右のディスプレイを装着すると、目の前に初音ミクが現れる。手を伸ばせば、そこに初音ミクの手が!

自動車、電化製品、精密機械など世界最高水準のクオリティを持つ技術大国日本。だが、その技術は主要産業ばかりではなく、「これってなんの役に立つの?」というミステリアスな発明品へも生かされている。

テクノロジーの最先端にいる人間が生み出した、いわば“謎テクノロジー”。それらが海外では、「日本人はやっぱり未来に生きていた!」と称賛(?)されているのである。

たとえば、ボーカロイドの代名詞、初音ミクと握手ができる「Miku Miku Akushu(ミク ミク あくしゅ)」。ヴァーチャルなキャラクターと握手ができる? 発案した桜花一門氏に、作ったきっかけを聞いた。

「もともとミクってライブに1万人集客するなど、実物のアイドル並みの人気なので、さらに握手会ができるようになればオモシロイのではないかと考えまして。それで『オキュラスリフト』の出資仲間のGOROman氏に話したら、彼がこれでムーヴメントを起こす、と」(桜花氏)

その「オキュラスリフト」とは?

「オキュラスリフトとは、VR(バーチャルリアリティ)用頭部搭載型ディスプレイで、頭につけるとまるで仮想世界に飛び込んだように錯覚できるんです。『Miku…』はこれとフィードバック対応新型ゲームコントローラー『Novint Falcon(ノビントファルコン)』を組み合わせて、本当にミクと握手している気分になれるようにプログラミングしました。ミクとの握手会は定期的に開いてますが、話題になったおかげで参加者はうなぎ上りです」(GOROman氏)

ディスプレイを装着すると非現実的風景に包まれ、辺りを見渡せば、それに呼応して視界も動く。そして目の前には、髪の毛先まで生命感を宿す初音ミクがいる。実際に握手する初音ミクの手はシリコン加工で質感もリアル。手を上下に動かすと初音ミクも笑顔でそれに応えてくれる。

初音ミクの“手”をデザインした白川徹氏が、「化粧品も塗り、見た目、質感ともに16歳の少女の手」と自信満々に語るのもうなずける完成度だ。

握手をしながら思わず手を伸ばす彼の目に見えているのは……

 

なんと、初音ミクが目の前に!

ほかにも、こうした謎テクノロジーは数多く存在する。

未来をプロダクトするチーム、「neurowear(ニューロウェア)」が開発した次世代コミュニケーションツールが「necomimi(ネコミミ)」装着者の脳波を読み取り、猫耳がその状態に応じて動く。ちなみに、集中すると猫耳がピンと立つそうだ。すでに累計7万台売り上げている。

神奈川工科大学助教の小坂崇之氏が開発したのは、妊娠を疑似体験できる「Mommy Tummy(まみーたみー)」。重さだけを感じることができた従来の妊娠ジャケットに加え、これは妊娠1ヶ月から臨月までの赤ちゃんの胎動を、わずか2分の間に感じることができるスグレもの。装置には温水が流れ、温もりも感じられる。

「Kiss Interface」は、デバイスを口にくわえて突起を舌で回転させることで、もう一方のデバイスも連動して動き、双方でディープキス的感覚を得られる装置。遠距離恋愛カップルに需要があるかもしれない。

どれも、使っている技術は世界が驚く最先端。その一方で、どこか愛すべきアイデアがある。そこが、日本人クリエイターが世界に誇れる点かもしれない。

(取材・撮影/昌谷大介、武松佑季、千葉雄樹[A4studio])

■週刊プレイボーイ5号「斬新!?おバカ!?技術力の無駄遣い!? 日の丸『謎テクノロジー』がハイスペックすぎ!!」より