3年半に渡り規制されていた国道6号の通行止めが解除。だが、この双葉町~大熊町~富岡町の約14㎞区間は、福島第一原発のすぐ西側を通っている。本誌調査では“公式発表”を上回る線量計の数値を示したがーーその危険性とは?

今回の6号線開通には一応、「不要不急の通行は控えるように」というただし書きがついている。しかし、現実はそうはいかない。6号線の西側を走る「常磐自動車道」の全面開通は来春までずれ込む予定だし、福島・宮城県内を走る「JR常磐線」については巨大地震と大津波による破壊箇所が無数にあり、復旧のメドすら立っていない。

そのため、これまでは「東北自動車道」が主に東日本大震災の復旧活動を支えてきたが、今後は無料の6号線に車が集中することは避けられないだろう。その6号線の開通直後からの走行台数について、国交省「磐城(いわき)国道管理事務所」に取材すると、「大熊町の6号沿いに設置した自動計測装置で上下線の合計台数をカウントしており、開通日の約1万台に対して、一日当たり約100台の増加が続いています」

すでに毎日1万台以上がここを通過しているのだ! ちなみに、国交省「道路局」では数年に一度、全国幹線道路別の交通量調査を実施しており、大震災前年の6号線の一日平均値は約6万台。内訳は小型車75%、大型車25%だった。

本誌は14㎞区間北側の浪江町と南相馬市で、沿線住民に何人も6号線開通への感想を取材した。そこでは「物資と人の往来が増えることで、間違いなく福島と東北全域の復興に役立つ」という歓迎意見が多く聞かれた一方で、早くも難題が持ち上がっていることもわかった。

南相馬市の6号線沿いにあるホテル経営者は、開通からわずか5日の段階で、今後大きな問題につながりそうな目撃情報を口にした。

「平日朝の6時半から7時半、夕方の5時から7時頃にかけて毎日、上下線両方で大渋滞が起きてます。これは冬場の中通りに大雪が降って、クルマがこちらに集中したときと同じ感じで、自転車で動いたほうが早いくらい。混み具合からみて、じきに震災前よりも交通量は増えるのではないか。車種は大型と小型が半々で、全国のナンバーが集まっているみたいです」

チェルノブイリを上回る国道6号の汚染源

やはり、今回の開通によって北関東から福島県、宮城県にかけての車両移動は東北自動車道から浜通りの6号線へ急速にシフトし始めたようだ。この変化はもちろん地域経済の活性化には役立つだろうが、運ばれるものは人・金・物資だけではない。放射性物質の「2次3次被害」を研究してきた長崎大学大学院工学研究科の小川進教授は、こう警告する。

「2011年の前半には目立った汚染が見られなかった中部・近畿・関西地方でも、今では事故由来の放射性物質が検出されています。その最大の原因はクルマの移動によるもので、福島県の中通り地域を通り抜ける東北自動車道と国道4号線(日光街道)を通じて他地域へ放射性物質が拡散したと考えられます。

その主な汚染源は、原発事故直後の降雨で大量の放射性物質が降り注いだ福島市や郡山市でした。しかし、国道6号線を介して新たに南北方向へ広がる2次3次汚染は、チェルノブイリ事故をはるかに上回る量の放射性物質を吐き出した福島第一原発そのものが汚染源になるので、被害規模もケタ違いに大きくなります。

8月に14㎞区間内で車両実験を行なったと言ってましたが、これはたった6台で調べただけ。それではとてもこれから起きる放射能汚染の拡大を探る手がかりにはなりません」

そもそも、原子力規制庁の測定調査は14㎞区間内の残留放射能を調べたものだ。しかも除染後の数値だから、6号線を開通させるためのアリバイづくりで、開通による汚染拡散などまったく考えてもいない。

今回の現地取材で本誌はあるデータを収集し始めた。それは行政機関と同じ線量計を使った、14㎞圏外の南北地域計10ヵ所の道路表面&空間の線量、そして道路表面の汚染濃度値(CPM)である。これらの数値に数ヵ月後、どんな変化が表れるのか? 専門家の指導と意見を交えてあらためて詳しく報告したい。

(取材/有賀 訓)