2014年エアギター世界選手権優勝! 名倉七海ちゃんの“イナバウアーエアギター”って?

テニスもスゴいけど、エアギターの世界でも日本人はスゴかった!

8月末にフィンランドで行なわれた「エアギター世界選手権」で、各国の代表を破って世界一に輝いたのが、名倉七海(なぐら・ななみ)ちゃん。芸人のダイノジ大地氏以来、ふたり目となる日本人王者だ。

ご覧の清楚(せいそ)なルックスとは裏腹に、ひとたび(見えない)ギターを手にするや、髪を振り乱して激しすぎるプレイを披露。腰をのけぞらせて速弾きする必殺技“イナバウアーエアギター”で、世界中のハードロック野郎を狂喜乱舞させた!

そして、そんな快挙の裏には、あるスゴすぎる理由が――。

■ポイントは“芸術性とエアーな感じ”

―世界一、おめでとう! しかし、フツーにしているとお嬢さまな感じなのに、エアギターを弾いているときの顔はスゴすぎますね。

名倉 自分でも、この写真を見て初めて自分がこんな顔をしてたんだって知りました(笑)。世界選手権のステージで、海外の方の表情の豊かさにビックリしたんです。私もそれに負けじと思いっきりプレイしたら、あんなホラー映画みたいな姿になってしまいました(笑)。

―この世界選手権まで、海外に行ったこともなかったって?

名倉 そうなんです。7月末の日本大会で優勝したときは、「え、私、本当に1ヵ月後にフィンランドに行っちゃうの? ていうか、パスポート持ってない!」って、パニックに陥りました(笑)。海外のエアギタリストの方は見た目もイカツイし、不安も感じていて……。

デビューのきっかけは「エアドルオーディション」

―確かに、気合いの入った入れ墨だらけの男たちばかりだもんね。

名倉 でも、皆さんすごく女性に優しいんですよ。ステージから降りると、「ナイスプレイ!」ってハグしてくれたり。大会後に親睦のためのキャンプも催されたんですけど、みんなでたき火を囲みながら、すっごくまじめにエアギターについて語り合っていました。やっぱり、みんなメタリカが大好きでした!

―そもそも、エアギターってどうやって勝敗を競うの?

名倉 フィギュアスケートと同じように、いくつか採点基準があって、その合計得点で競うんです。基準になるのは、「リズム感」や「テクニック」、それから「芸術性とエアーな感じ」などですね。

―エアーな感じって!

名倉 “本当にギターを持っているように見えるか”ということなんだと思います。私も、始めた頃はネックを持つ左手と弦を弾く右手の高さがバラバラで、ちゃんと真っすぐにギターを持っているように見えなかったんです。鏡を見ながら練習したり、周りの人にプレイを見てもらって試行錯誤しながら上達しました。両親もYouTubeで世界のエアギタリストの動画を観ながら、「七海の手にはギターが見えない!」って怒ってくれたり。

―アツい! そもそも七海ちゃんは、どうしてエアギターを始めたの?

名倉 もともと、9歳のときからヒップホップダンスを習っていて、将来は芸能界のお仕事に就きたいって思ってたんです。それで、17歳のときにレコード会社の「エアドルオーディション」を受けて合格しました。そして、「テレパシー」っていうエアギターアイドルグループのメンバーになったんです。

エアギターを持っていないときの彼女は、おしとやかなお嬢様。このギャップがまたイイっ!

自称宇宙初のエアギターアイドル

―それまでエアギターやハードロックには触れたことがなかった?

名倉 はい。でも、オーディションに受かってからマキシマム ザ ホルモンさんの曲とか聴かせていただいて、“カッコいい!”ってハマりました。ちなみに、世界選手権ではフー・ファイターズの『BridgeBurning』と、メタリカの『Battery』をプレイしました!

―新旧のロックの名曲ですね~。エアドルになる前はどんな音楽を聴いていたの?

名倉 miwaさんとかですね。

―違いすぎっ! ところで、テレパシーは結成時から“自称宇宙初のエアギターアイドル”として話題になりましたが、今年4月に解散……。

名倉 そうなんです。ファンの方と「いつか世界一になる」って約束をしていたんですけど、その約束を果たせないまま解散してしまって……。自分の中のモヤモヤした気持ちにけじめをつけるために、今年の日本大会にエントリーしました。そのときは、自分の中では“たったひとりの解散ライブ”のつもりで出たんですけど、まさかの優勝をして、世界大会に行くことになり……。

―そして本当に世界一に!

名倉 ファンの方たちに恩返しできて、ホントにうれしいです! 成田空港をたつときにも、皆さん見送りに来てくださって、「僕たちがついてるよ」って言いながら手作りの旗を振ってくれたんです(涙)。おじいちゃんも、「長生きしていてよかった」って言ってくれたので、エアギターをやっていて本当によかったです!

“エア刀”を抜いて殺陣を演じた

■“世界のミフネ”になりきって抜刀!

―世界選手権では、ステージ中に“エア刀”を抜いて殺陣(たて)を演じ、喝采を浴びましたね。

名倉 はい。本物らしいギターテクニックではほかの方に勝てないと思って、プレイにストーリー性を持たせたんです。テレパシー時代にも、『スター・ウォーズ』のアナキン・スカイウォーカーになりきってナナミン・スカイウォーカーを演じてみたり、『進撃の巨人』のエレン・イェーガーになりきってナナミン・イェーガーを名乗ったりしていました。

―今回の世界選手権でのモチーフは?

名倉 三船敏郎さんの有名な“七人斬り”です。三船さんになったつもりで、“ななみん斬り”をしました! 実は、私の父が昔、武術をやっていたので、刀の振り方は父に指導してもらったんです。「刀はこうやって構えるんだ!」「真っすぐに振らないと相手を斬れないぞ!」と厳しく指導を受けましたね。木の棒を持たされて。

―そこはエアじゃない!

名倉 世界大会の1回戦で着た和服風のドレスも、お母さんが既成品を手直しして作ってくれたものなんです。外国人の方から、「カワイイ!」ってすごく評判でした。そういう日本風の衣装とプレイが評価されたんだと思います。

―世界一になれた理由は、まさに家族一丸になったことなんだね。

名倉 ただ、日本に帰ってから、お父さんに「あそこは刀の振り方が違ったな」ってダメ出しを受けました。

アコースティックギターを練習中

―厳しすぎっ!

名倉 でも、来年はディフェンディングチャンピオンとしてまた世界選手権に出れるので、もっとエアギターの腕を磨いて、2連覇したいです!

―そんな七海ちゃん、実は今年中にソロでの歌手デビューも決まってるんだよね?

名倉 そうなんです。それで3ヵ月ほど前からアコースティックギターを練習してます。

―エアじゃないギターを持ってみた感想はどうですか?

名倉 「コードを押さえるってこういうことなんだ」とか、初めて知りました(笑)。今までエアギターをするときは雰囲気で指を動かしてたんですけど、最近はエアでもちゃんとしたコードを押さえたりしてるんです(笑)。

―そしてなんと、デビュー曲は吉田拓郎さんの『こうき心』のカバーだとか。

名倉 ソロデビューのお話をいただいたとき、ちょうどテレパシーを解散した後だったので、すごく孤独を感じていたんです。そんな頃、この『こうき心』を聴いて、「街を出てみよう」という歌詞にすごく心を打たれて……。それで私も、今まで知らなかった世界に飛び込んだり、いろんな人とお話をしてみたり、アイドル時代にはできなかった恋もしてみたいなって思えるような、前向きな勇気をもらったんです。

―じゃあ、七海ちゃんが自分でこの曲を歌いたいって思ったんだね。

名倉 はい。『こうき心』は、現代の若者が聴いてもすごく共感できる曲なので、私と同世代の方にもたくさん聴いてもらいたいです!

(取材・文/西中賢治 撮影/佐賀章広)

●名倉七海(なぐら・ななみ)1995年5月7日生まれ、東京都出身。血液型=B型。カナヘビが大好きな19歳。年内に、フォーライフミュージックエンタテイメントよりソロデビューが決定!