晩婚化の昨今、結婚してから子作りを意識するまでの数年の期間で「大きなチャンスを失っている」と語る辻先生

6月15日は「父の日」。自分の父親に感謝すると同時に、20代ともなれば独身であっても、自ら“父”となることも考える、そんな日だ。

しかし、世の中には“不妊”で悩んでいる夫婦も少なくない。しかも、世界保健機構(WHO)の調査によれば、その要因の半数ほどが男性にあることが判明している。男性不妊専門「恵比寿つじクリニック」の辻祐治先生に話を聞いた。

「そうですね、WHOの調査は1998年のものですが、今も大きくは変わらないでしょう。むしろ最近、『男性不妊』が認知されはじめたことで、潜在的に存在していた患者が明らかになってきました」

辻先生によると、こうした男性不妊の原因には、自慰などで強い刺激に慣れてしまい、膣内で射精できなくなってしまう「射精障害」や「勃起障害」といった要因もあるが、一番多いのは「精子の異常」だという。

「不妊で一番多いのは、精液中の精子の数が少なかったり、運動率が悪かったりする『乏精子症』や『精子無力症』なのです。精子が全くいない『無精子症』といった症例もあり、こうした精子の異常でおよそ半数を占めています」

実は、「精子の異常」は決して他人事ではない。「乏精子症」や「精子無力症」には、なんと一般男性の15%に認められる「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」も大きく関係しているという。

「精索静脈瘤は、『乏精子症』や『精子無力症』の患者の40%ほどでみられるもので、精巣の静脈に血液が逆流して精巣の上部がミミズのように腫れます。逆流した血液によって精巣が温められてしまい、精子の生産量や質に悪影響を及ぼすのです。ただし手術で逆流は止められるので、精索静脈瘤が不妊の原因なら、手術することによって妊娠できる期待は、かなり高いです」(辻先生)

また、これらの病気以外にも、「晩婚化で妊娠ができにくくなっています」と辻先生は警告する。男性の晩婚化が不妊の要因とは、いったいどういうことなのか?

「あまり認識されていませんが、精子も老化するんですよ。妊娠に関して、精子は量よりも質が大事だとされ、精子が元気で運動率が高ければ妊娠の期待は高いのです。一方で、加齢によるホルモンの変化などによって、精子の質が低下してくれば妊娠させる力が落ちてきます」

力の強い精子をつくるには?

男性はどうしても陰茎の長さや大きさを気にしますが、精巣が大事なんですと力説

この精子の劣化に関しては、今年4月に独協医大越谷病院泌尿器科の岡田弘教授らのグループが論文を発表している。徐々に劣化する精子だが、誰もが若いうちに結婚できるとは限らない。強化するにはどうしたらいいのか。

「とにかく出して、新鮮な精子を作っておくことが大切。頻繁に射精すれば、精子を製造するために必要なホルモンなども活性化され、自然に良い精子をたくさん作る体になってくるんです。また、精子を製造する細胞は熱に非常に弱いので、サウナや長湯などで精巣を温めないようにしたほうがいいでしょう」(辻先生)

精子をつくる精巣も、あくまで体の一部。喫煙や睡眠など生活習慣も改善しなければならない。日本では、2年間の子作りで妊娠しなければ不妊と定義されている。しかし、健康的な生活習慣を続けて子作りを行なっているにも関わらず妊娠できない場合は、半年で不妊を疑ったほうがいいと辻先生は言う。

「妊娠は相手があってのこと、年に12回しかチャンスはないんですから、自分に原因がないか早めに確認しておくことが重要。現在、結婚の予定などがなくても、将来的に子どもを望むなら早めに精液検査をすることが大切です。30歳からでは、すでにスタートからハンデを抱えていると思ってください。もし異常があっても精子を改善する治療もあるんですから」(辻先生)

20代であっても、将来を見据えるなら早くから精子の健康状態をチェックしておくことが大切だ。

また、子ども服ブランド・ミキハウスの「出産準備サイト」には、良い精子をつくるための10ヶ条が紹介されている。

1.禁欲期間を短くして射精をする2.ブリーフよりも通気性のよいトランクスをはく3.長風呂、長時間のサウナは避ける4.膝の上でノートパソコンを使わない5.自転車・バイクに乗りすぎない6.育毛剤を飲まない7.禁煙する8.お酒を飲みすぎない9.規則正しい生活を送る10.放射線に注意する

いつかやってくる、自分が父になる日のために――、「父の日」だからこそ、改めて自分の生活習慣を見つめ直してみてはどうだろうか。

■ミキハウス 出産準備サイト パートナーとともに…「男性不妊」治療の現場http://baby.mikihouse.co.jp/information/post-1558.html