金沢のグルメ系回転寿司では朝と夜の2回、店から程近い漁港や市場から直接魚を仕入れる店が多い

現在、東京―長野間を結ぶ北陸新幹線が2015年3月14日に金沢まで繋がる。しかし、その開業に向け、地元では意外な争いが起きているという。それが“回転寿司三国志”だ。

金沢市には回転寿司のコンベアメーカー最大手、業界シェア70%を占める「北日本カコー」があり、回転寿司への市民の愛着は深い。

「金沢市は周辺市町と合わせ、約50店のグルメ系寿司店がひしめく激戦区。スシローやくら寿司は数店あるだけで、かっぱ寿司に至っては0店。大手も出店を控えるほど金沢人は寿司の味にうるさいんです」(地元グルメ系回転寿司店・A氏)

そんな回転寿司王国・金沢で“御三家”と評されるのが、「金沢まいもん寿司」「もりもり寿し」「すし食いねぇ!」。来年3月の新幹線開通を見越した三つどもえの出店攻勢も激しさを増してきた。12年2月には「まいもん寿司」があわら温泉(あわら市)の旅館に出店。昨年12月には「もりもり寿し」が金沢市中心部の繁華街の“訳あり物件”に新店開業した。

「客が店内で撮影した裸の写真をネット上に公開した事件で閉鎖された『餃子の王将』の跡地ですね(苦笑)」(A氏)

一方で、来年2月には富来漁港内にも開業予定で、「直近の水揚げ場から徒歩1分の場所。“日本一鮮度の高い回転寿司店”になるかもしれません」(A氏)と早くも期待が高まっているという。

仕入れのスピードでは「すし食いねぇ!」も負けてない。回転寿司評論家の米川伸生氏が語る。

「地元漁業組合と連携し、洋上の漁船から捕れた魚の魚種や量が随時報告され、その情報を元に『すし食いねぇ!』の仕入れ担当は港に魚が揚がる前に、どの魚をどれだけ買うかを決めます。その後、港に船が着く時間に合わせて自社のトラックを配備し、港に揚がったばかりの魚をそのままトラックに載せて各店舗に配送。水揚げから最短30分で店のレーンに流す体制を整えているんです」

この金沢御三家に殴り込みをかけるのが東京・築地のグルメ系すしチェーン「すしざんまい」だ。昨年11月に近江町市場近くに北陸1号店を出店。北陸エリアで今後2、3年で15店に増やす目標もあるという。

「『すしざんまい』といえば、昨年の築地での初せりで大間産クロマグロを史上最高額(1億5540万円)で落札した名物社長がいる店。これは金沢の寿司業界も盛り上がります。まずはお手並み拝見といきましょう」(地元回転寿司店)

(取材・文/興山英雄 写真提供/株式会社エムアンドケイ 金沢まいもん寿司本部)

金沢回転寿司の御三家のひとつ、「金沢まいもん寿司」本店。漁港直送の寿司ネタが所狭しと回り続ける(左)。まいもん寿司の人気メニュー「のど黒(550円・税別)」(右)