この2月、東京・築地市場の移転予定地となっている「豊洲(とよす)新市場」の主要3施設の建設工事の再入札が行なわれる。

東京ガスの工場跡地である予定地から有毒物質が検出されるなど、多くの問題を抱えながらも、なぜか既成事実化されている築地移転。その裏には、さまざまな利権が見え隠れする。

ルポライターの明石昇二郎氏がこの問題に迫る。

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新市場予定地から検出されているのはベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムと、食品を扱う場所にはそぐわない有毒物質ばかりである。東京都は対策可能だとして移転を進めようとしているが、その証拠となる詳細なデータがオープンになっているわけではない。

築地市場にはさまざまな業者の組合があり、そのうち仲卸(なかおろし)業者でつくる「東京魚市場卸協同組合」が、当初は移転反対の牙城だった。ところが05年、この組合が抱えていた約10億円の負債を、あるファンドが“不思議な力業”でほぼチャラにしてしまった。

力業の主は、築地移転を推進していた当時の石原都知事の肝煎(きもい)りで04年につくられた「東京チャレンジファンド」。この組合はその後、移転容認に傾いていった。

また、移転が実現すれば当然、元の築地市場の土地が空くわけで、その跡地利用をめぐってもさまざまな利権の噂が浮かんでは消えている。例えば、石原都知事時代に誘致を進めていた16年東京五輪のメディアセンターをつくるという話。

その後には、現在は渋谷にあるNHKが移転するという話も流れた。いずれにしても、銀座にも近い都心の広大な一等地が動く際に、相当な金額が飛び交うことは想像に難くない。

実は、09年の東京都議会議員選挙ではこの築地移転問題が争点となり、移転反対派が多数を占めた。そのときは「もう移転は厳しいだろう」といわれたのだが、いつの間にか、議会でも移転が既成事実化して現在に至っている。

残念ながら、今回の都知事選でこの問題は大きな争点にならなかったが、選挙という情報がオープンになりやすい機会だからこそ、都民に対して“判断材料”が提供されることが望まれたはずだ。

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