雨で古傷が痛む」。よく聞く話であり、当たり前のこととして捉(とら)えている人も多いかもしれないが、これってマジでヤバいサインなのでは? 梅雨時に不安に駆られた週プレ記者は、東京・世田谷井上病院の井上毅一(きいち)理事長を直撃して聞いた。

■古傷は完治しない? 気圧の変化が痛みを左右する!

――実は、学生時代に泥酔して後頭部を11針縫ったことがありまして……。雨で古傷が痛むんですけど、し、死んだりしませんよね?

井上 まあ、落ち着いて(苦笑)。

――そもそも古傷って?

井上 医学的に言えば、過去に負った外傷のことです。創傷と呼ばれる切り傷をはじめ、内出血、骨折、打撲、熱傷、凍傷など、さまざまな種類があります。

――完治しているはずなのに傷口が疼(うず)くのはどうしてですか?

井上 たとえ傷口がしっかりふさがっていても、古傷周辺の皮膚や筋肉に傷は残ってしまうんです。そういった部分は血液の流れが悪くなったり、収縮がうまくいかなかったりすることで、古傷の周囲にある神経が刺激されて疼くのだと考えられています。

――筋肉に傷がついていたなんて……。では、どうして特に梅雨に古傷が痛みだすんですか?

井上 気圧が低下して天気が悪くなると、交感神経の活動が活発になります。するとノルアドレナリンという物質が分泌され、血管の収縮が起こって血行不良になります。そうすることで古傷周辺の痛みを感知する神経が刺激され、古傷が痛みだすのです。

――低気圧が原因だったとは!

井上 雨の日や寒い日に古傷の痛みは増すはずです。

――そう言われてみれば……。

井上 あと季節の変わり目や台風シーズンも特に痛みが出やすいし、夏の冷房による冷えなども古傷が痛む原因になるでしょうね。

――冷房もですか!

体験した季節や場所、思い込みでも!

井上 実は、傷の痛みを引き起こす原因はほかにもあるんです!

―― え! なんですか?

井上 それはトラウマです。もっと言えば、“気にしすぎ”です。例えば、自分が事故に遭(あ)った現場を見たり、けがをした季節が来たりすると、そのときのことを思い出して古傷が痛くなった気がする。あるいは“雨が降ると古傷が痛くなる”と強く思い込みすぎて、痛みが出ていると感じる人もいます。

――確かに思い込みかも……。で、でも、本当に痛いときがあるんですよ(涙目)。どうすれば痛みが和(やわ)らぎますか?

井上 温めて血行をよくしてください。38℃くらいのぬるま湯で半身浴をするのがベストです。カイロを使って温めるのも効果的です。それから、古傷を痛めない程度に適度な運動をしたり、ヨガやマッサージで古傷周辺の筋肉をほぐしたりするのも効果があります。

気圧や冷房の冷えによる血行不良だけでなく、まさか“思い込み”でズキズキと苦しむハメになるとは……。とにかく疼きだしたら血行をよくしてみよう!

■週刊プレイボーイ30号「なぜ梅雨に古傷が痛むのか!?」より