全国にある人気ブランドショップのどこかで、毎週末、見かけることができる国際色豊かな行列。限定商品などのプレミアムアイテムをGETし、ネットオークションで転売して儲ける人々=転売ヤーたちだ。今、この行列の位置取りをめぐり、「日本人VS中国人」の激しい戦いが発生している。

ここ3年くらいで一気に急増した中国人バイヤーたちは、日本に住む中国人、またその家族を総動員して列に並ばせる。ひとりの中国人バイヤーが100人、200人という人数を連れてくることも珍しくない。

それに対抗する日本人転売ヤーは、ホームレスを大量に雇って並ばせる。ひとつでも多く商品を手に入れたい転売ヤー同士でトラブルが発生するのは必然だ。

「中国人の割り込みはとにかくひどくて、店員や警備員がちょっと目を離した隙に列に割り込むわ、一回抽選した後にまた抽選券を引こうとするわとやりたい放題。それに対してみんな文句は言うけど、特に激しく怒るのがホームレスの人たちです。彼らも生活がかかっている。商品が手に入るのと入らないとではアルバイト代が違うし、特に数が少ない商品を手に入れるとボーナスがもらえるから。

だから中国人が割り込みすると、いつも『割り込みしやがって!おまえには抽選させない!』『ワタシ、割り込みしてないヨ! トイレに行っていただけだから!』とか『追い出してやる!』『やれるならやってみな!』といったケンカがしょっちゅう起きます(笑)」(転売ヤーA氏)

こうして日本人転売ヤーがホームレスを雇いだしたら、今度は中国人は中国以外の人を雇い始めた。

「最近は、中国のバイヤーが中国人だけでなく、フィリピン、カンボジア、タイ、ベトナムなどほかの国の人も雇うようになってきた。アルバイト代は並ぶ時間にもよるけど、中国人だと5000~1万円、他国だと3000~5000円。やはりバイヤーも自分の取り分が多いほうがいいですからね。最近の行列は人種のるつぼです(笑)」(転売ヤーB氏)

ケンカのはてに、お互いが手を組んだ?

もはや、いたちごっこの状態。ごく一部だが、日本人転売ヤーもどんどん大人げなくなっている。

「都内の、ある人気ショップの限定品を中国人に買わせたくないバイヤーは、学生やホームレスを大量に集め『ウチらのところで入荷数は終わった』と中国人にウソを教えたり、中国人のアルバイトが大量に来ると人を追加で呼んで対抗したり。なので、そのショップの行列はいつもピリピリ。それを知るほかの転売ヤーや一般客たちは最近、足が遠のいている。ショップとしてはいい迷惑でしょうね」(転売ヤーC氏)

しかし、ケンカばかりではない。意外なことに最近は、日本と中国のバイヤーの“持ちつ持たれつ”関係も生まれつつあるという。

「お互いを利用し合ったほうが得だということに気づいた日本と中国のバイヤーもいて、最近は情報交換したり、どちらかが商品を入手できなかったときは譲ったりしている。大人の関係というんですかね(笑)」(転売ヤーA氏)

こうして、ただ単にその商品が欲しい一般の人は、ますます入手しづらくなっているのだ。