AGA治療を専門とする銀座総合美容クリニックの正木院長。平成20年に開業後から現在まで、来訪者は年々増え続けている。ちなみに、その約7割が25代後半~30歳前半だとか

最近よく耳にする「AGA治療」なるもの、頭髪に悩む男性諸氏なら敏感に反応せざるを得ない新しい薄毛治療が今、静かな話題を呼んでいるらしい。

「静かな話題」でしかないのはもちろん、できれば秘密にしておきたい類の話ゆえだが、体験者たちは一様にその効果に驚嘆し、噂を聞きつけて治療を受ける男性が増え続けているのだという。

週プレNEWSの編集Aも実はそのひとり。

「1年半ほど前に治療を始めたんだけど、半年経つか経たないかくらいで効果が出始めたんだよ。既に後退し始めていた生え際にまた産毛が生え出して、それがだんだん太くなっていくの。このままだとヤバイと思っていた頭頂部もじわじわ髪が増え始めた。感動もんだね」

喜びいっぱいで話す編集Aの生え際に注目して見ると、確かにかつて後退していたとは思えないほど毛がフサフサで、表情も若々しい。

AGA治療の効果は本当なのか? そもそもAGAとは何なのか? さっそく専門医に聞いてみることにした。

訪れたのは、AGA治療専門で話題の「銀座総合美容クリニック」。院長の正木健太郎氏にAGAの基本的な知識から説明してもらった。

「AGAとは『Androgenetic Alopecia』の略称で、男性型脱毛症のことですが、まず毛乳頭細胞による発毛の過程には成長期、退行期、休止期の3つがあります。2~6年かけて成長した毛髪は、2週間ほどかけて休止期に移行し、3~4ヵ月のお休みの後に生え変わり、新たな髪が発毛する、というサイクルが繰り返されるわけです。このサイクルは40~50回で限界に達し、それ以上繰り返されることはありません」

成長期が最短2年だとしても、2年×40回で80年。正常なら一生ハゲる心配はいらないということになる。

「そうなんですね。ところが、ジヒドロテストステロンというホルモンによって成長期が半年から1年ほどに短縮されてしまうんです。本来の期間生え続けることなく抜け代わってしまうわけです。ジヒドロテストステロンという髪の悪玉ホルモンは、5α還元酵素の働きによって、男性ホルモンであるテストステロンから変換されたもの。そしてこのジヒドロテストステロンを受けとる受容体(受け皿)は、M字の生え際とつむじ付近にしか存在しません

クリニック来訪者は確実に増加中

なるほど、ハゲがM字と頭頂部からの2パターンばかりなのはそういう理由があったためだ。男性ホルモンとハゲの因果関係はよく言われていることだが、必ずしも男性ホルモンが原因ではなく、5α還元酵素や受け皿の存在が問題なのである。

もし成長期が半年ならサイクル40回で20年。たった20年で「打ち止め」になる可能性もあるわけで、見事に若ハゲが誕生することになる。

AGA治療というのは、フィナステリドという物質によってジヒドロテストステロンが受容体に働きかける過程を抑えることで、成長期が短くなるのを予防する治療なのです」

つまり、フィナステリドを継続して服用することで、正常な毛髪のサイクルを取り戻すことができるのだ。サイクルの仕組みを理解すればわかるように、一般的に効果は3~6ヵ月ほどで表れてくる。予防的な意味合いもあり、即効性はないが、場合によっては頭皮に直接投与して発毛を促す治療もあるという。

同薬を厚生労働省が認可したのは2005年。海外でもすでに60ヵ国以上で認可。つまり現在では当たり前の医療行為なのである。

同クリニックでも来訪者は年々確実に増え続け、その7割近くが20代後半から30代前半だとか。院長の解説を聞けばわかるように、「打ち止め」目前の中高年にとっては効果を実感できる期間は残り少ない。できることなら、薄毛が気になり始めた早い時期に始めたほうがより多く治療の恩恵を受けられるだろう。

「ただ、そのあたりは価値観の違いもありますからね。気にならない人は全然気にならないわけですし、年齢相応に薄くなる程度ならあまり気にする人もいないでしょう。逆に少しでも気になるなら、一度来院してカウンセリングを受けてみたらよいと思います。一般の方々は客観的かつ医学的に他人と正しく比較する術がないために、ナーバスに考え過ぎる方も少なくないですから」

この世からハゲが絶滅する?

少し抜け毛が多いくらいで不安に襲われて来院する人も珍しくはなく、大学生や高校生、最年少で14歳の少年が両親と来院したこともあるという。薄毛というのは、そんなふうに過剰な悩みを伴ってしまうだけにやっかいなのだ。考え過ぎ、悩み過ぎは健康にも良くない。

「枕に大量の抜け毛がついていたりするのはAGAの危険サインです。また、薄くなったな、という自覚が出てきたのであればすぐにカウンセリングを受けたほうがいいでしょう。洗髪のときに多少抜けるくらいなら何も問題ありませんよ」

ちなみに薄毛の元凶であるジヒドロテストステロンの働きの過程は、遺伝により大きく影響を受けるものだという。心当たりがある人は要注意だ。

それにしても、投薬だけで毛髪の寿命を延ばせる時代になったのだから、素晴らしいことこの上ない。いずれこの世からハゲが絶滅する時代がやってくるかもしれない!?

(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/石川耕三)