AKB48のメンバー、高城亜樹がTwitterのアカウントを何者かに乗っ取られ話題になったばかりだが、こうした「SNS乗っ取り事件」は、何も有名人だけに起こるものではない。最近は、一般人がLINEのアカウントを乗っ取られる事例が急増しているのだ。

6月中旬までにLINEを乗っ取られたという被害は、確認されているだけでも303件。有名人のTwitterアカウントが乗っ取られるのは愉快犯の場合が多かったが、LINEの場合は少し違うと、サイバー犯罪に詳しいITライターの中村浩之氏が説明する。

「LINEの乗っ取り被害はTwitterのそれとは違い、複数の友人に電子マネー購入を呼びかけるメッセージが一斉に送信されるというケースが報告されています。現時点での被害総額は少ないものの、電子マネーは匿名で購入、使用できるものなので、足がつく可能性の高いクレジットカードより悪用されやすい。登録者数が全世界で4億人を超えるLINEで悪用が起こったのは脅威で、今後被害が拡大しないか心配です」

実は、本誌記者の知人Aも6月中旬に同様の被害に遭っている。

「友人から『“電子マネーを買うのを手伝ってほしい”ってメッセージが届いたけど、何?』と指摘され、そこで初めて乗っ取りに気づきました。実はLINEとニコニコ動画で同じIDとパスワードを使っていたのですが、両方が乗っ取られログインできない状態になってしまいました。どんな会話がされているのかもわからず、気が気ではありませんでした」

Aさんから同様のメッセージを受け取った本誌記者はすぐに乗っ取りに気づき、犯人としばらLINEで会話してみることにした。

犯人:30000点のカード1枚買ってください。

記者:どうしてですか?

犯人:買った後に番号の写真を撮って送って下さい。買っておきましたか?

記者:言っていることがよくわからないんですが……。

犯人:いいです。

……と、ここまでやりとりしたところで犯人は退出してしまった。

LINEの乗っ取り犯は外国人?

会話はかなり強引で一方的、ぶっきらぼうな日本語の使い回しがちょっと外国人っぽいような印象を受けた。この乗っ取りは海外からのサイバー犯罪なのだろうか?

『ネット護身術入門』(朝日新書)などの著書がある、日本IBMのシニアセキュリティーアナリスト、守屋英一氏に聞いた。

「その可能性も十分にあります。サイバー犯罪は国境を超えて発生します。取り締まるにも諸外国との連携と法律の整備が必須。しかし体制づくりはうまくいっておらず、環境整備までは時間がかかるでしょう。こういったスキこそが犯罪組織の餌食になるのですから」

では、このようなTwitterやLINEの乗っ取りに遭ったときは、どう対処すればいいのだろうか?

「Twitterにログインできたら即座にパスワードを変え、ログインできなければサポートにパスワードリセット依頼を出しましょう。LINEも同じで、サポートに対応してもらいましょう」

まずは、サポートに連絡するのが一番とのこと。

「どちらも共通して言えるのは、ほかのSNSなどとのパスワードの流用はNGです。またパスワードを難しい文字列にしたり長く設定することなども有効です。面倒ですがパスワードを頻繁に変更するのも効果的だと思いますよ」(前出・守屋氏)

いまや生活に欠かせないツールとなったSNS。今後、アカウント乗っ取りはさらに増えると予想されるので、今からしっかりと対策しておこう。

(取材/河合桃子)

■週刊プレイボーイ28号「もうネットでだまされない!!『乗っ取り』と『フィッシング』からの自己防衛テクニック」より