「罰金」導入初日の戎橋では、指導員(上)が引き上げると、客引きたち(下)がぞろぞろと姿を現した

あまりの人数の多さと強引さに“客引き天国”といわれていた大阪市内の繁華街の客引き。

相次ぐ苦情に、大阪市議会は今年5月27日、「大阪市客引き行為適正化条例案」を可決。そして、いよいよ10月27日からは悪質な客引きから過料5万円以下を徴収する罰則が適用されることになった。

果たして、大阪市は海千山千の客引きを駆逐できるのか? 初日の夜、ミナミの戎(えびす)橋(中央区)を訪れてみた。

この戎橋、最盛期のピーク時間帯には100人近くの客引きでごった返し、「通行人より客引きのほうが多い」と、酔客が嘆くほどのスポットだった。

今年5月に週プレが取材した際も、わずか26mほどの橋を渡り切る間にガールズバーの客引きとおぼしき女のコ2、3人に何度断っても行く手に立ちふさがられたものだ。

ところが、この夜はゼロ! それもそのはず、橋の上には「客引き行為等適正化指導員」と書かれた緑色のビブスを着た男性が5人、仁王立ちしている。

この光景に、通行人からはこんな声が。

「さわやかのひと言。大阪市もたまにはええことする。これで道頓堀の違法駐輪自転車を一掃したら満点や」(60代男性)

「シーンとしすぎて逆に寂しいくらい(笑)。店の前の1m四方では客引きOKらしいし、もっと元気に声を出せと言いたい」(30代男性)

大阪市の客引き対策とは?

条例の即効性に、大阪市市民局の担当者がこう胸を張る。

「罰金5万円に加えて、違反者、違反業者の氏名を市のホームページや広報で公表することにしたのが大きい。客引きは受託業者が学生アルバイトなどを雇って行なうケースが多いのですが、この措置で、学生アルバイトが『氏名を公表されたら就職できなくなる』と、次々に辞めていったと聞いています。飲食店側も、もし店名が公表されたら商売できなくなると、受託業者に客引きの依頼をしなくなった。これでは、受託業者はビジネスが成立せず、客引き行為の減少につながったと考えています」

客引き禁止行為エリアを戎橋周辺だけでなく、キタ、ミナミの繁華街全域に広げたことも功を奏したという。

「戎橋を禁止エリアにするだけでは、客引きは別の繁華街に移動するだけ。しかし、キタ、ミナミのほぼ全域を禁止エリアにしたことで、客引きが移動する場所がなくなりました」(大阪市市民局の担当者)

新条例、恐るべし! なかなかやるじゃん、大阪市!とホメようとしたら……。あれ、22時を回ると、あっという間にかつての見慣れた光景が! 指導員が引き上げる頃合いを狙って、ぞろぞろと客引きたちが姿を現したのだ。

そのうちのひとりがこう語る。

「今は敵(大阪市)がどんな手、どんなパターンで摘発してくるのか様子見しているだけ。条例ができても、大阪の客引きは何も変わらへんよ」

だが、大阪市も負けていない。

「私服指導員を配置したり、22時以降にも指導員を配置したり、さらには逆に指導員を立たせないフェイントの時間を設けたりするなどの対抗策を練っているところです」(大阪市市民局の担当者)

どうやら、客引きゼロだった10月27日22時くらいまでの戎橋の光景は序盤戦にすぎなかったようだ。大阪市vs客引きの本当のバトルはこれからが本番らしい。

(取材/ボールルーム)