必要があると、『日本維新の会』をつくって国政に打って出たまではよかった。ところが、旧太陽の党と一緒になったあたりから期待が一気にしぼんでしまったんです。衆院選挙では54議席を獲得したものの、昨年春、橋下代表の慰安婦発言で支持率は急落。都議選ではたったの2議席しか獲得できず、続く参院選でも8議席と惨敗しました」(地元紙記者)

維新の会への逆風はこれだけでは収まらなかった。まず昨年の8月9日、大阪市と大阪府が大阪都構想について話し合う「法定協議会」の場に、二重行政解消効果の金額が提示されたことだ。橋下市長らは当初、

「統合効果は年間4000億円。この浮いたお金を投資して大阪の成長戦略をより早く確実にする」

と豪語していたが、出された金額は最大900億円。しかも、そのなかには、府市統合とは関係ない地下鉄民営化(275億円)や、ごみ収集の民間委託(79億円)などの金額が加算されており、実際は100億から300億円ほどの効果しかないことが明らかに。逆に、新しくつくる特別区のための庁舎や区議会議員の報酬などに初期投資で640億円、ランニングコストに60億から130億円が必要との話が出る始末となった。

大阪都構想は年間4000億円もの統合効果を出す“打ち出の小槌”のような夢の計画ではなく、赤字を増やしかねないことが明らかになった上、9月には、堺市長選や岸和田市長選挙で大阪都構想に反対する現職に敗北。10月には、大阪市議会で、大阪維新の会所属の美延映夫議長の不信任決議案が可決した。

「市議会で過半数割れしている維新の会は、公明の協力がなくては何も決められない状況。しかし、衆・参議院選での選挙協力も終わり、さらに、橋下市長の慰安婦発言や、公募区長・校長らの不祥事に憤りを感じた公明が距離を置き始め、橋下市長の政策に賛成しなくなってきた。大阪都構想の議会承認でも、公明党の意向が行方を左右するだけに、どうなることやら……」(前出・地元紙記者)

こうした状況のなか、昨年末、橋下市長の口から飛び出した言葉は耳を疑うようなものだった。

「こんなの(大阪都構想)100年がかりの話ですよ。(中略)ここまできたらね、まあ僕としては、ひとりの人間のやることとしては、もういいんじゃないのと。次の人間が来てやってくれるんなら、この後もやってほしいと思いますけどね」

どうやら「大阪都構想」は、“今世紀”中の課題になったようだ。

(取材/ボールルーム)