ホントに景気回復しているのはどこだ? 転職先として気になる各業界の現状と先行きをインサイダー&専門家の声を聞いて予測するシリーズ第3回!

日本社会は二極化が進んでいるが、飲食業界は二極化どころか多極化が進行中。状況は店の規模、立地条件、業態などにより複雑だ。

「昨年から徐々に客足が戻り、客単価も伸びている」という業者も増えてきたが、「アベノミクスなんて効果なし。景気は回復していない」と断言する店も少なくない。

消費増税の影響もまちまちで、「それほどでもない」という声もあれば、「ライバルとの競争が厳しく、増税分を価格に上乗せできない」と嘆く店主や、「増税に円高、地価上昇が加わり、利益は減少する一方」と悲鳴を上げる大将も。

それでも、あえて総論をまとめれば、リーマン・ショック以降の低迷からは脱出、緩やかに上昇していると言えそうだ。

外食産業新聞社『外食日報』の菅則勝(すが・のりかつ)編集長も、飲食業界の現状は上向きだと話す。

「相対的に飲食業界の景気はよくなっています。なかでも好調なのが、客単価1万円以上の高級店。以前よりも外食にお金が使えるようになったことに加え、かなりの金額でも接待交際費で落とせるようになってきたことが大きいですね」

資本金1億円超の大企業でも交際費の50%までを非課税とする政府の方針も、さらなる追い風となるだろう。

苦戦を強いられる大手チェーン店

対照的に、苦戦を強いられているのが、低価格がウリの居酒屋や牛丼などのチェーン店。原材料費や人件費の高騰、競争の激化などマイナス要素ばかりで、儲(もう)けにつながる明るい話は聞こえてこない。これまでのように“安さ”だけで勝負しても利益は上がらず、もうその手法は限界だろう。

今後の見通しについて菅氏に聞いた。

「2015年10月に予定されている消費増税が気になりますが、それ以外に飲食業界のマイナス要素は見当たりません。ただ、以前から問題となっている人手不足は深刻です。厚生労働省が6月に発表した全国の有効求人倍率は1・09倍。誰もが人材を求めている状況下で、飲食業界の働き手を確保することはますます難しくなります」

業績が好調で新規出店を目指しても、働く人が集まらないケースも出てくるだろう。人手不足から営業時間の短縮や休業が話題になった牛丼チェーン「すき家」と同じ状況に追い込まれる企業も増えてくるはずだ。

各社とも給料アップや労働条件の改善で、“ブラック”なイメージの払拭(ふっしょく)を図り、社員やアルバイトの引き留め、新規採用に向けた策を講じてはいるが、根本的な解決のメドは立っていない。

大量仕入れによる低価格、非正規社員労働でデフレ経済を生き延びてきた外食チェーンが生き残れるかどうかは、人材確保に向けたビジネスモデルの変革次第だ。

専門性の高い中小の飲食店が勝ち残る?

では、転職先としてはどうか。東京・千代田区のイタリア料理店オーナーシェフはこう話す。

「個性や専門性の高い、中小の飲食店が勝ち残ると思います。ですから、意欲のない人には転職をオススメできませんね。逆に、意欲と目的をもって働けば、これほど自分の仕事の成果を実感できる業種はありません」

横浜のエスニック料理店オーナーも仕事への適性を強調する。

「プライベートと仕事を分けたがる人には無理。お客さんからの評価がすぐにわかり、向上する手応えが感じられるので、人が好きでコミュニケーション能力の高い人に向いています」

最後に、東京・港区の日本料理店オーナーからのアドバイスを。

「最近は個人店より企業に就職したがる若者が増えていますが、日本の料理技術は世界一。まずは尊敬できる料理人のいる店で基本を学ぶことが、飲食業に携わる者の本来の姿だと思います」

まずは腕を磨け。そうすれば道は開ける!

■週刊プレイボーイ36号「総力特集13ページ! リベンジ転職のための業界天気予報」より