地元の有権者にワインやうちわを配ったことで大臣がふたりも辞任するハメになったが、実は、政治とカネをめぐる問題にはある傾向があった。

某ベテラン自民党関係者、S氏が衝撃的な事例を明かす。

「やはり選挙に弱い議員ほど当選できるかどうかが心配で金権選挙に走っちゃうんですよ。考えつくことをすべてやらないと不安で仕方がない。

面白い例では、秘書たちが有力な有権者たちを戸別訪問する際、現金入りの野菜や果物などを配るなんてこともありましたね。例えば白菜の葉と葉の間に1万円札を挟んだり、ミカンのヘソ部分に穴を開けて丸めた1万円札2枚を差し込んで配ったりしていた陣営もあったな。

笑っちゃったのは、おにぎりの中に、八つ折りにしたお札を具として入れて配る現場に遭遇したときだよ。ご丁寧に5000円札入りは“のりなし”で、1万円札入りは“のり付き”なんだ。支援者の“有力度”に応じて金額を分けるためにね」

ちなみに、外からはバレないようにちゃんと内部に現金を隠した状態で配られているとのこと。

「いまだに支援者の子弟の就職斡旋(あっせん)や受験の世話も行なわれているし、待機児童が多い地域では保育園の入園斡旋が盛んだね。順番待ちの激しい特別養護老人ホーム入所もメジャーな口利き案件だね」(S氏)

クリーンな政治を貫くほど当選が遠のく?

本当に政治家はここまでやらないと当選できないものなのか? 第1次安倍内閣時に大臣秘書を務めた池田和隆(かずたか)氏が語る。

「首長と地方議員を含む地元の支援者たちが応援する政治家に期待することは、なんといっても大きな予算を地元に引っ張ってくることです。予算とはつまり、道路や空港や施設や各種補助金などですね。しかし政治家は出世しなければ予算を動かせるような権力を持てません。

派閥のチカラが強かった時代は、新人議員でも有力な派閥に所属すれば公共事業や補助金などの予算を回してもらえました。派閥の領袖(りょうしゅう=ボス)たちは、自らの勢力を拡大するため新人議員が2期目も当選できるように予算という“実績”を分け与えていたわけです。

しかし今では派閥が弱体化し、ほとんど実効的なチカラがありません。だから世襲組以外の若手議員たちは独力で当選するしかない。カネを持たない者はひたすら駅前に立って“頑張っている感”をアピールするしかなく、カネを持つ者は実弾をバラまきたくなるわけです」

前出のS氏が続ける。

「実弾攻撃で買収を行なうのは論外です。でも、バカ正直にクリーンな活動をしても、常に“風まかせ”の不安定な選挙戦になってしまう。それでは当選と落選とを繰り返すことになり、いつまでたっても出世できません。選挙のたびに議員が入れ替わり、経験の少ない素人議員ばかりになっては、各地域にとっても日本全体にとっても不利益であるのもまた事実なのです」

公職選挙法では、例えば選挙期間中にボランティアで朝から晩までビラ配りやはがきの宛て名書きや電話かけをしてくれる人に対して、1円でも支払えば違法とされている。お茶とお水は提供してもOKだが、コーヒーやコーラはなぜか違法。現金の入っていない、普通のおにぎりでさえ違法だ。

そんな条件で赤の他人の選挙運動に協力する人は滅多にいない。違法な買収は論外だが、クリーンな政治を貫こうとするほど当選が遠のいてしまうのも日本の政治の実態なのだ。

(取材/菅沼 慶)