日本マクドナルドの緊急会見を発端に「使用期限切れ鶏肉問題」で大騒ぎとなった中国。しかし、こうした食肉偽装は現地の食肉業界では“お家芸”として行なわれているという。

中国の食品製造の現場に詳しいジャーナリストの程健軍(チェン・ジェンジュン)氏に長年、その技術を磨いてきた偽装テクニックの数々を聞いた。

「まずは肉を文字どおり“水増し”する『水牛』『水豚』。屠畜(とちく)前の牛や豚の口にホースを突っ込んで、水をガンガン加圧注入すると、例えば体重300kgの痩せた牛も一気に600kg程度まで膨らみます。ただし、これだけでは肉が白く変色して味も水っぽくなるので、赤色粉や調味料を混ぜて注入するのがポイントです。こうして水増しされた肉は、買って家に帰るまでの間に買い物袋がベチョベチョになるので、その時点で『やられたな!』とわかります」

この場合、買う前には判断ができないところがポイントだ。

「次は『混合肉』。これはまさに“肉の福袋”で、何が入っているかは食べてからのお楽しみ……というか、食べてもわからないことが多いです。中国庶民は羊肉が大好きなのですが、価格を抑えながら量を増やし、味にパンチを効かせるために、各店がさまざまな肉を勝手にブレンドして売っています」(程氏)

中国では、これはもはや“常識”だという。

寄生虫付きの獣肉も紛れてる?

「例えば、夏には犬肉を多く加えたスタミナブレンド、冬にはヤギ肉を増やした噛(か)み応え抜群ブレンド。このあたりは“表示偽装”ではあるものの、暗黙の了解でみんな気づいています。ただ、なかには食肉として認められていないキツネやネコ、ネズミなどの獣肉が混ざっているものもあり、味のみならず寄生虫など衛生的な問題もあります。見た目ですべて見分けることは不可能ですが、明らかに緑色が濃いようなものは、さすがに要注意です」

日本人は絶対に買わないだろうが、どこかで知らずに食べている可能性はあるのか?

「まあ、一般家庭や大衆食堂など、普通に流通している“お徳用肉”ですからねえ……。気になるなら、中国では激安食堂を避けるべきでしょう」(程氏)

日頃、こんなハイレベルな偽装肉に直面している中国の庶民。確かに、これでは「期限切れ」のような問題も彼らにとっては些細なことでしかないはずだ。

(取材/近兼拓史)

■週刊プレイボーイ33号「中国『食肉偽装テク』大行進 猫肉を羊肉(シシカバブ)にするため何に漬けるか?」より