誰が監督をやっても、今のままでは結果を残すのは難しい。お金の無駄遣いになってしまいそうで心配だね。

日本代表の新監督にメキシコ人のアギレが就任すると発表された。報道によると、年俸は約2億5000万円(推定)の2年契約で、さらに2年間の契約延長オプションがつくとのこと。さっそくメディアは新監督の人柄や手腕などの話題で持ちきりだ。

でも、それには大きな違和感を覚える。以前から何度も指摘しているように、今の日本サッカーには、ブラジルW杯での惨敗を受けて、新監督を決めるよりも先にすべきことがたくさんあると思うからだ。

敗戦の詳しい分析、検証をするのはもちろんのこと、興行面優先で行なわれてきたマッチメイクやスケジューリング、あるいはJリーグ軽視の風潮、さらには遠征時、合宿時の過保護な選手の扱い、そして、日本サッカー協会の矛盾した人事など、見直すべき課題は山積みなんだ。

にもかかわらず、そうした課題に向き合わないまま、また外国人監督に丸投げ。ということは、ザッケローニ同様、アギレも明確なノルマも課されずに、ダラダラと4年間を過ごすことになるのだろう。“お飾り”のコーチとして、五輪代表の日本人監督(手倉森[てぐらもり]誠氏)を入閣させるのもいつもと同じ。まるで“マニュアルどおり”といった感じだ。

確かに、4年前は新監督選びを南アフリカW杯後から始めて難航した。協会が目をつけた人物にはすでに多くの引き合いがあり、ことごとくフラれた。最終的に、売り込みのあったザッケローニに落ち着いたわけだけど、監督就任が8月末と遅れたせいで、翌年1月のアジア杯(カタール)までに十分な準備ができなかった。

アギレは決して“大物”ではない

今回も状況は似ていて、来年1月にはアジア杯(オーストラリア)がある。だから、日本サッカー協会はW杯の結果が出る以前から、アギレとの交渉を進めていたというわけだ。

でも、そもそもアギレはそこまで日本が執着すべき指揮官なのかな。メキシコ代表を率いてW杯ベスト16に2度進出したといっても、日本と違って、メキシコにとってW杯ベスト16は“普通”の成績だよ。その後、スペインで率いていたクラブも中小クラブばかり。決して“大物”ではないんだ。ザッケローニ同様、4年もの間、同じチームを率いた経験もないし、ロシアW杯まで緊張感を保てるのだろうか。

それに、僕に言わせれば、今のアジアのレベルならば、誰が監督をやってもそれなりの結果を残せるはず。日本人監督だって問題ない。

当面は手頃な人材に任せて、アジア杯後に、あらためてアギレもしくはほかの適任者との交渉を始めればよかったんじゃないかな。浮いた予算を、軽視されているリオデジャネイロ五輪代表(現U-21代表)の強化に回すこともできるしね。

もちろん、決まった以上はアギレに頑張ってほしいし、何かを変えてくれるかもしれないという期待もしている。気性が激しいというから、かつてのトルシエのように協会やメディアとガンガンやり合ってくれたら面白くなると思う。

ただ、やっぱり今は、向き合うべき課題に向き合わなかったことで、また4年間と大金をドブに捨てることになるのではという不安が大きいね。

(構成/渡辺達也)