3月1日のリーグ戦開幕に向け、Jリーグ各クラブが始動している。今季からJ3(J2の下部・全12チーム)が新たにスタートすることもあり、オフの移籍市場では例年以上に動きがあった印象だ。

そのなかでも一番の勝ち組といえば、やっぱり南アフリカW杯得点王フォルランを獲得したC大阪。戦力アップはもちろん、話題性も抜群。久しぶりの大物外国人で、僕もワクワク感があるね。

また、C大阪が素晴らしいのは、フォルランだけにとどまらず、現役オーストラリア代表のMFニコルス、FC東京から日本代表招集経験もあるMF長谷川といった実力者を獲得したこと。Jリーグだけじゃなく、アジアチャンピオンズリーグもしっかり戦うんだという意気込みを感じる。

そして、フロントがそういう姿勢を見せたからこそ、海外移籍の噂のあった柿谷、山口、扇原(おうぎはら)らの若手も全員残留したんじゃないかな。「ウチにはフォルランが来るのに、どこへ行くんだ」と言われれば、一緒にプレーしたいと思うだろうし、モチベーションも上がるよね。

一方で、そのC大阪と優勝争いをするだろうライバルクラブの動きは地味なものだった。

王者・広島は、堅守を支えた日本代表GK西川が浦和へ移籍。またしても主力を浦和に引き抜かれた格好だ。もともと大金を投じて補強するようなチームではないにしても、3連覇を狙うには物足りない陣容。

昨季、土壇場で優勝を逃した横浜F・マも、チーム得点王のFWマルキーニョスが神戸に移籍。名古屋から元日本代表MFの藤本を獲得するなどしているけど、昨季から上積みがあるかは未知数だ。

資金力のある浦和にしても、広島から西川、イングランドのサウサンプトンからFW李(元広島)など、今季も他クラブに比べれば豪華な補強を行なったものの、「また広島の選手を獲ったのか」といった感じでインパクトは弱い。外国人枠も活用していないし、本気でビッグクラブを目指すつもりがあるのか疑問だ。

結局、どこのチームもそんな状況だから、C大阪にフォルランが加わっても、Jリーグ全体の小粒なイメージを拭うまでには至らなかった。

確かに、ファンやマスコミの目を向けさせるような大物選手を獲得するには、それなりの資金が必要になる。そして、C大阪のように親会社(ヤンマー)から多額の資金援助を受けられるクラブは少ない。

でも、僕はやり方がないとは思わない。例えば、先日、元ブラジル代表のMFジュニーニョ・ペルナンブカーノが現役引退を発表したけど、彼に声をかけるのはどうか。もし、実現すれば「世界一」といわれた彼のフリーキックだけでもお客さんをたくさん呼べるはずだ。彼のように引退した選手、もしくは引退間際の選手なら高額オファーも必要ない。

また、海外で試合に出られず、くすぶっている日本人選手に短期のレンタル移籍のオファーを出したっていい。宮市(アーセナル)なんて、格好のターゲットだと思うんだけどね。

さすがに、今から開幕までに大物を獲得するのは難しいだろうから、6月からのブラジルW杯終了後の移籍市場に向けて、各クラブにはぜひいろいろなアイデアをひねり出してほしい。

(構成/渡辺達也)