当選翌日の会見。何度も水を飲み干す姿に、報道陣の間からは「やけ酒を飲んでいるみたい(笑)」との声も

23・59%。過去最低の投票率となった“出直し大阪市長選”に勝った橋下徹氏(日本維新の会共同代表)が会見を行なったのは、翌3月24日午後のこと。

「橋下氏は自分の得た約37万票が直近の歴代市長の得票より多かったことを挙げ、『歴代市長のように、(大阪都構想など)公約は進めさせてもらう』と強気でした。ただ、そんな強い言葉とは裏腹に、表情はとても疲れているように見えた。会見しながらコップに入った水を何度も飲み干していた姿が印象に残っています」(全国紙政治担当記者)

疲れ切っていた? 無理もない。当選したものの、無効票は6万7506票(そのうち白票が4万5098票)。その多くが出直し選への批判票だったと考えると、タフな橋下氏でもヘコまざるを得ない。実際、選挙で勝ったにもかかわらず、橋下・維新の今後はイバラの道が待っているのだ。

まず、最初に待ち受けるのは、大阪都構想を審議する法定協議会のメンバー入れ替え問題。

メンバー19人中、維新の大阪市議、府議は9人で過半数に達していない。そのため、自民、公明、民主など他党メンバーの反対で区割り案が決まらないなど、大阪都構想実現に向け行き詰まっていた。

民主党・無所属ネット大阪府議団の中村哲之助幹事長が語る。

「出直し選挙に勝ったら、その民意をテコに大阪都構想に反対する他党のメンバーを維新のメンバーと差し替えるというのが、橋下氏の言い分でした。しかし、この低投票率と無効票の多さでは、民意を得たとはいえません」

つまり、市長に再選されても、メンバー入れ替えはできないってこと? この疑問に公明党大阪市議団の辻義隆副幹事長もうなずく。

「メンバーの罷免権は誰にもありません。もともとメンバーは府議会、市議会の議員構成に応じて、各会派から出すというのが合意でした。しかも、それ以降に維新の府議5人が党を離れている。橋下氏が強引にメンバーを替えるというなら、こちらも最初の合意どおり、『維新こそ議員の減少に応じて、メンバーを減らすべき』と要求するしかありません」

最後のウルトラCは、来年4月の統一地方選

法定協議会の開催スケジュールが遅れていることも、大きなダメージになっている。法定協議会は2月12日に開かれる予定だったが、出直し市長選のために中止となったままだ。

前出の民主・中村氏が指摘する。

「4月は市長選で遅れた大阪市の予算作成をしなくてはならない。次回の法定協議会は早くても5月の連休明けになるでしょう。橋下氏は出直し選挙で、自ら大阪都構想の論議を3ヵ月もストップさせてしまったんです」

これで夏までに大阪都の設計図を作り、秋に住民投票を実施するというスケジュールも怪しくなった。ここまで追い詰められると、残る手段はひとつ。府と市の両議会で大阪都構想を可決し、住民投票になだれ込むというものだ。

だが、悲しいかな、維新は両議会で過半数を占めていない。他党が一致して都構想に反対する現状では可決・承認は望めないのだ。

そこで最後のウルトラCとして浮上しているのが、来年4月の統一地方選で勝利し、過半数を制するというシナリオだ。前出の公明・辻氏がこう推測する。

「来年4月の統一地方選に合わせて、橋下氏と松井一郎大阪府知事がダブル辞任し、首長選を仕掛けてくるかも。それで統一地方選への関心を高め、府と市の両議会で過半数を奪おうという作戦です」

とはいえ、このウルトラCも不発に終わる可能性が大だ。前出の民主・中村氏が断言する。

「先の出直し市長選では候補を立てなかったが、もし来年4月に再選挙となったら、今度こそは維新以外の会派で強力な統一候補を擁立し、真っ向勝負をするつもりです」

結果はどうなるのか? 前出の全国紙政治担当記者が予測する。

「橋下人気が最高潮のときでさえ、維新は市議会で過半数を占めることができなかった。ましてや、今の維新の政党支持率は1%ほど。どうあがいても過半数は無理です。また、首長選でも維新は堺市、岸和田市と負け続き。人気の高い橋下氏は勝てても、松井府知事は落選でしょう」

そうなると、維新は“橋下ひとり”状態になりかねない。

「橋下さんは頭のいい人。そんな状況が見えてきた時点で、あっさりと政界から引退するかもしれません」(前出の公明・辻氏)

橋下・維新は消滅するのか? その答えがわかるのは来年4月だ。

(取材・撮影/ボールルーム)