このまま育成年代の弱体化が進むようなら、日本サッカーにとってW杯は、再び手の届かない舞台になるだろう――。

U-19(19歳以下)日本代表が、U-19アジア選手権(ミャンマー)の準々決勝の北朝鮮戦でPK戦の末に敗退。上位4ヵ国に与えられる来年夏のU-20W杯(ニュージーランド)の出場権を逃した。2年ごとに開催されるU-20W杯の出場権を日本が逃すのは、これで4大会連続。この事実は重く受け止めなければいけないね。

日本は、U-20W杯に1995年から2007年まで7大会連続で出場(05年までの大会名はワールドユース)を果たし、そのうち4回はベスト8以上に進出した。特に、99年のナイジェリア大会は印象深い。小野、稲本、高原、小笠原など“黄金世代”が躍動し、見事に準優勝。世界の舞台でしか得られない貴重な経験を積み、その後、多くの選手がA代表の主力となった。

また、95年大会のヒデ(中田英)や松田、97年大会の(中村)俊輔、柳沢、さらに一番近いところでは07年大会の内田など、この世代のチームからは、すぐにでもA代表で試してほしいと思うような選手が次々と頭角を現したものだった。

でも、アジア予選敗退が続く最近は、そんなサイクルが途絶えつつある。世界レベルを知ることができずに、ドメスティックなJリーグだけで経験を積むことになるからだ。成長スピードが遅くなるのは当然だよね。

確かに、今回の北朝鮮戦の敗退はPK戦だから不運な面もある。でも、それを差し引いても、大会を通じて日本のプレーはよくなかった。グループリーグでは初戦の中国戦に敗れ、続く格下ベトナム戦も試合終了間際まで同点という接戦だったのだから。

4試合で4得点を決めたエースの南野にしても、所属クラブ(C大阪)の低迷の影響があったのか、一本調子でシュートミスが目立った。11月のA代表の試合に彼が招集されるかもしれないという話も出ているけど、僕としては首をかしげざるを得ないね。

最大の原因は日本サッカー協会の体質

この大会の直前には、リオデジャネイロ五輪を目指すU-21代表がアジア大会(韓国)で惨敗し、弟分のU-16代表も5大会ぶりにU-17W杯の出場権を逃している。

この負の連鎖は決して偶然じゃない。パスをつなぐだけで、引いた相手の守りを崩せない。数少ないチャンスに決めきれない。相手がプレスをかけてくると、途端にバタバタする。どの世代も、同じように苦戦していることからもそれは明らかだ。

では、アジアのライバル国が急なレベルアップを遂げたわけでもないのに、なぜ日本の育成年代は、こんな厳しい状況に陥ってしまったのか。

最大の原因は、日本サッカー協会の責任逃れ体質と、育成年代強化を軽視する姿勢にあるんじゃないかな。

メディアが敗退の責任を追及しないのをいいことに、惨敗しても誰も反省せず、責任を取らない。

そして、ビジネス的においしいA代表の興行にばかり力を注ぎ、育成年代への投資を疎(おろそ)かにしている。以前の育成年代のチームは、もっと頻繁に海外遠征や強化試合を行なっていたよね。ところが、最近はさっぱりだ。

再び海外遠征の機会を増やすなど手を打たないと、世界との差は広がるばかり。このままでは、日本サッカーの未来は暗いものになってしまうよ。

(構成/渡辺達也)