シュートを打てばゴールになる。日本代表のストライカー・岡崎慎司(マインツ)が、思わず笑っちゃうほど絶好調だ。

ブラジルW杯惨敗の戦犯ともされた本田圭佑(ACミラン)、香川真司(ドルトムント)も復調をアピール、ふたりに注目がいきがちだが、その活躍ぶりは日本人選手のなかでも驚異的。第6節終了時点で5得点は、ドイツ・ブンデスリーガの得点ランキングで単独1位! チーム総得点の半分を稼ぐ働きで、マインツの開幕ダッシュの立役者となっている。

ちなみに、岡崎は第6節のホッフェンハイム戦をケガで欠場したのだが、スコアレスドローに終わった試合後の両チームの監督会見やメディアの報道は、なぜか今の岡崎の存在感の大きさを際立たせるものとなった。

「マインツには岡崎が欠けていた。ゴールを狙う危険さはもちろん、豊富な運動量で、28歳の男(岡崎)は守備面でも重要な役割を果たし、自らゴールの可能性を生み出すからだ」(大手紙『ビルト』)

また、マインツのヒュルマンド監督が「彼は重要な選手のひとりであり、常に動き回って、ほかの選手のためにスペースもつくり出してくれている」と言及すれば、なぜか対戦相手、ホッフェンハイムのギスドル監督まで「今の彼ならペナルティエリア内にビールケースを投げても、頭なり足なりで決めてしまうだろう。マインツにとって、信じられないほど重要で素晴らしい選手だ」と、ベタボメした。

ドイツで戦う、ほかの日本人からも称賛の言葉が次々と出てくる。

「すごい結果を出していて、見習う点がたくさんある。どういうプレーが相手にいやがられるのかなと、参考にしながら見ています」(ケルン・大迫勇也)

「あれだけ頑張られたら、相手DFもいやでしょう。常に裏とゴールを狙う意識は高いし、すごいなと思います」(フランクフルト・乾貴士)

昨シーズンも15得点を挙げ、欧州主要リーグでの日本人最多得点記録を更新している岡崎だが、今季はそれをはるかに超えるペースでゴールを量産している。何か変化があったのか?

過去の指導者も責任を感じる進化の可能性

ドイツ在住のサッカージャーナリスト、了戒美子(りょうかいよしこ)氏が語る。

「もともと、裏に抜けるプレー、点で合わせるプレーを得意としていましたが、それだけでなく、DFがいても足元にボールを収めて時間をつくれるようになりました。本人もそれを意識してトライしています。

昨季の実績はもちろんですが、チーム全体のパフォーマンスが悪かった開幕戦でも、マインツは岡崎のゴールで引き分けに持ち込んだ。そのことでチームメイトからの信頼度もグッと高まりました。チャンスになったら岡崎を見る。チームにはそんな空気があります」

岡崎のプロ入り当時(2005年に清水エスパルスに加入)を知る清水のあるスタッフも、「ゴールを奪うために何をしなければいけないのかを理解して、それを何度も繰り返す姿勢が結果につながっているのでは」と、ここ最近の変貌ぶりを絶賛する。

ちなみに、当時の岡崎に対しては「足が遅い。ドリブルで抜けない。トラップが止まらない。パスもヘタ。FWの中で最も評価が低く、正直、プロは厳しいのではないか」という見方もあったという。

「新しいことをやるのではなく、今できることをより正確に、よりスピードを上げてやり続ける。その成果が花開いているのではないでしょうか。やる気とトレーニングによってここまで成長できるのかと、指導者の責任と選手の可能性を感じています」(同・清水スタッフ)

このまま好調をキープできれば、夢のブンデス得点王も視野に入ってくる。ほかの得点王候補といえば、ドイツ代表のゲッツェ、ミュラー、ポーランド代表のレバンドフスキ(以上、バイエルン・ミュンヘン)、イタリア代表のインモービレ(ドルトムント)、オランダ代表のフンテラール(シャルケ)といったそうそうたる顔ぶれ……。

果たして、可能性は?

「チームの出来次第で、可能性もないとは言えない」と話すのは前出の了戒氏だ。

「マインツはバイエルンやドルトムントに比べて選手層が薄い。だから、岡崎に得点のチャンスが集まるという面はある。ただし、逆に相手は岡崎さえ潰(つぶ)せばいいと、どんどんマークが厳しくなってきます。また、マインツがカップ戦などで早々と敗退し、リーグ戦に集中できるのはプラスですが、いったん負けだしてチームのバランスが崩れていくと、得点チャンス自体が激減する危険性もあります」

岡崎、そしてマインツをもっと応援しようじゃないか!

■週刊プレイボーイ42号「地味だけどスゴい!岡崎はブンデス得点王になれるか!」より