上司が口にしがちな紋切り型のセリフ。それは言葉ヅラの意味とは異なるメッセージを伝えようとしている場合が多い。うっかり真に受けて失敗しないように上司用語リテラシーを身につけておこう!

【上司用語その1】後で見ておいてくれ

<ホンネ>「すぐに資料を見て行動しろ」という意味

「後で」がつくのは、どうしても緊急を要する仕事があるならそちらを優先してもいいよ、という程度にすぎない。「手の空いたときにやっておいてくれ」と言われた場合も同様だ。従って、本当に後からやっていたらマズイことになる。すぐに着手できないときは、渡された資料をサッと見て要点を把握したことを上司に知らせつつ、「○○が終わったら直ちにかかります」と伝えておこう。

【上司用語その2】悪いようにはしないから

<ホンネ>「とにかくオレの言うことを聞け」という意味

ここは任せろと上司が出てきた状態なので、部下であるあなたは黙って身を引こう。もはや上司、あるいはもっと上が対処する事態になっているのだ。実は上司も、あなたをどうするかまだ何も考えていなかったりするが、悪いようにはしないというのだから、よくはならなくてもヨコ異動くらいで済む。見捨てた部下には使わない言い回しなので、こう言ってもらえるだけマシだ。

【上司用語その3】キミのためを思って言うんだが

<ホンネ>「オレにとばっちりが来たら困るじゃないか!」という意味

あなたが社内外で軋轢を生みそうな正論を吐いたときなどに、上司がたしなめるように使う。キミのためとか言いながら、実はその10倍くらいは上司自身のためである。あなたのほうに、さらに言い分がありそうだなと上司が察知した場合、先回りしてこのフレーズを口にすることで、それ以上の発言を封じる狙いもある。

【上司用語その4】○○さんがキミを欲しがっている

<ホンネ>「引き取り先を見つけたから、ようやくオマエをこの部署から追い出せる」という意味

上司からこう言われて、「そうか、○○さんは僕の努力を見ていてくれたんだな」などと感激したあなたは甘すぎる! 異動先の○○さんはなんらかのバーターで渋々ながら受け入れたか、あるいはあなたの上司にダマされているだけなのだ。

とはいえ、いまさら残留工作をしても幸せにはならない。ここは腹をくく上司が口にしがちな紋切り型のセリフ。それは言葉ヅラの意味とは異なるメッセージを伝えようとしている場合が多い。うっかり真に受けて失敗しないように上司用語リテラシーを身につけておこう!って新天地に活路を見いだそう。

決して“聞き流せない”上司の一言

【上司用語その5】これは経営判断だ

<ホンネ>「これ以上、オレに何を言ってもムダだよ」という意味

無謀な会社の方針に対して、あなたはきっちり筋道を立てて反論する。なのに、上司はかたくなに方針を変えようとしない。なんてバカな上司だと思いながら、なおも反論するあなた。実は、上司もこれはバカな方針だとわかっているのだ。だからあなたを説得する材料がなく、困った挙句出てくるのがこの言葉。上司自身もさらに上からバカな指示を受けているのである。

【上司用語その6】これは聞き流してくれていいんだが

<ホンネ>「今からとても大事な話をするぞ」という意味

バリエーションとして「ちょっと雑談していいかな」というのもあるが、もちろん雑談ではない。わざわざこういう前置きをするときは、まだオフィシャルになっていない重要な話と思って間違いない。こういう情報を流すとき、上司はあなたになんらかの役割を求めているはず。本当に聞き流していると、ビッグプロジェクトに乗り遅れるぞ。

【上司用語その7】何かあったら言ってくれ

<ホンネ>「この話はこれ以上しないでくれ」という意味

その事案は、もう上司の中でケリがついたのだ。講演の終わりに司会者が「ほかに何かございますか」というとき、ほかに何か出てきてほしいのではなく、講演を終わりたい意味なのと同じ。ただし、形だけでもこのようにフォローする姿勢を見せる上司は、責任回避ばかりの上司よりマシともいえる。

【上司用語その8】キミ、ゴルフやるの?

<ホンネ>「行き帰りの運転手は頼むよ」という意味

「はい」と答えるときは相当の覚悟をもって臨まないといけない。それ以降は、取引先とのコンペなどであなたも必ずメンバー入り。特に上司があなたの家の近くに住んでいる場合は、休日を潰して早朝からの運転手が半永久的に続くのだ。そのリスクを回避するには、「腰が悪くて……」などと言うしかない。

【上司用語その9】上がどう言うかなぁ……

<ホンネ>「こんな企画、通るわけないだろ!」という意味

一定の期待感を持たせる言葉ヅラとは裏腹に、可能性はゼロである。上司は提案を否定する決断を自らの責任にせず、曖昧な形でさらに上のせいにしようとしているだけだ。もはや、この上司があなたの代わりに体を張って提案を通してくれることなど考えられない。さっさと別の仕事に取りかかろう。

(取材・文/桑原一久 山岡則夫[サラリーマン研究所])