自身が優勝した23年前との共通点を佐々岡真司氏が語る!

1991年の優勝から苦節23年、あの強かったカープが完全復活のときを迎えようとしている。最後に勝利の美酒を味わったエース、佐々岡真司氏が語る、当時と現在の共通点とは―

■神経質な野村監督の下、緻密な“広島野球”

今年は広島の街に飲みに出かけると、市民の盛り上がりが本当に違います。

僕自身も、「今季のカープは、このまま優勝までいけますか?」とファンから何度も聞かれました。チームの快進撃のおかげで、僕が取材してもらう機会も増えましたからね(笑)。

今季の好調は、就任5年目の野村謙二郎監督のやりたい野球が浸透してきたことが大きい。去年3位に入り、クライマックスシリーズでは甲子園で阪神に2連勝。Bクラスに15年間沈んでいた壁を突き破り、若いチームは自信をつけたと思います。

開幕前の春季キャンプでは、選手たちの意気込みが明らかに例年と違いました。

「広島の練習は厳しい」という話は、みなさんも聞いたことがあると思います。

実際、僕が入団した90年、山本浩二監督の頃は“地獄のキャンプ”でした。朝9時に練習が始まり、2、3時間走りっぱなし。怖いコーチがいて「失敗したら、どやされる」ってビクビクしていましたよ(笑)。

ところが、今は他チームもよく鍛えられていますし、カープ伝統の厳しい練習も、06年にブラウン監督が就任して変わりました。

ただ、カープには「広島野球」といわれる緻密さが受け継がれているんです。今年のキャンプでは状況別の守備&走塁練習、サインプレーなど、内容の濃い練習が繰り返されていました。その成果がシーズンに入り、守備のファインプレー、好走塁につながっています。野村監督は神経質な方で、いろいろと細かいんですよね。

優勝できるチームは若手、中堅、ベテランがひとつに

■“メークドラマの呪い”を脱する好機到来!

残念ながら、カープでは主力選手が次々とFA制度で資金力のある球団に引き抜かれてきました。金本知憲(ともあき)や黒田博樹、今季は大竹寛が巨人に移籍。しかし、限られた資金力で、地道に若手を育ててきた。そうした姿が“カープ女子”を筆頭にした人気につながっているのだと思います。

例えば、大竹の人的補償でやって来た一岡竜司は、巨人時代はあまり人の輪に入っていけない性格だったらしい。それを知ってか、カープでは捕手の石原慶幸(よしゆき)がベテランや若手の投手たちを伴い、食事の機会をつくって溶け込ませようとしました。一岡は今季、セットアッパーとして大活躍していますが、そうした背景があるんです。

優勝できるチームは若手、中堅、ベテランが本当にひとつになっています。僕が入団2年目の91年、オールスターまで中日に大差をつけられていましたが、チームには「いけるのでは?」という雰囲気がありました。当時の選手会長の山崎隆造さんがチームをまとめ、9月に敵地で中日に3連勝。勢いそのまま逆転優勝しました。

今季のチームは、投手陣は前田健太、バリントン、大瀬良大地と安定感のある先発がそろい、リリーフの駒も豊富。打線もエルドレッド、キラの長打あり、丸佳浩、菊池涼介の足を絡めた攻撃ありとバランスが取れています。そんなチームを選手会長の梵英心がうまく引っ張ることができれば、自然と見えてくるものがあるはずです。

もともとカープが長らく低迷したのは、96年の長嶋巨人に11・5ゲーム差をひっくり返された“メークドラマ”がきっかけ。あそこで優勝できなかったから、ズルズルと低迷してしまった。

昨季は若いチームが16年ぶりにAクラス入りを果たしました。今年も順調にチームが出来上がっています。このまま首位を走って優勝すれば、本当に強い常勝軍団になっていくはずです!

(取材・文/宮崎俊哉 山田美恵 中島大輔 撮影/伊藤晴世)

■佐々岡真司(ささおか・しんじ)1967年生まれ、島根県出身。89年ドラフト1位でNTT中国から広島に入団。2年目の91年には17勝を挙げ、MVP、沢村賞、最多勝を獲得し優勝に貢献。07年の現役引退後は解説者として活躍。通算138勝153敗106 セーブ