スコッチウイスキーをお手本に造られたジャパニーズウイスキー「竹鶴」。「余市」と「宮城峡」を混ぜているためシングルモルトではないが、いいとこ取りした分、コクがあって飲みやすく国際的評価も高い

NHK朝の連ドラ『マッサン』のスタートで、また新たなブームがきそうなウイスキー。「大人っぽくてカッコいい」と評判のお酒の基本を知れば、女子ウケもよくなること間違いなし!

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日本はたくさんの種類のシングルモルトが飲める世界でも珍しい国。

「ウイスキーと呼ぶためには3つの条件があります」

と教えてくれたのは、ウイスキー評論家でスコッチ文化研究所代表の土屋守氏だ。

「(1)“穀物が原料”であること。(2)“蒸留酒”であること。(3)“木樽で熟成”していること。ジンやウオツカは木樽で熟成させていないし、ブランデーは木樽で熟成させているが原料がブドウなのでウイスキーといいません。また、こうしたウイスキーの約9割が5つの地域で造られていて、世界5大ウイスキー(グローバルスタンダード)と呼ばれています」

5大ウイスキーとは(1)カナディアン、(2)アメリカン、(3)ジャパニーズ、(4)スコッチ、(5)アイリッシュのことだ。

「さらに、この9割のうちの7割近くを占めているのがスコッチウイスキーなんです。ですから、世界では圧倒的に“スコッチウイスキー”が飲まれているということになります。

そのスコッチウイスキーには、大きく分けて“シングルモルト”と“ブレンデッド”の2種類があります。

モルトとは大麦の麦芽のことで、大麦麦芽を原料に単式蒸留したものが“モルトウイスキー”。一方、トウモロコシや小麦などのグレーン(穀物)を原料に連続式蒸留したものをグレーンウイスキーと呼び、モルトとグレーンを混ぜたものが“ブレンデッド”になります」

日本はたくさんの種類のシングルモルトが飲める

モルトウイスキーは、日本でいえば地酒に相当し、クセがある。ブレンデッドは、個性はないが飲みやすい。

そのため、約160 年前に誕生したブレンデッドが世界中に普及することになった。

「それが、1980年代の終わりになり、ウイスキーも個性の時代だということで、モルトウイスキーが世界中に広まっていったんです。ちなみに今流行っているシングルモルトとは、大麦麦芽を原料にひとつの蒸留所で造られたモルトウイスキーのみを瓶詰めにしたもので、この頃(1980年代)に一般に販売されるようになりました」

実はシングルモルトの歴史は、30年ほどしかなかったのだ。

「今、先進国でスコッチといえばシングルモルトです。そして日本は、世界でも珍しいくらい、たくさんの種類のシングルモルトが飲める幸せな国。この恵まれたチャンスを逃すのはもったいないですよね。

シングルモルトの魅力は、やはり香りや個性のある味なので、できれば氷や水を入れずに、チューリップ型のグラスなどに入れて、ゆっくりと時間をかけて楽しんでもらいたいですね」

その日本のウイスキーの礎(いしずえ)を築き、青年時代に単身スコットランドへ乗り込んでスコッチを学んだのがニッカの創始者・竹鶴政孝(たけつるまさたか)。そう、今回の朝ドラのモデルとなった“マッサン”である。

次ページでは、その“マッサン”を1分で理解する国産ウイスキー物語も!

“マッサン”を1分で理解する国産ウイスキー物語

明治から大正時代にかけて、日本ではアルコールに色や香りをつけたイミテーション・ウイスキーがつくられていた。

しかし、これからは本格的なウイスキーを飲むようになると考えた大阪の摂津(せっつ)酒造の社長は、1918年に従業員の竹鶴政孝を本場のスコットランドに派遣。

2年後、竹鶴はスコットランドで出会った娘・リタと結婚し、帰国。翌年から本格ウイスキー造りを画策するが、不況のため経済状態が悪くなり、摂津酒造はウイスキー造りを断念し、竹鶴は退社する。

そんなとき、同じように本格ウイスキーを造ろうとしていた壽屋(ことぶきや・現サントリー)が竹鶴の噂を聞き、ぜひ工場長にと声をかける。こうして大阪府・山崎の工場で造られたのが、国産第1号の本格ウイスキー「白札」だった。

その後、竹鶴は壽屋を辞め、本場・スコットランドと気候、風土が似ていて、もっともスコッチ作りにふさわしいと選んだ北海道・余市で「大日本果汁株式会社」を設立。日本の「日」と「果汁」の「果」を取って、ニッカウヰスキーが誕生したーー。

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こんな豆知識を披露しつつ、実は女のコも虜(とりこ)になるウイスキーの魅力を朝から夜まで語り尽くすなら、今でしょ!

(取材/村上隆保 撮影/佐賀章広)

●土屋 守ウイスキー評論家/スコッチ文化研究所代表1954年生まれ。近著に『ウイスキー検定公式テキスト』(小学館/ウイスキー検定は2014年12月7日に開催)や『竹鶴政孝とウイスキー』(東京書籍)がある

■週刊プレイボーイ41号「初心者のための超ウイスキー入門」より