2014年、北海道日本ハムファイターズの二刀流プレーヤー・大谷翔平(おおたにしょうへい・19歳)が2年目のシーズンを迎える。

1年目は、野手としては204打席、打率.238、3本塁打、20打点。投手としては13試合に登板、3勝0敗、防御率4・23の成績を残した。いずれの数字も高卒ルーキーとしては上出来とも言える。また、数字以上に投打ともに随所で「大器の片鱗」を見せつけた。一方、投手か野手のどちらか一本に絞っていれば、もっと活躍できたのではないかと感じたファンも少なくなかっただろう。

だが、2年目の今年も二刀流は継続されるという。

すでに栗山英樹監督(52歳)は、今季の大谷について、投手として中6日で先発ローテーション入り、登板日以外は野手として起用することを明言。球団は大谷の挑戦を話題性のためだけでなく、また将来的に投手か野手のどちらかに絞るための通過点でもなく、本気で二刀流を「完成」させたいと考えているようだ。

日ハム番記者はこう語る。

「大谷本人も球団も、あくまで目標は打っても投げても超一流の究極の二刀流です。ちなみに今シーズンは、1年目に比べて投手・大谷に比重が置かれることになる。開幕当初は打者封印の話もあるほどで、とにかく投手としてのポテンシャルを伸ばすことが当面の目標になりそう。大谷の場合、打者としての完成度のほうが明らかに高いので、投手・大谷の力を上げる必要があるということ。二刀流完成を早めるための妥当な道筋と言えるでしょう」

当初、大谷の二刀流に「懐疑的だった」というこの番記者も、今では全面的に彼の夢を「是」としている。大谷の野球選手としての素質の高さを1年間見てきて、二刀流を否定する気がなくなったというのだ。同じことを口にする記者は少なくない。

「大谷の二刀流挑戦は、球団の全面的なバックアップのもと進められてきた。トレーニングコーチらがつきっきりで、投球にも打撃にも有効な体の使い方を気遣いながらの入念なトレーニングをしている。バッティング練習がピッチングにも生きるし、逆もしかり……投打いずれのトレーニングも双方に好影響があるよう考え抜かれたメニューをこなしています。無駄な練習がないため、二刀流挑戦でどちらか一方の成長が遅れるというものではない。

また、日ハムは入団から3年間は基礎体力をつける期間だと位置づけています。基盤づくりの意味でも、二刀流挑戦は効果的です」(スポーツ紙野球担当デスク)

とはいえ、大谷の二刀流挑戦にはそれなりに“副作用”が伴う。ひとつはケガのリスクが相対的に高まること。またケガのリスクを回避するために、トレーニング内容を控えめにすればそれだけ成長も鈍化しかねない。また1年目は起用法が定まらず、ポジションのかぶるチームメートには少なからず迷惑をかけてしまったことも見過ごせない事実だ。

プロ野球解説者の与田剛氏もこう指摘する。

「そもそも、何ができたら『二刀流が成功した』と言えるのか不明瞭なことが問題だと思います。野手、投手のどちらとも一軍に出場しました、では少なくともプロの世界では二刀流とは言えない。もちろん、成功のラインは球団なり選手が決めること。ですが、一般論から言えば、先発投手なら1年間ローテを守り、野手ならシーズン通じてレギュラーで出続けることでしょう。

これをどちらも達成して初めて、二刀流成功と言える。とてつもなく高いハードルです。そして言うまでもなく、このチャレンジは一軍ではなく、まず二軍から始めるべきだと思います」

大谷は今シーズンの目標について、投手として1年間ローテを守りつつふたケタ勝利、打者としては規定打席をクリアしつつ打率3割に到達、と発言している。もちろん一軍での話である。

仮に中6日のローテを守れたとして登板機会は26試合前後。その半分近くで勝利投手の権利を得て、さらに規定打席446に到達するには、打順にもよるが110試合から120試合にレギュラーとして出場する必要がある。このハードな日程で3割を打つ。これが達成できれば、まさに“偉業”と言えるだろう。

もちろん志が高いことは評価すべきだ。しかし、目標を高く持つことと、無謀な目標を設定することは、まったく意味が違う。

「投手でやるのか打者でやるのか、大谷が答えを出さなければ、チームのバランスを崩しかねない。球団も(答えを出すのは)本人次第と突き放してはいけない。大谷をどう育て、チームの力にしていくのか。野球は言うまでもなく団体競技です。特別扱いが続くようでは、そのチームは強くなりません」(前出・与田氏)

プロは結果がすべて。大谷の2年目のシーズンを見守りたい。