セリエAの名門、ACミランに日本代表の本田圭佑が移籍して、はや1ヶ月が経とうとしている。

セリエAデビュー戦でいきなりゴールを決めた本田だが、その後はノーゴール。低迷するミランの救世主として“新・10番”に期待する地元メディア、サポーターの声は厳しいが、現在までトップ下として6試合に出場し、攻撃の起点として十分な活躍をしている。

そもそも、現在のミランのチーム状況は最悪だ。2月7日現在、リーグ戦で10位と低迷。先月中旬にはアレグリ監督が解任され、元オランダ代表の37歳、セードルフが指揮を執っている。

サッカージャーナリストの中山淳氏が解説する。

「もともとアレグリ監督は今季で退陣、来季からセードルフ監督というのが既定路線。ところが、チームのあまりのダメぶりにベルルスコーニの怒りが爆発し、時期が早まったということでしょう。ミラン在籍時から、セードルフはピッチ上の監督のような存在で、将来の指導者として期待されていました。とはいえ、監督経験が皆無の人間にまかせるのは博打ちといっていい。そうせざるを得なかったのは、ミランにお金がないからです」

ピッチ上だけでなく、フロントもゴタゴタ続きだ。長年ミランの強化責任者として辣腕(らつわん)を振るい、本田移籍も主導したガッリアーニ副会長と、父シルヴィオからミランでの仕事をまかされた次女バルバラ・ベルルスコーニの反目は有名な話。

さらに、フロントの内紛の背景には、1980年代からミランを支えてきたベルルスコーニ帝国の凋落がある。これまで汚職から買春まで、さまざまなスキャンダルが取り沙汰されてきながら、財力と政治力にモノを言わせて乗り切ってきたベルルスコーニだが、昨年8月、巨額脱税事件で有罪が確定。11月には議員資格も剥奪(はくだつ)された。

「長年ミランの財政はベルルスコーニの個人資産に頼ってきましたが、それどころではなくなってきました。今後さらにミランはお金を使えなくなるはず。おそらくチャンピオンズリーグに出られない来季は、唯一高値で売れるバロテッリ(イタリア代表)も放出するのでは」(中山氏)

そうなれば、さらなる戦力ダウンは必至。また、多額の利益を見込めるチャンピオンズリーグ出場権を逃すことで懐具合はさらに厳しくなり、チーム再建はますます遠のく。今のミランはそんな悪循環に陥(おちい)っているのだ。

もちろん、本田にはそんなチームの苦境をはね返す獅子奮迅の働きを見せ、「救世主」として名門の歴史に名を刻んでほしいところだが、スポーツライターの杉山茂樹氏はこう話す。

「本田には適応力がありますし、欧州のトップ10から滑り落ちた今のミランでのプレー自体についてはまったく心配していません。ただ、キャリアのピークをそこで埋没させていいのか。本田がさらにステップアップを目指すなら、年齢的には来年が限界。救世主にならなくてもいいから、ミランより上のクラブから声がかかるよう意識してプレーすべきです」

ミランをステップアップの場と考えるのは大胆な意見だが、現在のミランにかつての輝きが無いのもまた事実なのだ。