経団連VS新経連、この財界の新旧抗争に注目が集まっている。

そもそも日本には、経団連、経済同友会、日本商工会議所という3大経済団体があるが、なかでも経団連は最も大きな力を持ち、政党への献金や政策提言などで、政界にも大きな影響力を持っている。

この、「日本を陰で牛耳る」とまでいわれる経団連から脱退した楽天の三木谷会長が2012年に立ち上げたのが、ネット系企業を中心とする新経連だ。

経団連の企業会員約1300社に対し、新経連の団体会員は約700社。代表理事である三木谷氏のほか、理事にはサイバーエージェント・藤田晋社長、ライフネット生命・岩瀬大輔社長などが名を連ねている。

新経連は、「無意味な規制のために、インターネットでの商売が拡大できないのはおかしい」という問題意識を持った経営者たちが、先頭に立って戦う三木谷氏の下に集まって結成された経済団体。幹部メンバーは多くが起業家で、出世競争を勝ち抜いたサラリーマンが集まる経団連とは色合いがまったく異なる。

ではなぜ、この新経連が注目を集めているのか? それは先の都知事選で小泉純一郎元首相のスポンサー役となったのが新経連ではないか、とささやかれているのだ。

もしもその噂が本当だとすれば、なぜ三木谷氏は小泉氏を支援するのか。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏はこう読む。

「三木谷氏は薬のネット販売に進出しようとした際、薬事法の壁に行く手を阻(はば)まれ、政策や規制を動かすのも結局は政治なんだと痛感した。だからこそ政治に対して大きな影響力を発揮し、将来的には経団連に代わって新経連が財界のメインストリームになるような野望を持っている。昨年の参院選では民主党(当時)の鈴木寛氏をはじめ数人の政治家を応援しました、その延長線上に今回の都知事選もあったのではないかと思います」

実際、両者のつながりは確認できていないが、原発推進派の現政権&経団連に対抗するため脱原発派の小泉氏と手を組むという構図は、あながち間違いではないはずだ。

一方で、安倍首相も新経連の会合に幾度となく顔を出しており、両者は“蜜月”という表現を使うメディアもある。新経連はそこまで政治の中枢に食い込んでいるのか?

「両者は決して全面的な協力関係にあるわけではない。安倍首相からすれば、経済界に対する“全方位外交”の一環として、ネット系起業家の代表格である三木谷氏と付き合っているにすぎません。アベノミクス『第三の矢』の成長戦略に関しては、ネットやテクノロジーをうまく巻き込まなければならないですからね」(経済紙記者)

政治家への支援面では徐々に成果を上げつつある新経連だが、もうひとつの影響力である政策立案に関しては、あまりいい話は聞こえてこない。

「新経連には、経団連のような組織立った政策立案チームがあるわけではない。三木谷氏が思いついたことを、子飼いの経営者に『これやっといて』と丸投げしているケースが多いのが現状です。当然、彼らはその道のプロではないので、いい政策案をつくるのは難しい。本業で忙しいのに……と、不満の声も聞こえてきますよ」(新経連関係者)

つまり、現在の新経連は「三木谷氏の意向を代弁するネット系業界団体」にすぎない。今後、新経連が旧体制にくさびを打ち込める存在になるかは、三木谷氏の手腕にかかっている。

(取材/頓所直人)