消費者にとっては値上げがいのか、それともお値段据え置きで内容量減がいいのか。今回の増税で企業の対応は分かれた

4月1日から消費税が8%に増税された。この増税分は「値上げ」で対応した企業がほとんどだが、なかには「減量」で増税対策を行なった業種もある。

大手スーパーに食品を中心に卸(おろ)している、大手食品卸会社の営業社員A氏が明かす。

「お菓子だけでみても、亀田製菓が『柿の種』の袋詰めを8~9%減量済みで、3月にはネスレ日本が『キットカット・ミニ』の袋詰めを15枚から14枚に減らしました。でも、こうした“実質値上げ”は一般向けに発表されないケースも多いので、おそらく消費者は気づかないでしょう。キットカットの袋詰めだけでなく、多くのスナック菓子なども実はこっそり内容量を減らしているんですよ」

100円での支払いが基本のコインサービスでも、サービスの縮小などで増税に対応しているところがある。コインランドリー「マンマチャオ」約130店を運営するエムアイエスの三原淳社長が話す。

「一部の店舗では100円10分の乾燥機の稼働時間を9分に短縮する予定です。洗濯物は通常30分で乾くとされていますが、改定後は300円を投入しても3分足りなくなってしまう計算です。洗濯物を少なめにするか、100円を投入してプラス10分乾燥機を回していただくか……。乾燥機の燃料のLPガスが高騰しているんです。ご理解ください」

値上げを取るか、商品の減量およびサービスの縮小を取るか――この二択で頭を悩ませた企業は多いだろう。

この増税による値上げで、長らく続く低価格競争からも脱却?

一方で、この増税により経営が苦しくなる企業もあるという。茨城県内のある納豆メーカーの社長が話す。

「全国納豆協同組合連合会では、加盟メーカーが一枚岩となって増税分を価格に転嫁するための紳士協定を結びました」

特売になりやすい日配品は、業界内で“価格転嫁カルテル”を結び、横並びで値上げしたケースが多い。だが、“激安を売り”にしている一部の業者にとっては、増税分をなかなか価格に転嫁できない。

「紳士協定を結んだといっても、そこに入っていない大手メーカーも多く、なかには“納豆3パック50円”なんて激安品を出している業者もいる。スーパーはスーパーで増税後も売価を維持しようとしてくるはずですから。大豆が高騰している今、本来は売価を1~2割上げてほしいというのが本音ですが、増税3%分も転嫁できないと、今後、廃業する納豆メーカーが続出するかもしれません」

こうした各社の胸の内を、『小さな会社・お店のための値上げの技術』の著者、辻井啓作氏が代弁して語る。

「客離れにつながる値上げなんてホントはしたくないというのが企業の本音。しかし一方では長引く低価格競争から抜け出したい思いもある。増税は消費者に受け入れられやすい値上げ要因でもあるので、そうした企業にとっては利益挽回の好機でもあるんです。来年には再増税も控えています。今後ますます、さまざまな手法を用いた値上げが増えるかもしれません」

消費者の側も、値上げの内実を冷静に判断する目を持とう。

(取材/興山英雄)