今、飲食業界では、メニューのなかの「一品だけ食べ放題」というサービスが人気になっている。
「食べ放題」といえば、いろいろな料理を食べられるのが一般的で、それが醍醐味(だいごみ)でもある。それに対し、「甘エビ刺身食べ放題」「エビフライ食べ放題」「明太子食べ放題」「松茸ご飯食べ放題」など、指定された単品だけ食べ放題になるのが「一品食べ放題」だ。
なぜ、こうしたサービスが増えているのか? 外食産業に詳しいフードアナリストの重盛高雄氏に聞いた。
「一番の理由は話題性ですね。これまで飲食業界で行なわれてきた価格競争が行き詰まるなか、ある一品を目玉にすることでお店の特色を出しているのです」
確かに「食べ放題」と聞くと、思わず行きたくなってしまう人も多いはず。しかも、一品に絞ることでお店側のメリットもある。
「通常の食べ放題店のように何種類もの料理を提供するわけではないので、スタッフの負担は大きくない。その上、一品に注力できるので仕入れコストを抑えられ、クオリティの高いものを提供できるというわけです。決して、ものすごく儲(もう)かるという商売ではありませんが、話題性があって集客を見込め、時間制にすれば回転率もアップできます」(重盛氏)
はたして、お店側はこれで赤字にならないの?
この一品食べ放題、お店側でははたして採算は合うのか? 焼き牡蠣の食べ放題を行なっている『かき小屋 高円寺』の松田真店長に聞いてみた。同店の食べ放題は土・日・祝のみ実施しており、価格は昼が100分3180円、夜は120分3380円だ。
「お出しするのは北海道産や広島県産など国産にこだわっていますが、各生産者の方々とずっと懇意にさせていただいているので、安く大量に仕入れることができるんです。とはいえ、20個以上食べるお客さまばかりになると、採算的に厳しいですけどね(笑)」
松田店長によると、一人当たり平均20個ほど食べるそう。ちなみに60個以上食べた女性もいるとか!
「うちは調味料持ち込みオーケーなんです。ポン酢やバター醤油などお好きな味で楽しむのがオススメですね」(松田店長)
ほかにも全8種の納豆を好きなだけ食べられる「納豆工房せんだい屋」や、パルマ産生ハム60分食べ放題を実施する「BAL PINOLO(バル ピノーロ) 銀座」など、探してみるといろいろある。
どの店も採算ラインは低く、いわば赤字覚悟の大サービス「一品食べ放題」。合コンや歓送迎会の幹事は注目だ。
(取材/昌谷大介、千葉雄樹[A4studio]、撮影/五十嵐和博)
■週刊プレイボーイ12号「ブームの予感!!一品食べ放題でどれだけ食えるか!?」より