18日、東京・ホテルニューオータニで開催された記者会見で富士山麓ライブを発表した長渕剛。「10万人集結しろ! 僕もキミも、そこで何かを見つけよう。とにかく来やがれ!」と叫んだ

「ツヨシ、死ぬ気かよ!」

誰もがそう思ったはずだ。この9月7日に58歳となったばかりの長渕剛が、2015年8月22日に富士山の麓(ふもと)キャンプサイト“ふもとっぱら”で「長渕剛10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」を開催すると発表した。

なぜ今、富士山なのか? その問いに会見に登場した長渕はこう答える。

「桜島(2004年8月21日の桜島オールナイトライブ)から10年たっても情熱が冷めない。桜島には雄々しい父性を感じたが、富士には父性も母性も感じる。日本の父であり母である世界遺産の富士でやらずに、どこでやるのかと思った」

では、還暦を前にした“英断”の真意とは?

「勝った気がしないんですね。やはり、“生きる”とは勝負すること。僕はこれまで勝った気持ちを味わっていない。とにかく命をかけて歌いきって、“死にたいほどに生きている”ことを感じたい。そのためには、自分がそこでどうなってもいいっていう覚悟がある」

そんな富士山ライブの発表を、長渕ファンはどう受け止めたのか? 10代からの長渕ファンだという42歳の会社員、K氏は言う。

「自分はほぼ毎月、富士山の4大登山ルートを制覇するくらい富士好きでもあります。会場の“ふもとっぱら”といえば、とにかく広大でどこからでもデッカい富士と対面できる場。そんな場で『西新宿の親父の唄』聞いちゃったら……ここんとこずっと悩んでた、起業の決意かためちゃうかもしれない」

また、中2の頃に映画『オルゴール』を見て長渕にハマったという38歳の自営業、S君もアツく語る。

「富士山くらいデカいスケールでライブやるなら、ステージも超巨大にしてジープで走りながら『シェリー』を歌ってほしい。息子役の蓮をジープに乗せて砂浜を走った『オルゴール』の名シーンみたいに……」

無謀なトライこそが長渕、ヨーソロー!

桜島の感動が10年ぶりに、さらに苛酷な富士をバックにした伝説となる!

さらに、肉体改造以前の長渕ファンだという23歳の飲食業、Mさんもこう気持ちを吐露する。

「私は中3の時に友達の家で長渕のライブ『LIVE’89昭和』を見てファンになりました。あの痩せ気味でヒゲ面で、今よりヒリヒリした緊張感漂(ただよ)う剛に惚れたんです。母性をくすぐられるというか。剛は年代ごとに容姿や声も変化し続けてきた男だから、ファンにもそれぞれ“自分はこの頃の長渕が好き”という思いがある。休憩シーンは過去のライブのダイジェストも流してほしい」

こんな従来の熱いファンへのアピールのみならず、来月4日からはラジオ番組(『SCHOOL OF LOCK!』)で10代のリスナーに長渕が“炎の生活指導”を行なうというコーナーもスタートさせるということで、これまで以上に積極的に若い世代と交流しようとする思いもあるようだ。じわじわと10代のファンをも増やしているなか、中学3年生のM君はこの発表を知り、ある“決心”をしたという。

「ラジオで長渕さんのトークを聞いてからファンになりました。ライブには行きたいけどチケットを買うお金がないんです。でも、どうしても長渕さんに近づきたい。桜島ライブの時は鹿児島市にまで長渕の声が届いていたそうなので……ライブ当日は都内から自転車で富士を目指し、付近でキャンプを張ってでも長渕に近づきたいと思います」

だが、そんな早くも沸騰する待ちきれないエールの一方で、なかには長渕の体調を気にする危惧の声も……。大学で長渕好きサークルを企画運営する20歳の大学生、I君の切実な思いはこうだ。

「日頃から“デブは敗北だ”とストイックな特訓をする長渕だけど、58歳で夜を徹してのライブは無謀。24時間テレビの徳光(和夫)さんのマラソンを見守ってたときと同じくらい心配です。死ぬんじゃねえぞって。でも、そんな無謀なトライこそ長渕の良さ。ヨーソロー!」

その声に応えるかのように、すでに当日へ向けた体力作りを長渕は始めているという。

“どうなってもいい覚悟”で「死にたいほどに生きている」男が挑む富士山ライブ。そこへ行けば、きっと彼の言葉の意味がわかるはずだ。

(取材・文・撮影/河合桃子 (C)Tetsuya Tsuji)