学校名に頼らずに“勝ち組”になるための秘訣を山内氏が伝授!

2013年春の大卒者就職率は約67%。3人に1人が未就職のこの時代に、いわゆる三流大学にいながら、一流企業の内定を獲得する学生がいる。

『就活下剋上』では、そんな彼らの就活の実例を数多く紹介。学校名に頼らずに“勝ち組”になるための秘訣とは? 著者の山内太地氏に聞いた。

―“三流大学”に通う学生たちの就活の現状は?

「アベノミクス効果で採用市場は一時的に活況を呈していますが、大企業ほど特定の高偏差値大学の学生を獲得するためのセミナーを開催するなど“ターゲット校”を絞る傾向にあります。早慶上智、MARCH(明治、青山、立教、中央、法政)以下の大学では就職しにくい状況が強まっていますね。決して表には出ませんが、卒業生の4割、5割が未就職という大学も少なくありません」

―近頃は学生の質が低下している点も問題視されています。

「私はこれまでの取材で国内の4年制大学786校すべてを訪問しましたが、学生の質の低下は中堅大学、下位大学ほど顕著といえます。自宅と大学を往復するだけの“引きこもり学生”、就活が始まるまで地元から出ない“ローカル学生”、大人と話すのが苦手で『就職課に行くのが怖い』といった“対人恐怖症の学生”が増えているように見受けられますね」

―一方で、同じ三流大学にいながら“下剋上”をなし得た就活生がいます。両者の差はどこに?

「『どうせ自分は○○大学だから』というコンプレックスがなく、行動派である点が違います。OB・OG訪問やインターンシップで学生時代に企業の中の人と積極的につながろうとしますし、自分を卑下することなく上位校の学生にも前のめりでガンガン友達になろうとします」

―取材されたなかで最も印象的だったのはどんな就活生?

「国士舘大学から資生堂に入った竹岡君でしょうか。就活に向けて、彼は志望する化粧品メーカーの商品を実際に使い、20代から50代の男女150人に10項目のアンケート調査を行ないました。どんな化粧品をどの年代の人が使っているのかを徹底的に調べ、業界研究の材料にしたわけです。

もちろん、この話は面接官の心に響く自己PRのネタとなり、結果的に資生堂を含む化粧品メーカー2社から内定を得ました。ちなみに、その行動力が評価されてか、“前座”で受けまくった住宅メーカー4社からも内定を得ています」

居酒屋バイトも生かし方次第

―ほかにはどんな就活生が?

「獨協大学から大手IT企業に入社した藤木君です。彼の場合、学生時代はインターンも留学も経験していません。ひたすら週5ペースで居酒屋バイトを続けただけです。ただ、彼がほかの学生と違ったのは、ホールで接客しながら常連客と会話を弾ませ、そのまま閉店後に飲みに行ってしまうこと。世界中を飛び回っているバイヤーなど、毎日違う常連客と飲みに行っては仕事の話をする。彼は居酒屋のバイトを通じて社会と接していたのです。

就活ではそこで培ったコミュニケーション能力を生かそうと営業職を志望。第一志望だったIT企業への入社を決めました。ただの居酒屋バイトでも、生かし方次第ではその他大勢の就活生を一歩出し抜くことができるということです」

―自分のことを“三流大学出身”と思い込んでいる学生が彼らから学ぶべきところは?

「三流大学から一流企業に入った学生の中には、学生時代に企業が求める行動力を自らの努力によって“後天的”に身につけた人が多い。下剋上のチャンスは誰にでも広がっているということです」

(取材・文/興山英雄 撮影/岡倉禎志)

●山内太地(やまうち・たいじ)1978年生まれ。大学ジャーナリスト。東洋大学卒業後、ホテル、出版社勤務を経て独立。理想の大学教育を求め日本全国の4年制大学をすべて訪問。近著に『アホ大学のバカ学生』(共著)、『こんな大学で学びたい! 日本全国773校探訪記』など

■『就活下剋上』(幻冬舎新書 819円)進路指導法、大学の経営、入試広報などのテーマで講演を行なう著者が、三流大学から一流企業に就職した学生たちのエピソード、偏差値が低くても就職に強い大学など、刻一刻と変化する就活戦線の実情とともに、学校名に頼らず就活を乗り切るノウハウを伝授