ともに20代前半で10番を背負うネイマールとハメス・ロドリゲス。各国のGKの活躍が注目を集めるなど、堅守速攻の組織的なサッカーが幅を利かせた今回のW杯にあって、若いふたりが残した“個”のインパクトは大きかったね。

ブラジルのネイマールは国民の期待を一身に背負っていた。現地で売られているユニフォームもテレビCMも街中に張られているポスターも全部ネイマール。ヘアスタイルをマネしている若者もたくさんいた。まるでブラジル代表には彼しかいないのかと錯覚するくらいだったよ。プレッシャーは相当なものだっただろう。

対戦相手にも、「ネイマールをツブせばなんとかなる」と狙われ、常に2、3人のマークを引き連れていた。どの試合でも被ファウル数は一番多かったんじゃないかな。

それでも準々決勝までの5試合で4得点と、手厳しいブラジル国民が求める仕事を果たした。

それだけにコロンビア戦での負傷(腰椎骨折)による離脱は残念だったね。いくらファウルを“もらい慣れている”ネイマールでも、あれは逃げようがない。真後ろから思い切りヒザ蹴りを入れられている。悪質なファウルだし、一発退場にしなかった審判の判定には首を傾げざるを得ない。ああいった形で自国開催のW杯を去るのは無念だったと思う。実際、彼の離脱後にブラジルは大敗したわけだしね。

ただ、彼はまだ22歳。4年後も8年後もある。今はまだ華奢(きゃしゃ)だからケガのリスクと隣り合わせだけど、年齢を重ねるごとに体もガッチリしてくるだろうし、少しずつプレースタイルも変わってくると思う。4年後のロシアW杯ではさらに進化した姿を見せてくれるはずだ。

コロンビアのロドリゲスは大会中に現れた新しいスター

準々決勝でブラジルに敗れたコロンビアのロドリゲスは、大会中に現れた新しいスターだ。開幕前に注目されていなかった選手がこれだけの脚光を浴びるなんて、最近では珍しい。

といっても、彼の場合は南米予選からしっかりと活躍していた。クラブシーンでもポルト(ポルトガル)や現所属のモナコ(フランス)といった強豪で結果を残している。決して無名の選手だったわけじゃないんだ。ただ、コロンビアにはファルカオという絶対的なエースがいたので目立たなかった。そのファルカオが故障で大会を欠場したことによって、彼に主役の座が回ってきたというわけだ。

スピードと技術を兼ね備えながらも、プレーはシンプルでゴールに直結する仕事をする。決勝トーナメント1回戦のウルグアイ戦で見せたボレーシュートは今大会のベストゴールのひとつだね。グループリーグの日本戦でも途中出場したけど、日本の選手はファウルすらさせてもらえなかった。

今回の活躍を受けて、レアル・マドリード(スペイン)が獲得に動いているという話も出ているけど、近い将来のビッグクラブ移籍は確実。そこでどれだけやれるか。まだまだクリスティアーノ・ロナウドやメッシと同じレベルではないと思うけど、若くてルックスもいいし、間違いなく今後も世界の注目を集める選手だ。

ひとりで試合を決められる、チームを勝利に導ける攻撃のタレントは、今や世界的に見ても希少。ネイマールとロドリゲスのふたりがこれからどう成長して、4年後のロシアW杯でどんな姿を見せてくれるのか、楽しみだね。

(構成/渡辺達也)