9月22日、子宮内膜症で休業していた松浦亜弥(あやや)が、「現在、妊娠7ヵ月」というハッピーなニュースがあった。

子宮の病気に罹(かか)っていたのに、無事に妊娠できたとはおめでたい……などと、知ったかぶりをしてしまう男性はきっと少なくないはず。一体、どんな病気だったのか?

『マンガでわかる 男が知るべき女のカラダ』(サイエンス・アイ新書)などの著者で産婦人科医の河野美香(かわのみか)先生に聞いてみた。

「子宮内膜組織は、女性に毎月1回くる生理(月経)の主成分なんです。この子宮内膜組織が、子宮以外の場所、例えば卵巣(らんそう)や腸・膀胱などを被う腹膜表面などにできてしまう病気が子宮内膜症です。

子宮内膜症になると、生理時の出血と同時に、卵巣や腹膜表面などにできた子宮内膜組織からも出血します。そして生理を繰り返すたびにその血が体内にたまり、ひどくなると骨盤内の臓器が癒着をして、それがひと塊となって固まってしまうこともあります」

男にはわかりづらいが、実際、どれほどの痛みなのだろうか。

「生理中に激しい下腹部の痛みや腰痛を感じるほか、ひどい人になると、生理の時期とは無関係に同じ箇所が痛かったり、骨盤内や肛門の奥に痛みを感じたり。性交痛や排便痛を訴える女性もいます」(河野先生)

性交痛とは、ピストン運動で膣の奥が圧迫されると感じる痛みとか。ひどくなるとセックスが困難になるほど痛みを感じることもあるという。子供をつくるのは難しいということ?

「もちろんつくれます。妊娠して生理を止めれば、病状の進行を防ぐことができるので最善の治療法であるとも言えます。一方で、子宮内膜症で卵管などが癒着し、受精卵の通過の妨げとなって不妊症になる場合もあります。また、生理痛がひどい “子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)”という病気を併発する方もいます」

子宮腺筋症とは?

「子宮の壁となる部分に子宮内膜組織が増殖してしまう病気です。放置期間が長いと子宮が肥大し、激痛を伴う生理痛や出血量が増え、貧血になってしまうことがあります」

自分の彼女が病気を患ってしまったら…?

今、若い女性の間では、こうした子宮の病気が増えているという。河野先生が続ける。

「かつて、子宮内膜症は30代から40代の女性に最も多い病気でしたが、最近は若年化の傾向にあります」

さらに、子宮内膜症のほかにも女性特有の病気はまだまだある。

「“子宮筋腫”は20代から40代の女性の4、5人にひとりが持っているといわれているほどポピュラーな病気です。これは子宮に筋肉のしこりができる病気で、命に関わるものではありませんが、しこりのできる場所によっては生理痛がひどく、出血量が増えたりします。

そして、子宮の頸部(けいぶ)にできる“子宮頸がん”。これは子宮がんの約半分を占めています。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスの感染にいくつかの因子が重なって発生しますが、現在はワクチンで7割ほど予防ができると考えられています」

なるほど、子宮だけでもこれだけ病気があるのか……。では卵巣の病気は?

「卵巣嚢腫(のうしゅ)、卵巣腫瘍(しゅよう)、卵巣がんなどがあります。卵巣の病気の9割は卵巣嚢腫です。卵巣嚢腫は卵巣の中に漿液(しょうえき・さらさらした分泌液)や粘液などがたまって腫れる病気。また、液体ではなく脂肪や髪、歯などが入っている場合もあります」

では、もし彼女がこうした婦人科系の病気に罹ったら男はどういう態度をとればいいのか。

「治療が必要なものならば『早く治そう!』と励ましの言葉をかけてあげることですね。女性にとって子宮系の病気になることは、男性が想像する以上に心に傷を負います。そして、それにより男性の気持ちが離れることが何より怖いことなのです」

もちろん、セックスのときも注意は必要だ。

「特別なことは必要ありませんが、性交痛があったり、セックス中に出血がある場合などは注意してください。体位などを工夫し、挿入を浅くしたりします。また、体調が悪いときはセックスをしないなど彼女を気遣ってあげましょう。

挿入せずとも裸で抱き合ったり愛撫(あいぶ)し合うだけでも、彼女は大切にされていると実感しますし、満足感も得られますから。そして、少しでも気になることがあるならもちろん、特に自覚症状がない場合でも、20代からは定期的に検診を受けることを勧めてあげてください」

もし彼女に異変を感じたら、こうした知識があれば気遣い方も変わるはず。自分には関係ないと思わず、女性の病気も少しは知っておこう。

(取材/河合桃子 村上隆保)

■週刊プレイボーイ42号「子宮内膜症を乗り越えて、祝!あやや妊娠! 男も知っておくべき女性の病気」より