ベトナム戦争に実際に使われていた戦車や戦闘機はスゴイ迫力!

シンチャオ! みなさま、お久しぶりです! 旅人マリーシャです。予定より1ヵ月も遅れてしまいましたが、やっと旅を再スタートしました――!

実は9月末の出発直前、免疫力低下で病気を患っていることが発覚。しばし静養せざるをえなくなり、本当にまた旅に出られるのか不安でいっぱいでした。周囲にもいろいろご心配かけましたが、休んだおかげですっかり元気に! 元気があればなんでもできる! もちろん旅も!

そんなわけで、当初はヨーロッパからアフリカに南下する予定だったけれど、見たかった祭りの時期を逃してしまったことや、世界を脅かすウイルスの猛威を緊急回避という理由もあって、ルート変更することに。

そんなアクシデントも旅人生のひとつということで、今回はアジア編だ! レッツゴー! 病み上がりには消化によさそうなフォーでも食べに行ってきますか。そして着いたのは、ベトナム社会主義共和国最大の経済都市・ホーチミン

フォー!と思いきや、左の黄色い卵麺みたいな麺のほうがおいしかった

さて、ホーチミンにも安宿やマッサージ屋や飲み屋であふれるバックパッカー街「ファングーラオ通り」がある。

でもタイのバンコクにあるカオサン通りと何か違うのは、圧倒的な観光客の少なさ。日本人の旅人もすごく少ない。その反面、マレーシアの格安航空会社の勢いのせいか、マレーシア人の旅人がいっぱい。スカーフ(ヒジャブというらしい)をかぶってバックパックを背負う姿はなんともシュールでかわいらしかった。

思わず話しかけてみる私。「どこから来たの? クアラルンプール? 一緒の飛行機だったかもね! この奥には安宿がいっぱいあるよ! お互い良い旅を!」。バックパッカー同士のあいさつはいつもこんな感じだ。

マレーシア人の旅人。それにしても湿気でベトベトのベトナムでスカーフをかぶってるのは大変だなあ

そしてベトナムの道路の主役はバイク。ほぼバイクで埋め尽くされている。止まらず走り続けるバイクの大群に、一生渡ることができないのではとためらっていると、地元民はバイクとスレスレのところを上手にすれ違っていく。それに小走りでついていきながら、なんとか宿に着いた。

ベトナム名物のバイク天国。信号あるところはマシだけど、ないところは轢かれに行くようなもん

さっそくインターネットに接続すると、思っていたよりも感度の良いWiFiにウフフ状態。こんなにサクサクなら必要最低限以外のこともできるじゃーんと、ページの重いフェイスブックでも見ようとしたところ……はて? つながらない。

は! そうだ! 噂では聞いていたけど、まさかのまさか本当だった! ベトナムではフェイスブックは政府の規制で接続できないんだ。ネット規制というと中国が有名だけど、共産党一党独裁のこの国も政府の情報コントロールがとても厳しい。ちなみにカフェやモバイル端末からは接続できたり、接続の裏技はいろいろあるみたいだけど。

「エージェントオレンジ」の被害者たち

ホーチミンといえばメコン川クルーズやベンタイン市場などの観光スポットがあるが、ひとまず私は「戦争証跡(しょうせき)博物館」に行くことにした。

とても安い入場料15000ドン(約75円)を払うと、中庭にはベトナム戦争に使われていた戦闘機や戦車などが展示されている。その勇ましさと迫力に人々は嬉々として写真を撮っていて、もちろん私も「戦車乗ってみたい!」なんてテンションUP。そう、ここではまだ戦争の恐ろしさを感じていなかったのだ。

ベトナム戦争で使用された戦闘機や戦車

3階建ての広い館内に入ると、雰囲気はガラリと変わった。そこには15年間にも渡るベトナム戦争にまつわる数々の資料が。

衝撃的だったのは「エージェントオレンジ」についての展示。エージェントオレンジとはアメリカ軍の撒いた枯葉剤のことで、被害を受けた人々の写真がたくさん展示されていた。

目を背けたくなるような写真の数々や奇形胎児のホルマリン漬け。私は一枚目の写真を見るなりウッと息が詰まり苦しくなって、めまいがしそうだった。これ以上、この部屋の展示を見れるのか……。

誰しもが思わず「オゥ…」と声をもらし、口元を手で押さえていた。館内の撮影は自由とはいえ、この部屋だけはほぼ全ての入場客がカメラを構えることができず、あるいはそれをせず重々しい沈黙に包まれていた。

誰もが息を呑む写真が展示されたエージェントオレンジの部屋。あまりにも悲惨な写真ばかりで、近くでは撮影できなかった

日本語で説明があるところもあった。枯葉剤について報道写真家の中村梧郎さんが書いたもの

私が生まれる前に起きていたベトナム戦争は、今の時代にまでも後遺症が残っていて、これほどまでに悲惨な事実があったことに正直とても驚き、恐ろしいと思った。

全てを見終わった後、博物館は絶望的な激しいスコールに打たれ、体にじっとりとまとわりつくベトナムの湿気と重い気持ちがなんともいえない一日だった。

各国からの平和を願う声のなかには、「アメリカはベトナムから手をひけ」という反戦ゼッケンを8年間もつけて通勤していたという金子徳好さんの資料も

怖すぎる拷問道具の数々

証跡博物館の敷地内には、“流刑の島”と呼ばれたコンソン島の牢獄「トラの檻」も再現されていて、そこはけっこう怖かった。鉄格子の中の暗い独房をのぞくと、蝋人形館もびっくりのリアルな囚人の人形。「きゃーーー!」と思わず悲鳴を上げると周りの人に笑われたけど、子供見たら泣くって!

体育座りの囚人。表情や壁の落書きなど物々しい雰囲気が伝わりすぎて本当にコワイ!

私がしゃがんでも頭がつくほどの狭さの鉄条網のケージは拷問に使われていたとか

ギロチンまであって、その台に乗ることを想像したら撮影する手も震えたよ。政治犯たちはここで、人間の仕業とは思えない拷問や死刑にかけられたそう

博物館の終わりには、お土産物屋が待ちかまえていた。定番のベトナム土産や、アーミーグッズ、そしてなぜかジブリやワンピースなど日本のアニメグッズも。

絵のテイストの違う日本の有名アニメたち。なぜ戦争証跡博物館に売られているのだろう

でも実はお土産はもう、フォーを食べてた時にやってきた物売り少年から買っていたのだ。普段、私は路上の物売りからは物を買わないけど、なぜか今回は買っていた。

少年は松葉杖をついていたけど、そういえばホーチミンには腕や足の不自由な人が多い。やはり戦争の影響はまだ大きく響いてるのだと思う。杖をついていたから買ったわけではないけれど、何か訴えかけられるものがあったのかな(それにぼったくり価格ではない良心的な値段だったし、商品も気に入ったから)。

物売り少年から買ったベトナム土産定番の飛び出すカード

旅再開ののっけからハードな内容になってしまったけど、ベトナム戦争について知ることができたのは良かったと思う。歴史を知ることで、その国の人々のことも少しだけ理解できる気がした。ベトナム、深く考えさせられる国でした。カムオン(ありがとう)。

今回のアジア旅は、南米の大自然とはまた異なり、歴史や宗教、遺跡などその国の文化に多く触れられそうだ。正直、私はそういうものには疎(うと)いし、言葉の上でも理解が難しかったりもするけど、直接目や肌で感じられるのが旅の醍醐(だいご)味。いろいろ学べたらいいな。五感研(と)ぎ澄まして行こう! みなさん、引き続きよろしくお願いします!

【This week’s Blue】日差しが強く排気ガスまみれの街中では、ベトナムの麦藁帽子ノンラーとマスクが定番ファッション

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。【http://ameblo.jp/marysha/】Twitter【marysha98】