「憲法9条」は憲法改正を目指す安倍首相にとって“目の敵”といえる存在だ

日本の市民団体が憲法9条(正確には憲法9条を堅持してきた日本国民)をノーベル平和賞の候補として申請し、先日、ノルウェーのノーベル委員会が推薦を正式に受理したらしい。もし、受賞が決定すれば佐藤栄作元首相が1974年に同賞を受賞して以来の快挙。ぜひ、応援したいところだ。

しかし、自民党を中心とした憲法改正への動きが強まるなか、その憲法9条が「骨抜き」にされかねない事態が進行している。

「安倍政権は憲法改正ではなく、内閣の閣議決定による憲法9条の解釈変更で集団的自衛権の行使に道を開こうとしていますが、これは『憲法泥棒』と言ってもいい卑劣な行為です」と語るのは憲法学者の小林節(せつ)・慶應義塾大学名誉教授だ。

「そもそも、国会も内閣も日本国憲法の上に成り立っているのに、その内閣が勝手に憲法の解釈を変更し、憲法9条が明確に禁止している集団的自衛権の行使を容認するなど本末転倒、憲法がこれほど軽んじられたことはありません。

また、最近は公然と憲法を批判し、石原慎太郎氏のように国会議員の立場で『あんな憲法は認めない』などと軽々しく発言する人もいますが、憲法99条には『国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ』と、あることを完全に無視しています。

ほかにも、日本国憲法を『アメリカの押しつけ』だという指摘がありますが、確かにこの憲法の出自はあまり良くないかもしれない。それでも、日本国憲法のおかげで戦後の日本が人権を尊重する国になり、特に9条の存在によって他国の戦争に巻き込まれずに済んだということを忘れてはいけません。

立憲主義の憲法は『国を縛る』役割を担っていますが、その実体は『文字』でしかない、儚(はかな)い存在です。だからこそ、国民がその価値を自覚して守る必要があります。

今の安倍政権は、いうなれば力ずくで憲法9条を『暗殺』しようとしているようなものです。国民はその目撃者として『目の前で暗殺事件が起きている!』と叫び声を上げなければ、後から『憲法9条は自然死だった』と言われかねません」

ちなみに、ノーベル平和賞の発表は今年10月。晴れて受賞の暁(あかつき)には「憲法9条を守る日本人」の代表として、授賞式にはぜひ、安倍首相に出席していただきたい!

(取材・文/川喜田研)