痛みを感じている体の部位と、その原因となる病気を起こしている部位が異なるケースがあるという。特に多くの人が間違えやすいのが、背中の痛みだ。背骨が悪いと思って受診しても、その激痛は消えない!?

【「刺されたか?」と思う鋭い痛み 胆石(たんせき)】

●Gさんのケース友人が創業したオフィス機器販売会社で営業部長を務めるGさん。部長といっても部下はゼロ。ほぼ毎日、得意先の仕入れ担当者を接待しているせいか、39歳にして腹回りは100cm超の体格だ。

ある日、接待を終えて繁華街を歩いていたGさんは、背中に鋭い痛みを覚えて立ち止まった。

「刺されたか!」と思わず振り返ったが誰もいない。再び歩きだすと、またも背中に差し込まれるような痛みが。通行人に助けを求めようとしたが、声も出せず、出るのは脂汗ばかり。数分後、身ぶりでタクシーを止めて夜間救急外来のある病院へ行き、エコー検査で「胆石」が発覚した。

●どんな病気か?胆嚢(たんのう)に石がたまる病気で、若年層にも起きる生活習慣病だ。食事をすると胆嚢に蓄えられた胆汁が十二指腸に流れて消化を助けるが、胆汁の原料であるコレステロールが多すぎると、結晶化して胆石となる。実は日本人の10人にひとりは胆石持ちといわれるが、石が胆嚢内にとどまっていれば痛みが出ないことも多い。

●なぜ痛むのか?胆石が激痛を発する恐ろしい病魔に変身するのは、石が崩れて胆嚢から出ようとするとき。

細い総胆管や胆嚢管に石が詰まることで激痛が背部を貫くため、背中の病気と誤解して整形外科を受診し、発見が遅れる人がけっこう多い。

●治療法や予防法は?胆石には血液に含まれるビリルビンが結晶化するタイプもある。激しく痛む場合は、胆嚢摘出や、胆管内の石を砕いて除去する治療が行なわれる。コレステロール性の胆石は、酒、油ものを控えることで予防可能だ。

“痛みの王様”と呼ばれる悶絶痛 尿管結石

【“痛みの王様”と呼ばれる悶絶痛 尿管結石(にょうかんけっせき)】

●Hさんのケースある朝、大学病院の研修医Hさんの背中を激痛が貫いた。尿意を感じてトイレに行くと、今度は便器内の水が真っ赤に染まっていく。それを見たHさんは、「ああ! 人生終わった」と絶望したが、そこはドクター。気を取り直し、勤務先の救急外来へ向かった。

しかし、激痛で歩行も困難。家から病院まで、わずか100mの距離を休み休み、脂汗を流しながら45分かけてたどり着く。同僚の診断は「尿管結石」。麻薬に準ずる強力な痛み止め注射でしばしホッとするが、鎮痛効果が切れるたび「痛み止めを打ってくれ~!」と叫ぶHさん。大量に水分を点滴したおかげで、結石は尿と一緒に翌日排出されたが、Hさんいわく「尿管結石は自殺を考えるほどの痛さ」なのである。

●どんな病気か?腎臓にできた結石がもとで起きる病気。腎臓内の石が大きいうちは痛みが出ないが、砕けたかけらが尿管に落ちてくると猛烈な痛みが襲う。結石の原因になるのは尿酸やカルシウム。尿酸値が高く、日頃の水分摂取が少ない人がかかりやすい。

●なぜ痛むのか?尿管内で結石が動くとき、尿の流れが遮断され、尿管内を刺す痛みが強烈だ。

疝痛(せんつう)と呼ばれるこの痛みは“キング・オブ・ペイン=痛みの王様”の異名もあり、気を失ってしまう人もいるほどの激痛。結石が小さいほど痛みは強い。

ちなみに、Hさんの結石は「シャープペンシルの芯のかけら」くらいの大きさだった。

●治療法や予防法は?Hさんのように鎮痛剤で痛みをとりながら大量に点滴して、尿と一緒に石を出すのが一般的。石が大きいときは体外から衝撃波を加え、石を砕いてから点滴するか、手術で除去することもある。 常に水分をたっぷりとること、コレステロールをためないことが効果的な予防法だ。

脂肪のとりすぎで膵臓を破壊! 膵炎

【脂肪のとりすぎで膵臓を破壊! 膵炎(すいえん)】

●Iさんのケース建設現場で働くIさんの楽しみは、仕事帰りの一杯と串揚げ。ある日、背中に激痛を覚えたIさんは、ぎっくり腰になったと思い整形外科を受診した。

ところが、レントゲンを撮っても痛みの原因はわからず、応急処置的にもらった湿布薬を貼っても治らない。1週間後、別の整形外科で再び検査するが、やはり原因不明。そのとき、問診で酒と油ものを欠かさないIさんの食生活を知った医師が、「それは『膵炎』かもしれない。内科へ行ってごらん」と勧めてくれたおかげで、Iさんの真の病名と痛みの原因がようやく発覚した。

●どんな病気か?膵臓で分泌される消化酵素が、生みの親である膵臓を破壊してしまう病気。痛みだけでなく、吐き気を伴う場合もある。30代から50代の働き盛りの男性に多く、患者数は年々増加中。

原因のすべては解明されていないが、多量のアルコール摂取や脂肪分のとりすぎも原因のひとつになることはわかっている。

●なぜ痛むのか?膵液が膵臓を攻撃して炎症を起こし、ひどい場合は壊死させてしまうために、とてつもない激痛が起きる。膵臓のある場所は体の外からはわかりにくいが、痛みは背中から肩にかけて出ることが最も多い。

●治療法や予防法は?急性膵炎と慢性膵炎があり、激痛を起こすのは主に急性膵炎。放置して重症化すると1、2週間で死亡することもあるので、早期発見と治療が大事だ。治療は鎮痛剤で痛みを抑えながら、酒と油ものを断つ食事療法を行なう。十分な輸液と蛋白分解酵素阻害薬の投与も必須だ。膵炎が心配なら、病院で血液中のアミラーゼ値を検査しよう。

(監修/奥仲哲弥先生[山王病院副院長] 取材協力/臼田美穂先生[麻酔科医] 取材・文/浅野恵子 世良光弘)

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