ついに衆議院が解散、全国で選挙が始まる。しかし、安部首相は今回の解散をいつ決断したのだろう?

新聞やテレビの報道では、小渕優子前経産相と松島みどり前法相のダブル辞任がきっかけだったとか、7-9月期の実質GDP成長率の数値が悪いと判明したときだという見立てが多いが、本当にそうなのか?

そこで本誌は永田町と霞が関の中枢にいる政治家と官僚たちからの証言を得ると同時に、安倍首相の動きと最近の政治日程を振り返った。すると年内解散に向けた環境づくりは、夏場から周到に行なわれていたことが判明した。某省の内閣に近い立場にいるキャリア官僚、A氏が語る。

「9月29日に召集された臨時国会で、当初は目玉法案とされていた集団的自衛権を含む安保関連法案が最初から落とされていました。これはくさいなと思いましたね。総理は安保法案にあれだけ熱意を示していたのに、年明けから始まる通常国会で議論すると方針転換をした。私は安倍首相が年内解散を視野に入れている可能性が高いと感じました」

A氏が続ける。

「しかしながら10月15日まではカジノ関連法案が真剣に審議されていました。少なくともこの時点までは、総理の頭の中で解散の最終決定までには至っていなかったと思います」

だがその翌日、事態が急変する。10月16日発売の『週刊新潮』で小渕氏の政治資金に関して不明朗な収支があると報じられたのだ。

安倍首相はそのとき、外遊先のイタリアにいた。そして10月18日に帰国して、10月20日には小渕氏と松島氏の2閣僚がダブル辞任した。疑惑報道から4日での辞任は超異例の早さだ。

小渕氏側は『週刊新潮』の発売後に疑惑を否定していただけに、事実上の更迭(こうてつ)といえる。クビ宣告をしたのはもちろん、トップである安倍首相以外にいない。

公明党にはカジノ法案を手土産に

自民党のベテラン議員、B氏が解説する。

「安倍さんはイタリアから帰国した翌日(日曜日)、スポーツジムに行くなどの名目で六本木のグランドハイアット東京とANAホテルに行っています。間違いなくそこで内閣と党の幹部と会っています。議題はもちろん小渕さんと松島さんの処分でしょう。そして解散についても話し合われたはずです」

どうしてそう言えるのか?

「小渕さんたちのダブル辞任が決まった日の翌朝(10月21日)、安倍さんは菅(義偉官房長官)さんと会っています。そのまま菅さんは谷垣(禎一幹事長)さんと共に公明党の幹部と会っています。その後になんと、公明党が反対していたカジノ法案を取り下げたのです。

菅さんたちが公明党幹部に会った表向きの用件は、閣僚から辞職者が出てご迷惑をおかけしましたというお詫びです。しかし公明党に直接的な被害があったわけでもないのに重要法案を引っ込めるなんて聞いたことがありません。菅さんたちは公明党に年内解散の可能性をほのめかしたはずですよ。連立相手の理解を得るため、カジノ法案の取り下げを手土産にしたのです」(B氏)

しかしまだ年内解散の可能性を“ほのめかした”だけで、決定までには至っていなかったようだ。自民党の幹部関係者、C氏が裏事情を明かす。

「10月22日、安倍さんは谷垣さんと会っています。谷垣さんは元財務大臣ですから、予算進行のスケジュール的に年内解散は慎重に考えるべきだとの意見を伝えたと聞いています」

ところが谷垣氏は10月29日、記者団から相次ぐ閣僚の辞任で野党から解散総選挙をせよとの声が上がっているが、どう思うかと聞かれた際に以下のような返答をしている。

「厳しい状況を打開しないといけないときは、いろいろ議論が出てくる」

安倍首相以外にシナリオを描いたのは…

一般人には何を言いたいのかよくわからない発言だが、これで永田町に“解散風”が吹き始めたのだという。前出の自民党関係者、C氏が解説する。

「明確に否定をしなかったということは、解散の可能性があると認めたも同然なのです。マスコミ的には11月2日に小泉元首相の秘書だった飯島勲さんが、テレビ番組内で解散総選挙の日程予測を発言したことで解散風が吹き始めましたが、永田町的には谷垣発言があった10月29日からでしたね。

ちなみに飯島さんは解散シナリオの作成に一切関わっていません。断言できます。なのにいかにも深く関与しているかのような言動で“大物感”を演出するあたり、彼のセルフプロデュース能力には感服しますよ(笑)」

今回の解散は突然に決まったものではなく、夏頃から安部首相の周辺で徐々に現実味を帯びていったことはわかった。では、大義がないという批判の中、実は安倍首相と姑息ながらも周到な長期政権への戦略的シナリオを描いた意外な裏ボスとはーー。

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(取材/菅沼 慶)

■週刊プレイボーイ49号「シナリオはあの“裏ボス議員”!このままだと戦後最強権力者が誕生する!!」より