9月15日0時、3年半に渡り規制されていた国道6号の通行止めが解除された。しかし、安倍政権による「原発事故処理は着実に進んでいると印象づけるパフォーマンスか?」と思えるほど、未だに重大な問題を孕(はら)んでいる。というのも、この最後まで通行止めとなっていた双葉町~大熊町~富岡町の約14㎞区間は、福島第一原発のすぐ西側を通っているからだ。

本誌は開通後に2度(16日、20日)現地取材を行ない、問題の14㎞区間を計4回走ってみた。内閣府の発表資料によれば、この区間の除染後の屋外空間線量値は平均3.5μSv/h(マイクロシーベルト毎時。以下、単位省略)。最高値は大熊町の福島第一原発付近で14・7だという。ただし、規制通り“窓を閉めた自動車”の中での計測のため、遮蔽(しゃへい)効果で3、4割は低くなるはずだが、実際はどうなのか。

まず下り線(北上ルート)。富岡消防署北交差点付近から問題の14㎞区間へ入る。この手前約10㎞の沿道でも屋外を歩く一般住民は少なかったが、この先は当然、警察官と民間ガードマン、除染作業員がまばらにいるだけで、生活活動が完全停止したような街並みが続く。

そして車内の簡易線量計(シンチレーション式)が、このあたりから活発に反応し始めた。液晶表示は3.0から6.0ほどの範囲内で目まぐるしく変化し、早くも“公式発表値”を上回る。

さらに福島第一原発のある「大熊町」へ入ると、いったんは1.0から2.0台へ下がったものの、「熊川」を渡り「小入野(こいりの)」に差しかかると急激に上昇。そして「大野駅」南東側約2㎞の場所では16から18、瞬間的に20を超す“区間最大値”が出た!

この数値は正気の沙汰ではない!

さらに進むと、福島第一原発の排気塔や大型クレーンの上部が道路右手に見えてくる。その距離、直線で約2.5㎞。まさに放射能汚染の中心地付近にいるのだと、いや応なく実感させられた。

それから「双葉町役場」までの3~4㎞の区間では、線量は8.0から14ほどの高い数値が続き、14㎞区間の北端を過ぎた「浪江町役場」にかけては1.0以下まで弱まっていった。

この線量の変化は、4回の走行とも同じような動きが確認できたが、必ずしも数値は一定ではなく30%ほどの増減があった。しかし、福島第一原発の西側にある「大野駅」付近の車内数値は低くても15はあった。屋外では20を超すのは間違いないだろう。ちなみに今、東京都内の公式発表線量値は、新宿で約0・035。本誌計測でも0.1前後だから、福島第一原発周辺では東京の200倍以上という高い汚染状態が続いていることになる。

今回の現地取材に同行してもらった長崎大学大学院工学研究科の小川進教授(工学、農学博士)は、この14㎞区間の現状について、こう語る。

「やはり現時点での通行制限解除は、正気の沙汰ではないと思います。同一地点でも線量値に差が表れるのは、今も埃に付着した高濃度の放射性物質が国道6号線の路上を活発に動き回っているからでしょう。

その運動には、自然の風だけでなく移動する車両が巻き起こす気流も影響しています。時速40キロでは車体の周りに風速約14m/秒の気流が発生し、上下線で2台の車がすれ違えば風速36m/秒の強い気流が生まれます(乱流効果)。これが繰り返されていくうちに、14㎞の区間から南北へ汚染物質が急速に広がっていく事態は避けられません」

(取材/有賀 訓)

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