「消費増税は庶民狙い撃ち。わずかな賃金も税金で持っていかれる。この国はビンボー人を切り捨て、低福祉・重税国家になる」と怒る森永氏

物価はどんどん上がるのに、給料はデフレ時代のまま。財務省の暴走で日本は超格差社会への道をまっしぐら。もはや貧乏人は戦争に行くしか生きる道はないのか? 怒りに燃えるモリタク節が炸裂!

■4月以降は奈落の底。もう根性しかない!

今年4月から第2次石油ショック以来35年ぶりの狂乱インフレになるのはほぼ確実です。まずはその根拠を説明しましょう。

消費税が4月から3%上がりますが、税率の上がらない非課税品目を考慮に入れると、単純計算で2.2%のアップ。それに缶ジュースの端数が切り上げになるなどの便乗値上げを合わせると、消費税は実質2.5%くらい上がるという計算になります。

もうひとつ大きな影響があるのは、2013年4月に日銀が異次元の金融緩和を発表したことです。この影響により14年度平均で物価は1.5%くらい上がります。消費増税と合計すると物価の上昇は4%。おそらく週プレの読者は誰も経験したことのない高率インフレが日本を襲います。

第2次石油ショックに比べ、さらに悲惨なのは、賃金が当時はそこそこ上がったのに、今回は1%も上がらないこと。安倍首相は「復興特別法人税を前倒しで廃止するから、企業の利益が増えて賃金が上がるはずだ」と言っていますけど、現時点で企業の利益が増えているのに賃金は一向に上がっていない。連合(日本労働組合総連合会)もベア要求は1%程度。もともと1%しか要求していないのに、何%も上がるわけがありませんよね。

物価が4%も上がるのに給料が上がらなければ奈落の底に落ちていくに決まっている。今は景気がよくなっていますけど、私は4月以降、遅くとも夏以降は真っ逆さまに落ちていくと思いますね。

これはもう相当な根性を出さないと乗り切れないですよ。消費増税前の駆け込み需要なんかやってる場合じゃない。おそらく来年も物価は3%を超えて上がるから、かなり締めてかからないと家計が破綻します。

生活習慣を改め、工夫してできるだけ支出を減らすしか道はありません。今から基礎消費を抑えるトレーニングを始めておいたほうがいいでしょう。

■みんな反対の消費増税。財務省は病気なんです

そもそも、消費税率を上げてもいいことなんて何ひとつないんです。税収も減ると思います。

前回、消費税を3%から5%に増税したときには、デフレが15年間も続きました。その間、税収が増えたのはたった2年間だけ。54兆円もあった税収が、なんと38兆円にまで落ち込んだんです。

安倍首相の周りの人たちはみんな、「この時期に消費増税なんてやめろ!」と言っていました。ところが、財務省が欲をかきすぎて強行したんです。「チャンスを逃しちゃいけない。消費税率は上げられるときに上げてしまおうじゃないか」って。

今、税収はすごく増えているんです。13年度上半期、4%も増えました。それだけで2兆円近くになります。これは4月から9月期の話で、企業の決算はほとんどが3月末なので法人税は入っていません。法人企業統計では、企業の経常利益は前年比で30%も増えている。つまり、法人税は30%増、2兆円くらい確実に増えます。合計すると税収は4兆円増えるわけですから、社会保障費の負担増が1兆円として、これだけで3兆円くらいおつりがくることになるんです。

日本経済は今、それくらい絶好調。普通はね、これだけ好調なときには背中を押して「行け~っ!」って言えば、しばらくそのまま行けるわけですよ。それをわざわざ欲をかいて景気を失速させる必要はないと思います。

もう病気なんですね、財務省は。「税率は上げれば上げるほどいい」というのが財務省エコノミクスですから。

■いざ戦争となれば、兵隊は低所得者層ばかり

たぶん、これからは小泉純一郎内閣のときと同じことが起きるんだと思います。あのときも最初に金融緩和をやりました。アベノミクスと同じです。5年間で上場企業は経常利益が2倍になり、役員報酬も2倍になり、支払う配当金は3倍に増えました。

反対に、中小企業の経常利益、社員に支払われる給与と賞与の総合計は減ったんです。その上、富裕層に2兆9000億円減税して、庶民と中小企業に5兆円の増税をしました。ただでさえ格差が開き始めたところに、税制“改悪”でさらに輪をかけたんだから本当にひどい。

今回、安倍内閣はまったく同じことをやっています。もう“超格差社会”ですよ。私が10年前に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)という本を書いたとき、「おまえ、頭がおかしいんじゃないか」とあちこちで言われました。「そんな世の中になるわけねーだろ」と。

でも、今は年収300万円もらえたら御の字ですよね。私はね、年収100万円時代が来ると確信しています。全然冗談じゃなくて。もはや、非正規社員の年収は100万円台が当たり前。その非正規社員が社会全体の36%になっていますから、彼らが主流になる日はそう遠くないんです。

かなりヤバイですよ。特定秘密保護法も成立しましたが、その先には100パーセント、集団的自衛権の行使があるんです。米軍と一緒になって戦うということなんですけど。いざ戦争となったら、今の自衛官たちは幹部になるんですね。その下に兵隊がつく。兵隊は一般から集めます。日本は志願制ですから、集まるのはみんな低所得者層。それが基本構造なんです。

そもそも、アメリカがそうですからね。イラク戦争に行った前線の兵士の平均年収は1万5000ドル。年収150万円で殺されちゃうんですよ。私たちは今、そんな社会の入り口に立たされているんです。

■森永卓郎(もりなが・たくろう)東京大学経済学部卒業。獨協大学経済学部教授。ユニークなキャラで人気を集める。専門はマクロ・計量・労働経済。『庶民は知らないデフレの真実』(角川SSC新書)、『日本経済最悪の選択』(実業之日本社)など著書多数