米軍普天間基地の辺野古移設が最大の争点となった沖縄県知事選は、「辺野古移設反対」を公約に掲げた翁長雄志(おながたけし) 前那覇市長が自民党公認の現職、仲井眞弘多(なかいまひろかず)氏に10万票近い大差をつけて圧勝した。

米軍基地負担を一方的に押しつけられてきた沖縄県民のNOという「民意」をハッキリと示す結果となったわけだが、選挙当日の夜、7時のNHKニュースは驚きの内容だった。

というのも、オープニングの話題はその日行なわれた「巨人×阪神のOB戦」。その後に解散・総選挙関連のニュースが続き、テニスのATPファイナルで活躍した錦織圭の話題、G20での安倍首相動向と続いて、ようやく沖縄県知事選のニュースというオーダーだったのだ。

辺野古移設反対派が勝利して、普天間基地の移設が暗礁に乗り上げれば、日米関係にも大きな影響が出るとあって、かねて大きな注目を集めているはず……だった沖縄県知事選が、なぜ、こんな扱いなのか?

「確かにあのNHK7時のニュースには僕も驚きました。あと、視聴率的に数字が取れないと思ったのか、各局の情報番組も基本的に大きく扱っていませんでしたね」と語るのはフリージャーナリストの青木理氏だ。

「翌日の朝日新聞が、この選挙で敗れたのは基地負担を沖縄に押しつけ、沖縄を切り捨て、沖縄を忘れる私たちの政府、本土の人間だ、と書いていて、僕もまさにそのとおりだと思ったのですが、情報番組やNHKの扱い方を見る限り、沖縄に対してそうした自覚は持っていないのでしょう」(青木氏)

一方、大手新聞各紙の報道も、本当にこれが同じ選挙の記事なのかと目を疑うほどにクッキリと2色に色分けされていた。

翁長氏の圧勝で示された「民意」の重さを強調する朝日・毎日に対して、読売・産経の2紙は「辺野古移設を停滞させるな」(読売)、「政府は粛々と移設前進を」(産経)と、沖縄県民の選択を正面から否定する社説を掲載。

産経が翁長陣営を「辺野古反対の一点で結集した砂上の楼閣」と断ずれば、「(反対だけで)代替案を示さないのは責任ある態度ではない」と批判する読売。

民意を頭ごなしに否定するメディア

さらには「普天間固定化するのでは」(産経)、「振興策どうなる、不安」(読売)と、脅し文句まで繰り出して政府の立場を代弁するかのようだった。

もちろん、言論の自由も報道の自由も憲法で保障されている日本だから、各紙の報道姿勢が違うのは当然だし、放送局がニュースの優先順位を決めるのも「編集権の自由」の範囲だろう。

しかし、今回のように「明確な争点」のある沖縄県知事選で示された「民意」を大手メディアが頭ごなしに否定したり、意図的に小さく扱おうとするのなら、いったい「選挙」になんの意味があるというのだろう?

ちなみに、「今回の沖縄県知事選は初めから勝ち目がないとわかっていたので、そこから目をそらすために解散総選挙をこの時期にぶつけてきた」という噂も聞かれたが……。

「確かに沖縄県知事選の結果からメディアや有権者の注目をそらすというのも、安倍首相がこの時期に解散総選挙を決意した理由のひとつだと思います。実際、報道の現場でも総選挙の話題で沖縄どころではなくなっていますからね」

と語るのは、『安倍政権の罠』(平凡社新書)の著者であるジャーナリストの清水克彦氏だ。

「ただし、今度の総選挙でも沖縄選挙区の争点は辺野古の問題になるため、事実上は県知事選の『延長戦』ともいえる。再びこの問題に注目が集まる可能性は高いでしょう」(清水氏)

沖縄県知事選の報道のように、マスコミ対策に熱心な安倍政権と政府の後押ししかしないメディアが組めば、有権者の民意も無視されかねない。

仮に今回の衆院選で自民党が大量に議席を失っても「与党、過半数確保で政権に信任!」なんて報じるならば、まるで政府の機関紙。そんなメディアは果たして必要なんだろうか?

(取材・文/川喜田 研)