消費税率が上がった直後の今、なぜか中古車を買う絶好のタイミングなのだという。

不思議な感じがするが、その背景には、“ちょっぴりグレーな体質”を抱える中古車業界の特殊な裏事情があった。

関東で中古車店を経営し、海外にも広い販売網を持つT氏が解説してくれた。

「新車の場合、まず定価があり、そこからの値引き率やアフターサービスなどで販売店は勝負します。しかし中古車の場合は定価が存在しない。どんな値段をつけようが販売店の自由です。

もちろん、中古車価格には相場が存在しますので、平均相場を逸脱した価格をつけても売れません。しかし相場は需要と供給のバランスで決まるので、需要が供給を大きく上回れば、平均価格は上昇していくのです」

ということは、増税前の時期は大規模な駆け込み需要が発生したので、3月までの中古車相場は高かったってこと?

「そのとおりです。平均的な値動きを示すトヨタ・アクアの例で見てみましょう。

例年であれば、12月から1月に年が変わればクルマの年式が落ちますので、中古車相場もガクンと下がるんです。

しかし、今年の相場は全体的に横ばい状態でした。これは“事実上の値上げ”を意味しています。そして2月、3月とどんどん上昇カーブを描き、増税後の4月から下降に転じたのです」

具体的な数字でいうと、昨年末から今年1月末の相場が171万円。3月末には176万円に上昇し、消費増税後の4月中旬には、174万円と値下がりしている。

増税分の3%なんて簡単に消し飛ぶくらい値下がりする

これはアクアなどのファミリーカーに限った現象なのだろうか?

「2シーター車などの趣味性が強い車種や希少性の高い個体は別ですが、全体的な相場はおおむね似たような値動きでした。

アクアは新車時の価格が安く、発売されてからさほど月日がたっていないので数万円の値動き幅ですが、高級外車やミニバンなど、中古車市場で人気のある車種は数十万円の差が出てきます。

今後も夏場にかけてジリジリと値下がりが続くと思いますよ

なぜそう言えるのですか?

「もともと、春は中古車がよく売れる時期なんです。今年はそこに増税前の駆け込み需要が加わったので、3月までに割高なクルマをバンバン売って利益を蓄え、誰もが予想していた増税後の冷え込みに皆が備えたんですよ。

でも、増税された直後の4月1日にガクンと値下げするのはあからさますぎるでしょ?(笑)

だから徐々に値下げするのです。これから、増税分の3%なんて簡単に消し飛ぶくらい値下がりすると思いますよ

最高の買い時は夏ですか?

「一概にそうとも言えません。例えば、3月までに売って荒稼ぎしようと大量の在庫を仕入れたはいいが、売り切る前に4月を迎えてしまった販売店も多いのです。

特に小規模なお店はクルマを保管するスペースも限られていますし、ストックしておくだけで駐車場代などのコストがかかってしまう。従ってさっさと売って身軽になりたいというのが本音で、“今から夏にかけて”が買い時だと言えますね」

まさに今が、中古車の買い時ということ。検討中の人は夏までが勝負だ。

(取材・文/菅沼 慶 手束 毅 山崎 龍 萩原文博 高橋 満)

■週刊プレイボーイ22号「16ページ特集 消費税の上がった直後の今こそ中古車が買い時であるこれだけの理由」より